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映画『愚か者の身分』北村匠海×永田琴監督、闇ビジネスに身を落とす男たちの行く末「願い すらある映画になった」【独占インタビュー】

  • 2025.10.19

永田琴監督による映画『愚か者の身分』は、現代社会にはびこる闇ビジネス、その世界に身を落とした3人の男たちの葛藤とありようをまざまざと描いている。主演の北村匠海は犯罪組織の手先として、戸籍売買を行うタクヤとなった。ダーティーに、それでいて弟分のマモル(林裕太)には愛情を惜しみなく注ぐという繊細な演技をほどこし、また新境地を拓いた。

物語は、一度入ると容易に抜けられない闇ビジネスの世界が舞台。タクヤ、マモル、そしてタクヤをその道に誘った運び屋の梶谷(綾野剛)、彼らの拠点である新宿・歌舞伎町から大金が消えた事件をきっかけに、ギリギリの逃避行劇が始まる。運命に翻弄されながらも、生き抜こうともがき続ける3人のゆくえとは。

ときに進む道の選択肢がなく、荒れた泥道をはいつくばるしかないこともある。それでも、歩んだ先には薄く光が差し込む、そんな予感を胸に広がらせてくれる作品となった。初めての取り組みとなった北村&永田監督に単独インタビューし、製作秘話を伺った。

北村さん史上1、2を争うダークで痛々しい役でした。タクヤをご自身が演じるイメージはすぐに湧きましたか?

北村:これが意外と、すぐにイメージできちゃったんです。というのも、タクヤは今回光を失いますけど、僕も友人に「苦しんでいたり、何か思い詰めていたり、出口のない感情があるときのほうがよい」と言われたことがあって。あと「アンダードック」(武正晴監督)というボクシングの映画をやったときにも、「血がついているほうがかっこいいね」とも言われたんです(笑)。

永田監督:へえ~(笑)! 血が似合う男だ。

北村:そうみたいなんです。なんかうれしいような、うれしくないような……(笑)。今回は光も失うし、いわゆる血というものもあったりもするし、一筋縄ではいかない、壁がある(役)だろうなと思っていました。

でも、自分が苦しんでいるほうがいいというのを自覚している分、そこに飛び込む勇気はきっと僕は他の人よりもあると思うんです。だからすぐ楽しめるだろうな、というマインドになったというか。どちらかというと楽観的に「僕ならやれるだろう」という気持ちにもなったかもしれないです。

永田監督はもともと北村さんのそのあたりまで見越していた、期待していたんでしょうか?

永田監督:いえ。そもそも配役が決まる前、正直「北村匠海さんにタクヤをやってもらえたらめちゃくちゃうれしいけど、この人……どういう人なのかな?」と出演作を見れば見るほど分からなくなって。衣装合わせで初めて会ったときに、本当にニュートラルな人なんだと気づきました。いい意味で、(芝居の)相手によってどうにでも変われる人で、水のような存在だなと感じました。だから、匠海くんについては全然心配していませんでした。

むしろマモルのあり方によって、タクヤの姿も変わってくるだろうと。マモルという役がしっかり出来上がれば、匠海くんは自然とタクヤになっていく確信があったので、むしろ経験の少ないマモル役に重点を置き、たくさんの話をしました。タクヤとマモルの二人で食事に行ってほしいと思っていたら、匠海くんが進んで裕太くんを誘ってくれたりもして。兄貴分としての自分のあり方を実践してくれていて、何の不安もなく撮影がスタートしました。

北村さんは林さんに対して、ご自分発信でコミュニケーションを取っていたということですね。

北村:結構取っていました。裕太の存在をもともと僕は知っていて、彼とやれるのはすごくご縁だなとも思っていたんです。『愚か者の身分』を撮影する直前まで、僕は『悪い夏』を撮影していて。「鈍牛(倶楽部 ※芸能事務所)ってすげえな!」と思いましたよ(笑)。

『悪い夏』で共演した河合優実さんに続いて、林さんも同じ事務所ということですもんね!

