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30年前、CMから流れた“踊るエナジー” “無言のダンス”が社会現象になったワケ

  • 2025.11.26
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※Google Geminiにて作成(イメージ)

「30年前、テレビのCMで踊る女性たちに目を奪われたこと、ある?」

1995年。夜の街はまだ活気があり、ネオンがゆらめいていた時代。そんな中、テレビの画面を支配したのは、ひとつのリズムと、ひとつのダンスだった。

ジョー・リノイエ『シンクロナイズド・ラブ』(作詞・作曲:ジョー・リノイエ)――1995年2月8日発売

消費者金融「武富士」のCMソングとして放送され、“武富士ダンサーズ”によるエネルギッシュなダンス映像とともに社会現象を巻き起こした一曲だった。

無言のダンスが伝えた“時代の鼓動”

映像には特別なストーリーはなかった。ただ、リズムに合わせて踊る女性たちの動きと、鋭く鳴り響くビート。それだけで、何かが伝わってくる――そんなCMが、当時の日本を席巻した。

華やかでも説明的でもなく、ただ“音と動き”だけで成立する表現。それは、テレビがまだ文化の中心にあった時代に生まれた、純粋なエネルギーの可視化だった。「この曲、誰?」という問いが駆け巡った。音楽そのものが、広告の枠を飛び越えた瞬間だった。

“日本語と英語のあいだ”に生まれたグルーヴ

テレビCMで流れたのは、英語詞によるサビ部分。「Won’t you take my hand, for I will be your man…」まるで海外のダンスナンバーのような響きが、日本のリビングを異国の空気で包んだ。

しかし、フルコーラスではAメロ・Bメロが日本語詞で構成されており、日本語の情緒と英語のリズムが交互に現れる独特な構造になっている。「日本語の歌詞があったんだ……!」という驚きが、フルコーラスを聴いた人たちの間にもたらされる。言葉が切り替わるたびに、曲の温度もトーンも変化していく。言葉の壁すら音楽で越えていく感覚が、この曲の中には確かにあった。

“洋楽でも邦楽でもない”ビートの中毒性

ジョー・リノイエは、近藤真彦『ミッドナイト・シャッフル』の作・編曲や、平井堅のデビュー曲『Precious Junk』の編曲など、数々の名曲で作曲・編曲・プロデュースを手掛けてきた音楽家。

『シンクロナイズド・ラブ』は、ハウスやユーロビートをベースにした英語詞主体のクラブチューン。反復するシンセと軽快なキックが、当時のJ-POPには珍しい“踊れるグルーヴ”を生み出している。テンションの高いリズム、キャッチーな旋律、そして無国籍な浮遊感。それは、ラジオでもクラブでも通用する、新時代のサウンドだった。耳ではなく、身体で聴く音楽。そんな感覚をテレビを通じて届けたのがこの曲だった。

CMがカルチャーを動かした

武富士のCMは、単なる宣伝を超えて“映像作品”としての完成度を持っていた。ダンスと音楽が完全に同期したその映像は、のちに「武富士ダンサーズ」という呼称で親しまれた。

テレビの短いコマーシャル映像にもかかわらず、世代を超えて話題に。その熱は後年、フジテレビ系『笑う犬の冒険』で同曲が使用されて再リリースされるなど、時代が変わっても、人々は“あのリズム”をすぐに思い出した。CMソングが“時代の象徴”として刻まれたのだ。

“踊るCM”が残した遺伝子

『シンクロナイズド・ラブ』が残したものは、単なるヒットではない。それは、音楽と映像の融合によって感情を生むという、新しい広告文化の始まりだった。誰もが同じフレーズで踊り、同じリズムで呼吸する。それは企業イメージではなく、時代そのものを映していた。

今振り返れば、あのCMは「働く人のエネルギー」や「生きるリズム」すら象徴していたのかもしれない。無音の夜に、あのビートだけが力強く響いていた。

今も鳴り続ける“記憶のビート”

30年経った今も、『シンクロナイズド・ラブ』のイントロを聴くと、あの映像が頭の中で蘇る。強烈なライト、跳ねるリズム、そして息を合わせたダンス。ジョー・リノイエが描いたそのサウンドは、機械的でありながら、人間的な温度を持っていた。

音楽がテレビを超え、テレビがカルチャーを超えた瞬間。『シンクロナイズド・ラブ』は、その時代の心拍そのものとして、今も静かに鳴り続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。