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20年前、力強いロックで響く“透明ボイス” アニメEDで“生きる”をテーマにしたワケ

  • 2025.11.27

「20年前のあの頃、何を信じて歩いていたっけ?」

2005年。携帯電話からは着うたが鳴り響き、放課後のカフェでは制服姿の学生たちが音楽番組の話で盛り上がっていた。未来はまだ少し遠くて、でも何かを始めたい気持ちだけは確かにあった。

YUI『LIFE』(作詞・作曲:YUI)――2005年11月9日発売

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2006年、映画『タイヨウのうた』大ヒット御礼舞台挨拶に登場したYUI(C)SANKEI

儚さと強さが共存する声

YUIが放ったメジャー3作目のシングルは、テレビ東京系アニメ『BLEACH』のエンディングテーマとして多くの耳に届いた。まだ十代だった彼女が描いた“生きる”という言葉のリアルさは、華やかなタイアップの中でも異彩を放っていた。

イントロからギターリフが響き、ドラムが軽快に刻む。音は最初から熱を帯びていて、止まることのない生命の鼓動のようだ。その上に重なるYUIの少しかすれた歌声。繊細で儚いのに、どこまでも芯の通った力強さがある。

感情を過剰に吐き出すことなく、それでも一音ごとに“生きたい”という意志がにじみ出る。ロック的なエネルギーと、彼女の透明な声が見事に共存している。

“LIFE”という言葉に込めた希望

『LIFE』というタイトルはあまりにもシンプルだ。だが、YUIが当時描こうとしたのは、「特別な日じゃなくても、生きることに意味がある」という等身大のメッセージだったと思う。

大人になりきれない不安、誰かに頼ることの難しさ、そしてそれでも明日を選ぶ勇気。そうした想いが、YUIの言葉と声にそのまま刻まれている。

彼女の歌は、叫ぶことで感情を伝えるのではなく、“声の震え”で感情を伝える。その絶妙なバランスが、聴く者の心に“自分の痛み”を重ねさせるのだ。儚いのに力強い――それが、YUIというシンガーの最大の魅力だった。

音の広がりに宿る“生きる力”

この曲は、全体を通してまっすぐなロックサウンドに貫かれている。ギターとリズムが織りなす疾走感の中で、YUIの声がまるで空気を切り裂くように響く。力強い演奏の中でも、その声が決して埋もれないのは、彼女の声に宿る“芯の温度”があるからだ。

儚さが、力強さへと変わっていく。その過程そのものが“LIFE”のメッセージだ。優しさの中にある覚悟、静けさの奥にある意志。そんな“矛盾の共存”が、曲全体を通して美しく描かれている。

“自分で歌う時代”を切り開いた存在

2005年当時、女性シンガーソングライターの新しい波が生まれていた。“自分の言葉”で感情をつづり始め、音楽がよりパーソナルになっていく中、YUIはその中心にいた。

今聴いても、『LIFE』には20年前の風景が鮮やかに蘇る。街の雑踏、教室の窓、部屋の静けさ。そのすべてが、彼女の声とともに記憶の奥で息づいている。

「あのときの自分も、ちゃんと生きていたんだ」――そう思わせてくれる。

それこそが、この曲が時代を超えて愛される理由だろう。YUIの透明な声は、いつの時代も“生きる理由”をそっと教えてくれる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。