北村:そうです! まさか2作連続で鈍牛の刺客……というか(笑)、勢いのある男女のホープに出会えるなんて、と思いました。

僕が監督とは違うアプローチで、マモルないし裕太とどう接するかというところで、この映画を僕がやった意味はきっと生まれるだろうと思いました。それはやっぱり(綾野)剛さんの存在があるからで、僕は絶対に剛さんから何かを受け取るのは分かりきってはいたので、剛さんから受け取り、剛さんが自分を甘えさせてくれるだろうと。設定上でも僕はもうあの人に甘え切ってやるんだ、みたいなところがありました。だからこそ、僕は裕太がどれだけ甘えれる存在になれるかだな、と。本当の兄としてぐらいの気持ちでいてくれるかどうかで、何か変わっていくだろうなと。

これが琴監督の思い描くマモル像と一致するか、当時はわからなかったんですけど、きっと自然と一致してたんだろうなぁ、という感じがありました。

タクヤ、マモル、梶谷の3人のバランスが絶妙だったと思います。永田監督は3人の関係性をどう演出で見せていこうと考えていたんでしょうか?

永田監督:私は、「この3人は3人でありながら、同じ一人の人生、同じ人物に見えるようにしたい」と伝えていました。いわばbefore、afterという感じで。タクヤの少し前の姿がマモルであり、タクヤがこのまま生きていった先に梶谷がいる。そんな一人の人間の変遷として見せたかった。結果的に自然とそれがみんなの中に浸透して形になっていったのかな、という気はしています。

北村さんも撮影の前から、今のお話を聞いていたと?

北村:はい、そうです。だから梶谷といるときのタクヤだと、マモルを自分の中に降ろすような感覚でやっていました。反対に、マモルといるときは、やっぱり梶谷の何かを、という。自分の頭の中にタクヤにとっての梶谷と、マモルにとってのタクヤが、やっぱり重なるんですよね。梶谷を見てタクヤは生きてきただろうし、マモルはタクヤを見て生きてきたから。そういう意味でも、3人の関係がつながるといいなと思いましたし、タクヤはやるべきだと思い、やっていました。

北村さんについて、先ほど永田監督は「ニュートラル」と表現されていましたが、人の良さや品の良さみたいなものを持っている印象がありまして。

北村:ありがとうございます。

永田監督:品がいいわよ~!

タクヤ自身は厳しい環境で育ってきましたが、それでも根の良さみたいなものが感じられ、それは北村さんが演じたことが大きいですか?

永田監督:タクヤは親が亡くなり、おばあちゃんも亡くなり、という不運が重なってしまった若者なんです。その環境こそが一番の原因となり、闇ビジネスに身を置くようになってしまった。でも本来はもっと一般的な家庭環境があったはずなんですよね。だからこそ、彼にはおばあちゃんの家庭の味みたいなものがしっかり刻まれている。家庭というものを知っている人だからこそ、匠海くんが持ち合わせている空気感が役柄にも程よく馴染んでいたんじゃないかと思います。

北村さんは撮影していて、永田組ならではの楽しさなど、どのようなことが印象に残っていますか?

北村:本当にエネルギーがありました。もう……愛でてもらったなぁ、と思っています。

永田監督:愛でたね(笑)。

北村:タクヤ、マモル、梶谷を一番愛して一番愛でていたのは紛れもなく琴監督だったから。琴監督がそういてくれるから、なんか……僕らは常にこの作品で温かさを持てたのかなと思っています。この作品が持つ温かさは、やっぱり琴監督が持つ温度なんですよね。僕らは芝居で感情だったり、温度を表現することもありますけど、『愚か者の身分』という、一見どこまでも硬派に描けるような作品で、光や温かみを感じさせるのは、永田琴監督の人間性なんじゃないかなと思います。琴監督がやる意味というか、そこに僕らは出会えてよかったなとすごく思います。

きっと目を背けてしまう人もいるかもしれない題材ではあるけれど、そこにちゃんと救いがあるんです。日々、琴監督から「よかったです!素敵です!!」と言われるのが心地よかったですし、あれを待つために僕らは答えを出し続けていた気がします。

永田監督はどのように皆さんを愛でられていたんでしょうか?

