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35年前、きらめくアイドルの“素顔”が覗いた瞬間 温もりで包み込む“透明なバラード”

  • 2025.11.25

バブルの余韻がまだ街に残っていた1990年の冬。街を行き交う人々は、どこか浮き立ちながらも、心の奥では静かな孤独を抱えていた。煌びやかなイルミネーションの下で、誰もが少しだけ“本当の優しさ”を探していたような季節。そんな時代に、ひとつの透明な歌声がそっと寄り添った。

松田聖子『We Are Love』(作詞:Seiko Matsuda・作曲:鈴木祥子)――1990年11月21日発売

ピアノを主軸にしたバラードソングでありながら、どこか“祈り”のように響くこの曲。31枚目のシングルとして発表された『We Are Love』は、まるで“心の灯”のように静かに広がっていった。

永遠のアイドルが見せた“素顔の瞬間”

デビュー以来、松田聖子は常に時代の中心にいた。明るく弾ける笑顔、完璧なヘアスタイル、そして“誰もが恋したアイドル像”。だが『We Are Love』の彼女は、そのどれとも違っていた。

この曲で聴かせる声は、力強さよりも「包み込むような温度」を持っている。鈴木祥子によるメロディは、ピアノの旋律がゆるやかに揺れながら、聖子の声をまるで水面に浮かぶ光のように映し出していく。鈴木祥子の繊細な感性がこの楽曲に深く息づいている。華やかさの裏にある、「人としての温かさ」を見事にすくい上げた。

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1997年、東京国際映画祭に登場した松田聖子(C)SANKEI

“We Are Love”に込められた“音のやさしさ”

『We Are Love』は、ピアノと弦が中心のシンプルなアレンジ。けれど、その音の重なりには、90年代初頭特有の澄んだ空気が漂っている。当時の音楽シーンは、テクノロジーと生演奏のバランスを模索していた時代。そんな中でこの曲は、人肌の温もりを残した“アナログな優しさ”を大切にしている

サビで広がる“静かな高揚感”は、聴く人の心をゆっくりと解かしていく。泣き叫ぶでもなく、押しつけるでもない。ただ、誰かの肩にそっと手を置くようなやさしさ――それがこの曲の最大の魅力だ。

時を超えて残る“愛の輪郭”

『We Are Love』は、語りすぎず、泣きすぎず、ただ寄り添う。だからこそ、この曲は年月を経ても決して古びない。今聴くと、1990年という時代が持っていた「繊細なまぶしさ」が、そのまま封じ込められているようだ。

“愛”という普遍的なテーマを、あえて大きく語らずに紡いだことこそ、この曲が静かに輝き続ける理由だろう。街の喧騒がふと止んだ瞬間、イヤホンから流れるピアノの音。それは、あの日と同じように、今日も誰かの心をやさしく包んでいる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。