「冷凍食品とか可哀想よ」と子供の弁当に嫌味を言うママ友。園長先生のある一言に心が救われた【短編小説】

年少の息子・陽人の幼稚園は週に3回お弁当の日があります。私はパートで働いており、朝はいつもバタバタ。

もちろん手作りもしますが、彩りや隙間を埋めるために冷凍食品に頼ることも多々ありました。

そんなある日、ママ友たちの間で変な噂が広まっていることに気づきました。

「陽人くんのお弁当、冷凍食品ばっかりなんだって」

送迎のとき、ヒソヒソと話す声が耳に入ります。

噂の発生源は、リーダー格の伊藤さんでした。彼女はいつも完璧なキャラ弁を作ってくる人です。

「秋葉さん、聞いたわよ。もう少し頑張らないと、冷凍食品とか可哀想よ」

他のママたちは目をそらし、私は顔が熱くなるのを感じました。

数日後の保護者会。テーマは「食育について」でした。待ってましたとばかりに伊藤さんが手を挙げます。

「食育、大事ですよね！お弁当まで冷凍食品『だけ』で済ませる方もいるみたいで…子供への影響が心配ですわ」

明らかに私への当てつけでした。教室の空気が凍りつきます。

その時、園長先生が、にこやかに口を開きました。

「伊藤さん、ご意見ありがとうございます。ですが、私は毎日、全園児のお弁当を見て回っていますよ」

先生は私の方を向いて続けます。

「秋葉さんのお弁当、いつも彩りが綺麗ですね。ご自身で準備された野菜の横に、冷凍食品も上手に活用されている。でもね、何より素晴らしいのは…陽人くんが『全部食べたよ！』って、毎日ピカピカのお弁当箱を私に見せに来てくれることです」

先生は、伊藤さんをまっすぐ見て言いました。

「大切なのは、手作りか冷凍か、ではありません。早起きして『あなたのために作ったよ』という愛情が詰まっていること。それこそが、一番の食育だと私は思います」

伊藤さんは顔を真っ赤にして黙り込み、周りのママたちも深く頷いていました。私は、救われた思いで涙が出そうになりました。

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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