「特別清掃費…3万円？」謎の退去費用を請求する不動産屋。納得いかない私が伝えた逆転の一言【短編小説】

新しいアパートでの生活にも慣れてきた頃、前の住まいの不動産屋から一通の封筒が届きました。退去費用の精算書です。

敷金が差し引かれ、少し戻ってくるかな、なんて軽い気持ちで封を開けた私の目に飛び込んできたのは、予想外の追加請求でした。

「特別清掃費……3万円？」

項目にはそう書かれていました。何より、そんな費用がかかるなんて契約時に一言も聞いていません。すぐに私は不動産屋に電話をかけました。担当は高橋さんと名乗る男性です。

「お世話になっております、佐藤です。先日いただいた請求書の件ですが、この特別清掃費とは何でしょうか？契約書には一切記載がなかったように思うのですが」

すると高橋さんは、明らかに面倒くさそうな声でこう言いました。

「ああ、それは皆さんにしていただいているので。決まりですからお支払いください」

あまりに高圧的な態度に、私は言葉を失いました。契約書にないものを「決まりだから」で通そうとするなんて、どう考えてもおかしいです。

一度電話を切った私は、すぐに契約書を引っ張り出して隅から隅まで確認しました。やはり「特別清掃費」の文字はどこにもありません。

悔しくて、地域の消費者センターにも相談したところ、「契約書に記載のない請求に応じる義務はないですよ。もし話が進まなければ、少額訴訟という方法もあります」と心強いアドバイスをもらいました。

数日後、私は知識という武器を手に、再び高橋さんに電話をかけました。

「先日、特別清掃費の件でご連絡した佐藤です。契約書に記載がない以上、この請求には応じられません」

「ですから、決まりだと言っているでしょう！」

語気を強める高橋さんに、私は落ち着いて、はっきりと告げました。

「義務のない支払いには応じません。もしこれ以上請求を続けられるのでしたら、こちらも少額訴訟を提起することを検討させていただきます」

その言葉を聞いた瞬間、電話の向こうの高橋さんが息をのむのが分かりました。あれだけ威圧的だった態度が嘘のように、急にしどろもどろになり、「……少々、お待ちください」と上司に代わったのです。

結局、上司の方から丁寧な謝罪があり、請求はあっさりと取り下げられました。「知っている」というだけで、こんなにも対応が変わるのかと驚いた、スカッとする体験でした。

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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