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【ばけばけ】婿の銀二郎(寛一郎)が抱えている思いに、トキ(髙石あかり)は気づけていなさそうだ

  • 2025.10.20

【ばけばけ】婿の銀二郎(寛一郎)が抱えている思いに、トキ(髙石あかり)は気づけていなさそうだ

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。『怪談』でおなじみ小泉八雲と、その妻 小泉節セツをモデルとする物語。「ばけばけ」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ! ※ネタバレにご注意ください

新婚生活はほほえましい空気で

日本に伝承される怪談をもとにした作品を発表した小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と、その妻・小泉セツをヒロインとした髙石あかり主演のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の第3週「ヨーコソ、マツノケヘ。」が放送された。

髙石あかり演ずるヒロインのトキは、史実をもとにしたフィクションとはいえさまざまな運命に翻弄される。父・司之助(岡部たかし)が背負った莫大な借金のために学校を辞めることになったり、そのために遊女街など明らかに「下層階級」エリアとして描き出されている「川向こう」での生活を余儀なくされるなどしてきた。

それでいて司之助や祖父の勘右衛門(小日向文世)は〝ご一新〟による社会の変化に適応しきれず、武士のプライドを捨てられないままだ。ある意味での〝一発逆転〟を狙って婿を取ることとなり、お見合いを重ねた末に銀二郎(寛一郎)と結婚、サブタイトル通り松野家に銀二郎を迎え入れ、いよいよ新婚生活が始まった。

冒頭にも記した通り小泉セツ、このドラマではトキとしての役どころの女性はのちにヘブン(トミー・バストウ)と出会い結婚することはほぼ全ての視聴者が理解しており、銀二郎との結婚生活もやがて終わりがくることも折り込み済みではあろう。しかし、2週にわたり苦労を重ねた末での新婚生活は、銀二郎の「よくできた」キャラクター性も手伝い、好感をもって迎え入れられているような気がする。

そう、銀二郎は素直で働き者、いわゆる〝好青年〟である。父と祖父にとっては「跡取り」として仕込まれるという、昭和の朝ドラやホームドラマでよく描かれた〝嫁いびり〟が、武家社会を引きずるある意味での「老害」による〝婿いびり〟として描かれているのは令和の朝ドラらしさを感じる。

働き者の銀二郎のおかげもあって、どん底のようだった松野家の暮らしも少しずつ明るい兆しが見えてきた。名産品であるしじみ汁をうまそうに口にする銀二郎の姿は司之助や勘右衛門と同じ、そして夫婦仲良く出勤する姿など、その新生活はほほえましい空気を届けてくれる。

貧しいながらも奮闘する松野家と対照的な存在のように描かれてきたのが、親戚である雨清水傳(堤真一)である。〝ご一新〟に合わせて早々に髷を落とし「ザンキリ頭」になったり、縁談も含め、トキに何かと親身になってくれ見守ってくれる存在でもあった。傳はトキが働く機織り工場の社長でもある。ある意味、傳のおかげでなんとかなってきた部分もあったわけだ。

しかしそんな傳の機織り工場の経営が、景気の影響で思わしくなくなってしまう。長男の氏松(安田啓人)が抱えた借金もあり、傳は金策に追われ、変わってこれまで特に期待をされたわけでもなく何もしてこずのほほんと暮らしていたであろう三男の三之丞(板垣李光人)が、突如として社長代理として取り仕切ることとなる。これまで安定した「頼りになる親戚」のような存在だった雨清水家も、気づけば大変な状況に翻弄されていた。

北川景子の「お姫様演技」は堂に入ったもの

そんななか、傳は金策に追われるうちに倒れてしまう。三之丞と同じく、これまで何もしてこなかったであろう傳の妻、タエ(北川景子)が看病しようとするものの、おかゆすらろくに作れない有様だ。この北川景子演ずるタエのキャラクターが、どこかかつて彼女が大河ドラマ「どうする家康」(2003年)で演じた信長の娘・茶々を思い起こさせるような奔放な部分もあるようで、この「お姫様演技」は堂に入ったものといえる。

何もできないタエに代わり、これまでの恩返しとばかりに看病を買って出たのがトキだ。新婚間もない時期ではあるが、工場勤めと看病に時間を大きく割かれる日々が始まる。看病生活の大変さというシンプルな理由だけでなく心配そうにするのは、司之助と母のフミ(池脇千鶴)である。

トキが背負う運命は、お金などの生活面だけではないことは、うすうす視聴者も感じ取っていたはずだ。そう、トキは司之助とフミの実の娘ではなく、傳とタエの子供である。トキは子供に恵まれなかった松野家の跡取りとして、その運命がはじめから決められており、生まれたときに松野家の娘として引き取られていった。それはトキ自身は知らない。そんな「実の娘」が看病として毎日通うことになる。これもまた、何かの必然で導かれたような運命である。この時代には「家を継ぐ」「跡取り」ということが今では想像もつかないほどの重要事だったと思われるが、今のところ「何もしらない」トキを取り巻く〝4人の親〟、そのそれぞれの心情がどう動いていき、どう演じられていくか、見守る側のハラハラ成分はかなり強い展開だ。

「二度と母親の顔は見せるまいと誓ったのに」
タエの言葉が胸に迫る。
そんなトキの背負う運命は、思わぬところから三之丞に知られてしまうことになる。

トキの献身的な看病もてつだい、傳の容態は少しずつ回復の兆しをみせる。工場の経営はさらに悪化の一途で、悪い空気のなか、ミスをした女工に検番の平井(足立智充)が手をあげてしまう。ひさしぶりに現場を訪れた傳がそれを目撃し、ショックを受け、社長代理の三之丞を激しく叱責する。すると三之丞はトキの出生の秘密を口にし、その置かれた立場の苦しさを告白する。

現代とは違う基準の「家」という制度の大変さ。トキはそれらを「読んで」暮らしを続けるが、パートナーである婿の銀二郎が抱えているであろう思いには、気づけていなさそうなバランスも、ドラマを見る側にとってのちょうどいいバランスとして目を引く。

松野家と雨清水家の「家」としてのバランス、トキが生まれる前から背負った運命、そしてまだ新婚のトキと銀二郎はどうなっていくのか。ハラハラを抱えたまま4週目に突入していく。

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