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偏見は社会から生み出されている|私が「#偏見と誤解をなくそう」と発信し続ける理由

  • 2025.10.21

社会が生み出す目に見えない偏見や差別。知らず知らずのうちに、誰かを傷つけているということを、どうか知ってほしい。

わたしが度々エッセイの中で、#偏見と誤解をなくそう と書いているのは、恐れず言うならば、偏見は社会から生み出されているからです。

これだけ指ひとつで情報が得られる時代に、更年期症状のホットフラッシュによる大量の汗を「つゆだく」と揶揄するメディアは、そもそも女性の身体を理解しようとしていません。自ら偏見や差別を生み出しているとしか思えません。

医療が進歩している現代において、発症の原因がまだ特定されていない病気が数多くあるにもかかわらず、「生活が乱れているから」や「真面目すぎる性格のせい」といった、あたかも正論であるかのような思い込みによって当事者が苦しめられている現実。正しい理解が広がらない社会の中で、歯がゆさを抱える当事者は私だけではないはずです。

とりわけ病気に対する誤解や偏見は根深く、誰もが無意識のうちに社会の「普通」という枠に合わせて生きていることでしょう。しかし、病気や障害、特定の属性をもつことで、誰もが一瞬にしてその枠から外れてしまうことがあります。

そこで、はじめて外から向けられる否定的・攻撃的な言葉を耳にしたり、社会の中での「見えない排除」という厳しい現実に直面するのです。

こうした目に見えない排除は、知らないうちに生まれる偏見によって、社会的な活動や人間関係の希薄化、就労や教育機会の喪失といった行動や選択、生活全般に制限をかけてしまうことも少なくありません。

病気に対する偏見や差別は「スティグマ」とも呼ばれ、特定の属性や背景をもつ人に対して貼られる否定的なレッテルのことです。

スティグマは、単なる偏見や差別だけにとどまらず、社会の構造や文化、そして私たちが日常で使う言葉や日々の行動の中にも潜んでいる可能性があります。

たとえば、私たちが何気なく発する言葉や、ひとりひとりがもつ健康観、見た目に対する「こうあるべき」という思い込みや刷り込みが、知らない誰かを苦しめている場合も大いにあるのです。

では、なぜスティグマが生まれ、これほどまでに世の中に根強く残っているのでしょうか。

それは、病気や障害に対する理解の浅さや認識不足、古い固定観念が背景にあり、気づかぬうちに偏見をもってしまうことがあるからです。

たとえば、私が罹患している全身性エリテマトーデス(SLE)を例にお話しすると、SLE患者は日常的に強い倦怠感や疲労感、筋肉痛、発熱に襲われ、ときに体が鉛のように重く感じるほどのだるさがあります。

しかし、病気を知らない人の目には「怠け」や「甘え」と映り、誤解されてしまうこともあります。仮病と思われることもあるのです。

けれど、それは決して怠けでも甘えでもありません。

SLEは、外見からはほとんどわからない症状が多い自己免疫疾患であり、見た目には元気そうに見えても、常に疲弊と葛藤を抱え、日々折り合いをつけ、歩み寄りながら生きているのです。

まずはSLEを例に出してみましたが、このような経験をしているのは何も膠原病に限ったことではありません。

一般的に糖尿病は「暴飲暴食や不摂生が原因」とされ、周囲から「甘いものを食べすぎたせいだ」「運動不足だからだ」と非難されることがあります。しかし、実際には遺伝や体質、生活環境など、さまざまな要因が関わっているといわれています。

また、肺がんも喫煙歴がある人に多く見られる傾向にありますが、非喫煙者や、一度もたばこを吸ったことがない人が発症する原因の受動喫煙も、肺がんのリスクを高めることがわかっています。

このように、病気の背景や原因は人それぞれであり、ひとつのイメージや常識だけで語ることはできません。

それでも、目に見えない症状ゆえに周囲の理解が得られず、精神的な負担や孤独を抱えてしまうこともあります。

当事者にとっては、病気そのものの苦しさに加え、社会に根づいている誤解や偏見が心にどっしりとのしかかり、さらに生きづらさを深めていく現実があります。

ですが、こうした現実を嘆くだけでは、何も変わりません。

社会が生み出すスティグマの背景にある誤解や偏見に目を向けること。

そして、誰もが安心して生きられる社会について考えていくこと。

それこそが、今、私たちひとりひとりに求められていることだと思うのです。

そんな私も病気を経験して初めて知ったことがたくさんあります。

体が思うように動かない日があること。理屈では説明がつかないこと。昨日までできたことが今日はできないこと。そして、世の中への理不尽さ。

これまで、どれだけのもどかしさや悲しさ、つらさ、そして情けなさに胸を痛めてきたことか。

それでも、人の優しさや支えがどれほど勇気になり、希望につながるかを知りました。

「大丈夫?」の一言に救われる日もあれば、何も言わず寄り添ってくれる存在に助けられることもあります。

理解されること、わかってもらえること、それだけでも前に進む力や希望につながるのです。

こうした経験から、私自身も健康や病気についての情報を正しく理解すること、すなわちヘルスリテラシーを高めることの重要性を感じました。

まずは当事者である私たちが正しい知識や情報を知り、新しい知識を身につけることで誤解や偏見に振り回されることなく選択できるはずです。

そうすることで、誰もが自分の特性や状態を隠すことなく安心して自分らしく生きられる社会を目指し、当事者のひとりとして、病気があってもひとりひとりに居場所があること、そして明るい未来があることを伝えていけたらと思います。

宮井典子

SLE Activistとして活動。37歳のときに膠原病予備軍と診断される。38歳で結婚し、39歳で妊娠、出産。産後4カ月で仕事復帰し、ピラティスのインストラクターとして精力的に活動。46歳のときにSLE、シェーグレン症候群を発症。現在は、誰もが生きやすい社会を目指してSNSを中心に当事者の声を発信。

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