1. トップ
  2. 及川光博&手越祐也が語る“ポジティブの秘けつ” 大切なのは「1人にならないこと」

及川光博&手越祐也が語る“ポジティブの秘けつ” 大切なのは「1人にならないこと」

  • 2025.10.26
(左から)及川光博、手越祐也 クランクイン! 写真:上野留加 width=
(左から)及川光博、手越祐也 クランクイン! 写真:上野留加

21年ぶりに連続ドラマ主演を務める俳優・ミュージシャンの及川光博と、7年ぶりにドラマ出演するアーティストで俳優の手越祐也によるテレビドラマ『ぼくたちん家』(日本テレビ系/毎週日曜22時30分)が現在放送中。及川は心優しきゲイ・波多野玄一を、手越は玄一の恋の相手役・作田索を演じ、15歳の俳優・白鳥玉季が演じるトーヨコ中学生の楠ほたるが、玄一と索をつないでいく。今回クランクイン!は及川と手越にインタビュー。二人とも「自分のことがあまり好きじゃない不器用な人」や「人の目を気にしすぎる人」に本作を見てほしいと語り、それぞれのポジティブでいる秘けつも明かした。

【写真】撮影中も息ぴったり! 及川光博が手越祐也にバックハグ(5枚)

■「ドッキリじゃないの!?」とオファーを疑った手越

数々のドラマや映画で活躍し、そのカリスマ性と確かな演技力で常に観客を魅了し続けてきた“永遠の王子”こと及川が、連続ドラマの単独主演を務めるのは『ミステリー民俗学者 八雲樹』(テレビ朝日系)以来21年ぶり。さらにGP帯(ゴールデン・プライム帯)単独主演は本作が初めてとなる。

10月24日に56歳を迎えた及川は「還暦までにもう一度主演を務めてみたい」と、かねてから家族や友人に話していたそう。「決まった時は、『あら本当に来たわ』と…。やっぱり言葉に出していると夢は実現するんだなと思いました。なので、周りのみんなも喜んでくれていますし、より親しい人は働きすぎを心配しています(笑)」と話す。

一方で手越がドラマ出演を果たすのは、『ゼロ 一獲千金ゲーム』(日本テレビ系)以来7年ぶり。最初は疑心暗鬼だったそうで、「オファーをいただいた時は、僕も周りも『ドッキリじゃないの!?』と思っていました。それこそ『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)の復帰も、いきなり後ろから巨大虫取り網で捕まえられましたから(笑)。他の局でもドッキリが2〜3発続きまして、今回も『大掛かりなドッキリを仕掛けてきたな』って思いました」と笑いながら振り返る。

そんな中で確信を持てたというのが、共演者やスタッフたちの豪華な顔ぶれ。手越は「(スタッフや出演者の)ラインナップが“ガチ勢”だった」とオファーを受けた当時の様子を語る。

「ほかのお仕事をしている時だったので、ドラマの話だと聞かされないまま打ち合わせをしたんですけど、いらっしゃったのが『ドッキリを仕掛ける時に出てこないよな』っていうメンバーだったんです。すごくしっかりとした眼差しで僕の目を見ながら、ドラマの話をしてくださったので、『今回はガチだな』と思いました」

そう語る手越の話を聞く及川はどこかうれしげ。「テゴちゃんのワードセンスが新鮮で、ほんとタメになる」と感心し、取材に居合わせた人たちを笑わせた。

この作品で初対面となったのが信じがたいほど打ち解けている二人。「人見知りをしない」という及川と手越は、お互いを「距離感を測るメジャーを持っている男」「オンオフのギャップが魅力」と紹介する。

■及川が語る「ミッチーを忘れる」役作り

「テゴちゃんはこう見えて気配り上手で、人に対して優しいんです。“こう見えて”って、すみません(笑)。こうやって楽しくおしゃべりしているときは盛り上がるし、僕が疲れてぐったりしている時は、そっとしておいてくれるんです。人との距離感を測るメジャーを持っている男という印象があります」(及川)