永田監督:OKが出る=私は素晴らしいと思っている、ということなので、それが“愛でる”ことだったんだと思います。あとは、この登場人物たちを、私自身が守りたいというか、母親の様な気持ちで撮りたいと思っていました。母性を持って描きたいという気持ちは、ある種、由衣夏(木南晴夏)の立ち位置にも重なっていたと思います。犯罪も含め色んなことをやってここまできた人(梶谷)だけど、由衣夏はちゃんと許してあげる存在であるということ。

もう一つのテーマとして「犯罪を起こした人は、一生許されないまま生きていくしかないのか」という課題が私の中にありました。由衣夏が物語の中で見せる“許す”という姿勢、そしてその純朴さや大らかさのような気持ちで、私はみんなを撮りたかったんです。

由衣夏は梶谷の支えであり、精神的支柱でもある人ですよね。

永田監督:由衣夏は梶谷の恋人ですが、同時に“母”のような存在であると感じていました。実の母はいないけど、もしいたら「大丈夫?今どこにいるの?」と声をかけてくれる様な、彼女はまさにその役割を担ってくれる存在。母ではないけれど、母の温もりを与えてくれる。その存在自体が私にとっても救いになっていました。

北村さん、本作で感じ取ったことがいろいろあったかと思います。今ご自身の中に残っている思いは、どのようなことになりますか?

北村:実際に歌舞伎町で撮影している中で、言葉にできないような光景も見たりしました。スピーカーを持った兄ちゃんの周りを若いお姉ちゃん……もしかしたら10代であるかもしれない子たちが、兄ちゃんを囲みながらキャッキャしている姿とかもあったりして。そんな中、マモルとタクヤは缶蹴りをして。リアルな空間に身を置くことで、いろいろなことを感じました。

この作品で描いている社会的テーマの一つには、そうした若者の貧困があります。みんなが今社会に対して何か声を上げたいけれども、それが届くことはやっぱりどうしても叶わなかったりする。今こうして喋っている中でも、世界では誰かが死んでいるし、誰かが生まれている。そういうテーマははもちろん大事にしているんです。ただ、そのことを伝えたいというよりかは、『愚か者の身分』という映画やエンターテインメント全体を捉えて、最後はちゃんと救われてほしい、そういう物語だなと思いました。

僕はこの作品で実際に光を失ってみたりして、言葉だけを聞いて、温度や風しかない世界を生きてみて、改めて映画という場所がやっぱり心底誰かの逃げ場所であるといいなとすごく思ったんです。僕自身が実際、映画や音楽に文字通り救われてきたのもあります。今小規模の映画館がなくなってしまったりもしますけど、映画館という場所は、ある意味自分にとってのオアシスだった。ちゃんと逃げ場所として必要としてくれる人がいてほしいな、と。そういう願いすらあるものになりました。

最後の質問になります。FILMAGAは映画好きが多く集まるサイトなので、お二人が最近観た映画やドラマで印象に残った作品を教えてください。

永田監督:『アイム・スティル・ヒア』というブラジルの映画です。軍事政権下のある家族を描いた作品で内容的にはとても重いのですが、ドキュメンタリーにも見えるような作りですごーく良かったです。映画の幅広さを改めて感じさせてくれました。あともう1本、古い映画もいいですか? 『ノーカントリー』も大好きなんです!「愚か者〜」があれくらいの残虐性を課題にしているところもあって見直しました。スタイルは違いますが、残虐を表現するにはリアクションが重要だと思っています。で、匠海くんは?

北村:僕は……自分のFilmarksを見ながら答えてもいいですか?

ありがとうございます、ぜひ。

北村:何せ今僕はNHKにこもりっきりなので(「あんぱん」の撮影中)、どれにしよう……(とスマホをじっと眺める)。

永田監督:決まった?

北村:はい! 僕はホラー映画が好きなので、少し前の作品ですが、『ヘレディタリー/継承』にします。

永田監督:精神ホラーだよね。

北村:そうですね。最後、爆笑しちゃうという。これまで、僕はずっとアジアのホラーばかりを観てきたんです。あるとき、『ミッドサマー』きっかけにアリ・アスター監督の作品を観てから(洋画も)観るようになって。「ヘレディタリー」では、「寄ってんの?寄ってないの?」みたいなカットがあって、あのカットがずっと秀逸だなあと思っていました。

インスピレーションを受けたと。本日はどうもありがとうございました!

(取材、文:赤山恭子、写真:iwa、北村匠海ヘアメイク:佐鳥麻子、北村匠海スタイリスト:TOKITA、永田琴ヘアメイク:石邑麻由、永田琴衣装:near.nippon)

映画『愚か者の身分』は2025年10月24日(金)全国公開予定。

出演:北村匠海、林裕太、山下美月、矢本悠馬、木南晴夏/綾野剛
監督:永田琴
公式サイト:https://orokamono-movie.jp/
配給:THE SEVEN ショウゲート
(C)2025映画「愚か者の身分」製作委員会

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