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《バリ島・渓谷に佇む森のリゾート》173平方メートルのリッチなヴィラに建築家こだわりの家具やアート…海外旅行誌の“アワード常連”「カペラ・ウブド」

  • 2025.10.21
伝統的なバリ建築のリゾートが多いウブドにあって、新しいアプローチでこの地の魅力を伝えるカペラ・ウブド。

ウブド王宮から北へ車で約30分、ライステラスが有名なテガラランの近くに位置する、芸術の村「ケリキ」。ここまで離れると、ウブドの賑わいも薄れ、熱帯雨林の緑の濃度もグッと増してきます。空気の中に何かスピリチュアルな物質でも混じっているんじゃないか? そんな雰囲気です。

ウォス川へ段々と下りていく渓谷に広がるリゾート。テントが緑に埋もれそう。

開業以来、海外の旅行誌のアワードの常連組である森のリゾート「カペラ・ウブド」。ウォス川の渓谷の地形を活かした3.5ヘクタールの敷地にリゾートは展開しています。

手掛けたのは、トロピカル建築の鬼才ビル・ベンスリー。コンセプトは“1800年代、ヨーロッパからバリ島へやってきた、初期の入植者たち”。バリ島にはいろんなコンセプトのリゾートがあるけれど、さすが目の付けどころが違います。

開拓時代のキャンプ地で、飲料のために雨水を溜めたバケツをイメージしたプールのデザイン。

ヴィラは2ベッドルームロッジが1棟と、22棟の1ベッドルームテントの全23棟。テントといっても広さが173平方メートルもあり、プライベートプール付き。私たちになじみのあるテントとはスケールが違います。1ベッドルームテントはデザインは同じながら、バレー、リバー、レインフォレスト、テラスの4つのロケーションがあります。

各テントは開拓時代のキャンプ生活をイメージしたデザインになっています。たとえば、キャプテン、博物学者、地図製作者、写真家、建築家など、当時の入植者たちをテーマに、一棟ずつその世界観に則した家具やアートワークが選ばれています。

「航海者」のベッドルーム。ベッド前の天幕を巻き上げると、横たわったまま渓谷を望めます。床は素足に気持ちいいジャックフルーツ材。
バスルーム。バスタブ、レインシャワーとハンドシャワーを用意。手作りソープはいくつかの香りの中から選ぶことができます。

室内は遊び心のかたまり! ミニバーは巨大なトランク(ノンアルコールとスナックは毎日、補充されます)、フックは猿、トイレの便座は玉座のようで、頭上から垂れた紐を引っ張って水を流します。「航海者」というテントに泊まったのですが、シャワーヘッドは大輪の花、真鍮をハンマーで叩いて造ったバスタブはカラダを沈めるとザパーッと豪快にお湯があふれます。

アンティーク家具やアート作品、書物、ファブリックなどの装飾品は、建築家ビル・ベンスリーとリゾートのオーナーが海外のオークションやインドネシア各地を回って集めたそうです。

全室にプライベートプールが。地形に合わせて、テントごとにレイアウトは変わります。

ちなみにチェックイン時に「キャンプに必要なものです」と渡されるダッフルバッグ(小さなリュック)には、虫よけや絆創膏、リゾート内のマップなどが入っています。このバッグはお土産に持ち帰りOKです。

クリエイティブな日本料理に目からウロコ!

「マッズ・ラング」と「アピ・ジワ」の入った渓谷を見晴らすメイン棟。

レストランなどの施設群は敷地のほぼ中央にまとまっています。

オールデイダイニングの「マッズ・ラング」は、緑の斜面や絵になるプールを見下ろす高台に位置しています。メニューは近隣の農家で手摘みされた野菜などを使った、インドネシア料理や各国料理。朝食はビュッフェと、卵料理などの温かい料理を注文するセミ・オーダースタイルです。

「マッズ・ラング」の朝食。インドネシア料理と西洋料理、どちらも並びます。

ちなみに、「マッズ・ラング」とは、オランダ統治時代にバリ島の人々と西洋人との仲介役を担った、デンマークから来た有名なスパイス商人。このケリキの谷で人生を終えたそうです。

眺めのいいテラス席が人気。

カクテルタイムにゲストが集まる「オフィサーズ・テント」は、各国のカペラ・リゾートでいうところの「リビングルーム」(ラウンジのような存在)。開拓時代に1日の仕事から戻ってきた男たちが集う“ジェントルマン・クラブ”のイメージだそう。昔日のインドネシアのモノクロ写真や当時を彷彿させる家具が印象的です。