「俳優の方なのでオンオフの切り替えがすごくて、一緒にお芝居している波多野玄一は完全に玄一なんです。そこにミッチーの香りが全然しない。でも今、隣にいるのは“ザ・王子様”なミッチー。想像はしていたのですが、このギャップに皆さん、惹(ひ)かれたんだなと改めて感じました」(手越)

手越が感じた通り、今回及川は「ミッチーを忘れる」という役作りのアプローチを取ったと語る。及川演じる玄一は、心優しく、不器用なゲイで、50歳の動植物園の職員という役どころ。スタイリッシュな及川のパブリックイメージとかけ離れたビジュアルで、オーバーサイズの服を選び、髪型も無造作だ。及川は、玄一を演じる際は「ミッチーという透明の着ぐるみを脱ぐ」ところから始めるという。

「僕は“ミッチー”というキャラクターを“透明の着ぐるみ”と表現しているのですが、本作の撮影現場に入る時は、それを脱いでから役と向き合っています。これは僕のキャリアの中でもなかなか珍しいパターンです」

“ミッチー”をリセットし、玄一をつくり上げるポイントとして挙げられたのは、パンツのはき方と姿勢。「“ルーズなパンツを腰ではく”という新しい挑戦もしています。玄一は『こんなに太いの?』って思うくらいのパンツを腰ではくんです。僕は細身のパンツをウエストではきたい男なので、現場でどんどん上げちゃうんですよね。そうすると衣装さんにどんどん下げられる…。ふざけているわけじゃないんですよ(笑)」と笑う。

続けて「姿勢を正さないことを意識的にしています。というのは、常日頃の自分だと背筋も伸ばすし、胸も張る。玄一はそういうキャラクターではないので、本番前、全力で力を抜くっていう作業をしています。で、自然体というか、気取ることなく無理のない楽な体勢で芝居をすることを心がけています」と“ミッチーを忘れる”プロセスを明かす。

自身と玄一の共通点は中年であること以外あまりなく、それが芝居の醍醐味(だいごみ)であると及川は語るが、「誰も傷つけたくないし傷つきたくない。というところが玄一との共通点だと思います。…ちょっといいこと言えてるよね!?」と場を和ませる。

一方で、手越が挑戦するのも新境地が期待される役どころ。トレードマークの金髪ではなく黒髪で挑む索は、クールに見えて根は情熱的なゲイで、38歳の中学教師だ。もともと芝居に限らず、アーティスト業でも衣装や髪型で表現のスイッチが変わるという手越。さらに、失恋ソングやネガティブな楽曲も手越がカバーすればちょっと明るい表現に変わるという、いわば“手越節”なるものも持っているのだという。それは索の役作りにも反映されており、手越が演じると台本に書かれたフラットな状態の索にポジティブな要素が付け加えられるらしい。そこで大切にしているのがスタッフとのコミュニケーション。

「監督、プロデューサーの方々が思い描く索と、手越が思う索のいい着地点を見つけることが、今の現場での楽しみです。芝居も歌と一緒で正解はないと思うのですが、玄一と索の距離感や、索の人たらしな部分の見せ方などを監督たちと話し合って、索を一緒につくって、着地点を探っていくのがすごく楽しいです」と目を輝かせながら語る。

そんな本作は、手越が20年前に高校生役で出演した『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』の河野英裕がプロデューサーを務めているほか、7年前にゲイであることをカミングアウトした、日本テレビ報道局ジェンダー班・白川大介プロデューサーが、1年前に河野から相談を受けて、“インクルーシブプロデューサー”として参加している。白川は、当事者と取材者、両方の経験を生かして作品づくりに携わっており、取材にも同席していた。

■「皆さんの心に残り続けるドラマに」

手越は河野に対して、『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』の時から「振り切ったプロデューサー」という印象があったと話す。「河野さんは、届かないところに手を伸ばす人だなと思っていました。本作は、ゲイという言葉が普通に登場して、トーヨコという社会問題も扱いますが、歌詞が曲にのるように、嫌みなくスッと入ってくるんです。だからきっと皆さんの心に残り続けるドラマになると思います」

