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20年前、19歳がアコギ一本で鳴らした“成長の痛み” ささやき→叫びに変わる“応援歌”

  • 2025.11.26

2005年。街にはまだCDショップの灯りがあり、通学路では携帯音楽プレーヤーを手に歩く高校生の姿があった。明日が少し不安で、でもどこか希望を信じていたあの時代に、静かに寄り添ってくれた歌がある。

YUI『Tomorrow’s way』(作詞・作曲:YUI)――2005年6月22日発売

イントロが終わると、ギター1本で紡ぐようにAメロが始まるこの曲は、映画『HINOKIO』の主題歌として書き下ろされた。メジャー2作目ながら、当時19歳の彼女が放った“等身大のメッセージソング”は、デビュー直後の不安と希望が交錯する時代の空気をそのまま封じ込めている。

透明な声で鳴らした“自分への問いかけ”

『Tomorrow’s way』が特別なのは、希望を語りながらも、決して軽く前を向こうとはしないところだ。アコースティックギターのストロークに乗せて、YUIの声はまるで手探りのように震えながら進んでいく。

強くなりたいのに、まだ怖い。進みたいのに、立ち止まってしまう。その矛盾こそが、10代から20代へ向かう誰もが抱く“成長の痛み”を象徴していた。

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YUI-2006年撮影(C)SANKEI

“静けさ”から“鼓動”へ――変化していくサウンド

曲は前半、アコースティックギターの柔らかい響きだけで静かに始まる。だが、サビを迎えるころにはドラムとエレキギターが重なり、YUIの歌声も徐々に熱を帯びていく。

まるで、心の奥に閉じ込めていた想いが少しずつ外へ解き放たれていくように。ささやきのようだった声が、いつしか“叫びに変わる”瞬間――そこにこの曲のドラマがある。

音が厚くなるにつれて、彼女の声の輪郭も強くなる。それは“誰かに聴かせるため”ではなく、“自分に言い聞かせるため”の強さ。ギターのリフと重なるその瞬間、曲は静かなフォークからロックへと変貌し、「前に進むこと」の痛みと希望を同時に鳴らしていく。

“主題歌”でありながら、自分の物語でもあった

映画『HINOKIO』は、人間とロボットの心の交流を描いた青春作品。主人公がロボットを通じて外の世界とつながっていく物語は、まさにYUI自身が音楽を通して人とつながろうとしていた当時の姿に重なる。彼女が劇中の世界に寄り添いながらも、自分自身の心情を重ねて歌ったからこそ、この曲は“主題歌”を超えた存在になった。

迷いながらも自分を信じようとする姿勢。それが、若きYUIのすべてだった。

平成の街角に響いた“誰かのための歌”

2000年代半ば、YUIのような女性シンガーソングライターが脚光を浴び始めた。だが彼女は流行やイメージづくりに頼らず、ただ一人の若者として、自分の言葉で音楽を届けようとしていた。

『Tomorrow’s way』は、そんな彼女の“原点”を象徴する一曲だ。誰かのために歌う前に、自分を信じること。それが、彼女の音楽の出発点だった。

ギターを抱え、まだ何者でもなかった19歳のYUIが、未来へ手を伸ばした瞬間。それは、平成という時代の青春そのものを映し出す光でもあった。

今、改めてこの曲を聴くと、心の奥で小さく鳴る「がんばれ」という声が聞こえる。あの日の私たちに向けた、ささやきのような応援歌――『Tomorrow’s way』は、今もなお、誰かの“明日”を支え続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。