タイムトリップしたような、往年のバリ島の邸宅風。
「オフィサーズ・テント」ではカクテルタイムにティートレイに載せられたケーキやスナックがふるまわれます。

クリエイティブなダイニング体験が楽しめる「アピ・ジワ」は、シェフを囲むようにゲストのテーブルが配置されています。目の前で繰り広げられるシェフのワザを眺めつつ、説明を聞き、斬新な食材の組み合わせのテイスティングメニューをいただきます。

「アピ・ジワ」はゲストの席からシェフの手もとも見えるようオープンキッチンを配置。
4ハンズ・ディナー「OMAKASE EXPERIENCE」。

「アピ・ジワ」で和食をはじめとするアジアの影響を受けたテイスティングメニューを体験しました。ツナ・タルタルの上に見た目はイクラのタピオカがのったアミューズや、ブッラータチーズと大根、手作りベーコンをのせた茶わん蒸し、ミョウガやショウガが入ったつくねを詰めた手羽先の照り焼きなど、コースを構成する10品それぞれが、和と洋の斬新な組み合わせ。新しい感性と美味しさに出会えました。

目の前で次々と皿が仕上げられ、サーブされます。
イクラに見せかけたタピオカをのせたツナ・タルタル(左)。卵の殻の中に茶わん蒸しが(右)
照り焼きチキンの中につくねを詰めた一品(左)。ジューシーなスマトラのエビ。絶妙な火加減!(右)
うまみたっぷりの牛肉の釜めし。

そして食後は「キャンプファイヤー」でリラックス。焚き火を前に焼きマシュマロやホットチョコレートを楽しみながら、星空の下、往年のバリ島のモノクローム映像を鑑賞。炎や映像をぼーっと眺めたり、語ったり、どこか心落ち着く夜の時間。こうしてカペラ・ウブドの夜は更けていきます。

焚き火を囲みながら、モノクロの映像を鑑賞する「キャンプファイヤー」。

聖水によって心身を浄化し、月が導く深い癒しに満たされる

儀式のために、しっとりとした森の細道を下りて、川のほとりの寺院へ。

バリ島ならではの、スピリチュアルな体験も本格的。心身を浄化する伝統的な儀式「メルカット」を、「ア・ソウル・リボーン」というアクティビティとして体験できます。バリ島の女性の正装クバヤを身にまとい、ウォス川のほとりの寺院まで森の細道を下りていき、川のせせらぎに包まれながら、儀式を受けます。

聖水を使い、心身を浄化する「ア・ソウル・リボーン」。
お祈りの後、バリ・ヒンズー教についてのお話も。

頭から聖水をかけてもらい、チャナンというお供えと共に祈りを捧げます。一連の儀式の後、赤・白・黒の三色の糸をよったミサンガのような「トゥリダトゥ」というお守りを手首に巻いてくれました。糸が切れるまで、身に着けているように、と。後日、この糸を着けていると「バリ島へ行ってきたの?」とたびたび人に聞かれました。バリ島と糸で結ばれているような気分です。

スパ「アウリガ・ウェルネス」では、月の周期に根差したユニークなトリートメントが体験できます。月の位相によって施術内容が変わり、新月は再生と内省の時、満月は潜在能力が最大限に発揮される時だとか。

森の中に佇むスパのトリートメント・テント。
月の位相について説明してくれたセラピストさん。

訪れたのは新月の日。マッサージに加え、背中のカッピングとカッサを組み合わせた内容で、血行が良くなり、デトックスもされたよう。セラピストさんいわく、満月の方がリラックスできるそうですが、新月でもリラックスできました。

各種マシーンを揃えたジムもあります。

「カペラ・ウブド」を手がけた建築家ビル・ベンスリーは、タイやベトナム、カンボジアなどアジア各国で名作ホテルを誕生させていますが、実はそのデザインのルーツはバリ島にあります。生まれ育ちはカリフォルニアですが、1980年代初頭に初めて訪れたアジアがバリ島でした。

若きベンスリーはサヌールのタンジュン・サリにあるアート・コミュニティの一員になり、建築家や画家などの仲間との交流から多大な影響を受けたそう。そんな若き日の思い出が刻まれたバリ島のリゾートであることも、この思い入れたっぷりの空間につながっているのかもしれません。

緑に包まれた静謐なリゾートに、アイデアや遊び心がてんこ盛り。

Capella Ubud(カペラ・ウブド)

所在地 Jl. Raya Dalem, Banjar Triwangsa, Desa Keliki, Kecamatan Tegallalang, Ubud, Gianyar, Bali 80561, Indonesia
電話番号 +62-361-2091-888
https://capellahotels.com/en/capella-ubud

古関千恵子(こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること30年あまり。
●Instagram @chieko_koseki

文・撮影=古関千恵子

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