及川も軽いタッチで描かれているのが本作の魅力だと話す。「基本的にはコメディーなので、メッセージが重すぎたり軽すぎたりっていうドラマではないんですが、ちゃんと空気感がリアルに演出されているなと感じます。もっと言ってしまうと、本作は、人間の尊厳と滑稽さを描いているので、性別も年齢も関係ないんです。そんな世界観に僕は演じがいを感じています。演者として全力を尽くしたいという気持ちです」と話す。

明日からまた仕事や学校が始まる――そんな憂鬱な日曜日の夜を、本作は明るく照らす存在になるかもしれない。日テレシナリオライターコンテストで2023年度審査員特別賞を受賞した松本優紀が脚本を手掛ける本作は、完全オリジナルストーリーで、現場で「大御所」と呼ばれる、のびのびと演技をする犬が2匹も出てくる。明るい撮影現場から生み出される作品の空気感も評判だ。

そんな本作は「自分のことがあまり好きじゃない人、不器用な人に届いてほしい」と及川。及川が演じる玄一は不器用なところが魅力。「人間はほとんどが不器用なので、視聴者の皆さんの共感を得られるのではないかと思います。頭の中で悶々と考えているのに、いざ言語化すると下手くそ。そんな不器用さが玄一にはあって、そこが愛らしさにつながるんじゃないかなと思います」と話す。

続けて手越も「人の意見で自分の行動を変えてしまったりとか、人の目を気にしすぎる人は特に見てほしい」と熱い思いを語る。

「僕は、自分で自分を一番愛してあげることを大切にしていて、やりたいことをやったり、好きな人を愛したりということを1番大切にすべきだと思っています。同性が好きなことをオープンにすると、冷ややかな目で見られるという経験をした人もいらっしゃると思いますが、僕は人の愛し方なんてみんなの自由だと思うし、それに対して他人に意見される筋合いなんて絶対にないと僕は思ってる。『ぼくたちん家』はすごく芯がしっかりしているドラマなんですけど、ほっこりしたり笑えたりするシーンもたくさんあるので、『明日から毎日頑張ろう』って思ってもらえるような、心にポッと温かいものを灯せるような作品になるといいなと思います」

加えて、及川はこの作品に共感できるポイントがあるとのこと。「スーパーポジティブに見えるかもしれませんが、僕自身は全然違うんです。テゴちゃんは天然物なんですけど、僕は養殖物のポジティブで(笑)。なので思い悩む玄一やドラマに登場する人たちに共感できます」と明かす。

そこでマイナスな感情を抱いた時、及川はどうするのか聞いてみたところ、「ネガティブな自分に逆ギレする」を対処法にしているのだとか。

「窮屈で息苦しくて、投げ出したくなるような、自分自身を好きになれない時ってみんなあると思います。そういう時、僕ミッチーは、逆ギレをします。ネガティブの逆ギレで、ポジティブ変換しちゃう。後ろ向きに猛ダッシュみたいに、エネルギーを反転させるわけです。そんな僕なので、正直アクティブ&ポジティブなテゴちゃんは羨ましく感じちゃいます」

一方で、“天然物”の手越は「ネガティブな隙間を入れない」がポジティブでいる秘けつだと語る。「やりたいことを全部やる。まずはそれが大事。何かやってみたいことがあれば、すぐに行動に移すんです。もちろん成功することも失敗することもありますが、人間は経験値が大切じゃないですか。経験を積み重ねると、失敗した時の対処も早くなりますし、成功した時はより幸せを感じられるようになります。僕の場合は、1日休みを取ったり、昼寝をしたり、一旦帰って寝たりっていうことが一切ないんです。嫌なことがあった時ほど動きます。ネガティブな隙間を入れないんです。友だちとカフェで話したり、アフタヌーンティーに行ったり、お酒を飲んだり、スポーツをしたり、なんだっていい。嫌なことがあった時ほど一人になりがちなんですけど、これが1番沈んでしまう原因だと思っています。そういう時ほど、友だちを呼んで、一緒に趣味をしてみてください。とにかく1人にならないことが大事だと思っています!」(取材・文:阿部桜子 写真:上野留加)

日曜ドラマ『ぼくたちん家』は、日本テレビ系にて毎週日曜22時30分放送。

元記事で読む
の記事をもっとみる