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脳の専門家・加藤俊徳さん直伝! シニアの脳を若返らせる【ウォーキング】の「継続術」とは?

  • 2025.10.25

脳の専門家・加藤俊徳さん直伝! シニアの脳を若返らせる【ウォーキング】の「継続術」とは?

筋肉と同じように、歩くことで脳も強化することができる―。そう話すのは、脳の専門医・加藤俊徳さんです。脳が若返り、心身の不調が改善するウォーキングのメカニズムをご紹介します。

お話を伺ったのは
加藤俊徳さん 加藤プラチナクリニック院長

かとう・としのり●脳内科医、医学博士。
脳科学・MRI 脳画像診断の専門家として、これまで1万人以上の診断、治療を行う。また著書を通じて、脳を元気に保つための方法をわかりやすく伝えている。
著書に『最強のウォーキング脳』(時事通信社)他。

ウォーキングを始めてから毎日「人生が楽しい!」と感じています

イライラして怒りを抑えられない、やる気が出ない、物忘れが増えた、疲れが取れない、よく眠れない、スマホを見るのがやめられない……。そういった悩みを抱えている人は、運動負債がたまっている可能性が高い。

「クリニックを訪れる患者さんの中でも、このような症状を訴える方には、特に強くウォーキングをすすめています」

また、寝つきが悪い、夜中に目が覚めるなど、シニア世代に多い睡眠の悩みも、歩くことで解消することが可能だ。

「ウォーキングをした日は、眠りが深くなり、睡眠時間も長くなります。なぜなら、脳は日中に使った部分を休め、老廃物を排出するために眠るので、よく使った脳番地ほど深く眠ることが明らかになっているんです。私はウォーキングをしているので毎日8時間以上、ぐっすり眠れていますが、歩行距離が足りない日は睡眠時間も自然と短くなりますね」

加藤さん自身、毎日のウォーキングを欠かさないウォーキング愛好家。仕事場のクリニックまで徒歩で通い、診察の合間には歩くことでリフレッシュしているそう。

「毎朝ウォーキングをしてから、仕事を始めるのがルーティン。よく『歩き疲れて仕事にならないのでは?』と聞かれますが、全く逆です。歩いたほうが脳がスッキリ目覚めて、仕事のスイッチが入ります。私にとってウォーキングは、日中の活動性を高め、維持するために必要不可欠な習慣。今、私は64歳ですが、毎日が楽しいし、年を重ねるごとに『今の自分が最高』といえる。歩くたびに自分が健康であることに感謝し、生きている実感を得ています」

加藤さんのウォーキングのお供

リュックの中にはイヤフォン、エコバッグ、ウエットティッシュ、水を常備。朝日を浴びることで脳と体の活動スイッチが入るため、朝はサングラスを使わない。

自分に合った歩行距離の見つけ方

私たちが実際にウォーキングをする場合、まずは毎日継続して歩ける、自分に合った距離を見つけることが第一歩となる。

「目安としては、日中座っていることが多いなら1日1時間半くらい、立ち仕事と半々くらいの場合は40分前後が目安。ですが最初から無理をする必要はありません。おすすめは、最初は1キロから始めて、少しずつ距離を増やしていく方法です。歩いた距離と睡眠時間を記録し、翌日の体調をチェック。翌日に疲れが残らず、日中眠気に襲われないようなら、それが自分に合った歩行距離です」

歩く時間帯も、自分の生活リズムに合わせればOK。ただし、効果が異なるため、求める効果によって時間帯を選ぶのもおすすめだ。

「朝のウォーキングには、脳を目覚めさせ、やる気をアップさせる覚醒効果があります。昼は、仕事や家事で疲れた脳をリセットし、次の行動へのスイッチを入れる効果が。夕方から夜にかけて、スピードを落としてゆっくり歩くと、脳の疲れが癒やされ、血糖値の上昇も穏やかになります」

加藤さんの 一日平均歩行距離は 5.6キロ!

「いろいろ試しましたが、日中頭が冴え、夜もよく眠れるのが4.5キロ。最近はまた少し距離を増やしています」

歩くことでわかる自分の心と体の声

今日は足取りが重いな、頭が冴えているな……。毎日歩いていると、体調の微妙な変化に気づけるようになると加藤さんは言う。

「家に閉じこもっていると、昨日と今日の違いを感じにくいものですが、歩くことで脳に新しい刺激が加わり、心身のわずかな変化を捉えられるようになります。日々の健康管理にも役立ちますよ」

せっかく歩くなら、脳をさらに活性化させるアレンジを加えてみよう。おすすめは「しりとり」。

「しりとりは集中力を高め、記憶力を鍛えるのに最適です。歩きながら考えることで脳全体が刺激され、また余計なことを考えずにすむのでストレス解消にもなります。さらに記憶力を高めるなら、『積み上げしりとり』が◎。『ネコ』『ネコ、米』『ネコ、米、メダカ』というように、それまで出た単語をすべてつなげて言います。私もよく息子とウォーキングをしながらやっているのですが、これがなかなか難かしい。思い出すのに必死で、一緒に歩く息子にいつも『お父さん、歩くスピードが落ちてるよ!』と笑われています(笑)」

いいとわかっていても続けるのが難しいのが運動。最後に、三日坊主にならないためのコツを聞いた。

「一番のコツは、ウォーキングを特別な運動だと思わないこと。通勤や買い物のついで、くらいの気持ちで十分です。二つ目は、ごほうびを見つけること。好きなカフェや雑貨屋さんなど目的地を設定すると、楽しく続けられますよ」

撮影/柴田和宣(主婦の友社)

※この記事は「ゆうゆう」2025年11月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。

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