「どうせ俺なんて…」が口癖のネガティブな彼。そんな彼が会社のピンチを救った意外な正体とは【短編小説】

私の彼氏の竜星くんは、「どうせ俺なんて…」が口癖の、絵に描いたようなネガティブな人です。デートはもっぱら公園か家。フリーターで自分に自信がない彼を、最初は「私が支えてあげなきゃ」なんて思っていました。

「見て、お花がきれいだね」

「どうせ俺なんて、花みたいにきれいじゃないし…」

「そんなことないよ！竜星くんは優しいじゃない」

「優しさなんて、何の役にも立たないよ…」

こんな会話は日常茶飯事。友人たちにも「なんであんな人と付き合ってるの？」と不思議がられますが、彼の根っこにある優しさが私は大好きでした。

そんなある日、私が勤める会社で大きなトラブルが発生しました。社運を賭けた新システムの開発が難航し、部署内は最悪のムード。連日の残業で心身ともに疲れ果てていた私に、彼がそっと温かいお茶を差し出してくれました。

「何かあったの？俺でよかったら話、聞くよ」

いつもの彼と変わらない優しい声に、つい涙がこぼれ、私は会社での出来事を夢中で話しました。

競合他社に先を越され、もう後がないこと。技術的な壁にぶつかり、誰も解決策を見いだせないこと。

すると、いつもは自信なさげに私の話を聞いているだけの彼が、珍しく「そのシステムの資料、見せてもらってもいいかな？」と真剣な顔で言ったのです。

「え？でも、専門的なことだから…」

「どうせ俺なんて、見ても分からないかもしれないけど…でも、もしかしたら…」

藁にもすがる思いで会社の資料を見せると、彼の目の色が変わりました。パソコンに向かう彼の指は、見たこともない速さでキーボードを叩いていきます。

そして数時間後、彼は目の前に一枚のレポートを差し出しました。そこには、私たちが頭を抱えていた問題点と、その完璧な解決策が詳細に記されていたのです。

「これ…どういうこと？」

私が呆然と尋ねると、彼はおずおずと口を開きました。

「ごめん、ずっと黙ってて…。フリーターっていうのは嘘なんだ。本当はフリーランスのプログラマーで…。君に嫌われるのが怖くて、言い出せなかった。どうせ俺なんて、信じてもらえないと思って…」

彼の正体は、この業界では「神」と呼ばれるほどの天才プログラマーだったのです。

翌日、私が彼のレポートを会社に提出すると、事態は一変。プロジェクトは大成功を収め、私は大勢の前で褒められました。

今でも彼は「どうせ俺なんて…」とつぶやきますが、その言葉を聞くたびに、私は世界一の天才を独り占めしている優越感で胸がいっぱいになるのです。

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。