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産婦人科医が解説する“男女の性欲の違い”とは?「男性は本当にわかりやすい。付き合った途端に下がり、結婚で下がり、さらに…」

  • 2025.10.18

性欲は“あって当たり前”なのに、今もどこか語りにくい。そもそも女性の性欲の仕組みは? 男性との違いは? 誰にも教わらなかった性欲の基本を、高尾美穂先生に伺います。

©Trickster/イメージマート

男性の性欲には説明がつく

自分のからだのことなのに付き合い方がわからない。謎多き女性の性欲について、産婦人科医の高尾美穂先生にお話を伺いました。

「最初に伝えたいのは、性欲は食欲や睡眠欲と同じで、どう満たすかは自分で決めていい、ということ。食欲が抑えきれずデザートを追加する、睡眠不足で昼寝をする、セルフプレジャーで性欲を満たす。どれも当たり前で自然なことです」

以前より性に関する情報に触れる機会は増えたものの、いまだに性欲は秘め事という感覚が根強いのはどうしてなのだろうか。

高尾美穂先生。

一つには、性に興味を持ち始めてから、性の話題に対して親や友人がどんな反応をしたか。その影響はかなり大きいと思います。

もう一つには、これまで性欲についての研究は、男性ホルモンのテストステロンがメインで、女性ホルモンのエストロゲンはサブ的な扱いだったことが挙げられます。ただ、これは仕方のない側面もあり、テストステロンは数値的にはっきりと性欲に結びつくのに対し、エストロゲンは月経周期の中でも変動するため性欲と結びつけるのが難しいんです。女性のからだにもテストステロンは存在しますが微量すぎて、その個人差が性欲と比例するとは言い切れません

男女の性欲の違いとは?

女性の性欲を何が司っているのか現段階では特定できないものの、男性ホルモンの特徴を知ると、男女の性欲の違いが見えてくる。

男性は本当にわかりやすくて、テストステロンの最高値は交際が始まる直前で、付き合った途端に下がり、結婚で下がり、第一子誕生でさらに下がります。世間的にいいお父さんと言われる人のテストステロン値は低いんです。でも、いいお父さんでも浮気心が出た途端、テストステロン値はバーンと跳ね上がる。男性はいつでも恋する自分に戻れてしまうんですね」

一方、出産後の女性はエストロゲン値の低下の影響を受け、“お母さん”として生きる人が増える。

「性交渉には、生殖とコミュニケーションという二つの側面があります。出産までは生殖のための性交渉であったとしても、産後しばらくはコミュニケーションが主体になりますよね。しかし、女性は産後の生理が再開するまでエストロゲン値がほぼゼロの状態で、その影響で腟の滑りは悪いし、気分も鬱っぽくなる。セックスをする気になれず、パートナーとの間でコミュニケーションにズレが生じ、ふと気づいた時にはセックスレスで恋するオンナを卒業していた、というケースは多いですね

子どもの数とテストステロン値の関係

子どもの数とテストステロン値の関係。

アメリカの高齢白人男性(n)754人を対象に、子どもの数と唾液中の平均テストステロン値の関係を示したグラフ。子なし男性は約90pg/mLと高いが、1~2人の子を持つ父親は約76pg/mLに下がり、父親である男性のテストステロン値は非父親の男性よりも有意に低いことが示された。一方、子どもが多数いる男性はテストステロン値も高い傾向に。

Pollet TV, Cobey KD & van der Meij L. (2013)より引用

更年期の性交痛には対策を

いつまでも性交渉が大切と感じているなら、知っておきたいことがある。

40代以降は閉経に向けてエストロゲンが減少するため、腟は乾燥し弾力性が低下します。それによって性交痛を感じる人が増え、セックスから遠ざかってしまいがちです。そのため、更年期で生理が不規則になってきたら婦人科でのホルモン補充療法を早めに検討されるのがいいと思います」

●お話を聞いたのは

産婦人科医 高尾美穂(たかお・みほ)先生

医学博士。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。日本医師会認定産業医。イーク表参道副院長。ヨガ指導者。診療、メディア出演、SNS、stand.fm『高尾美穂からのリアルボイス』などを通じて女性のウェルネス向上のサポートを行っている。

●性をさらに深く知る本

『私たちのセクシュアル・ウェルネス 女性の体・性・快楽のメカニズム』

『私たちのセクシュアル・ウェルネス 女性の体・性・快楽のメカニズム』エミリー・ナゴスキー 著/小澤身和子 訳/高尾美穂 日本語版監修 日経ナショナル ジオグラフィック 2,640円。

これまでオープンに語られてこなかった女性のからだと性にまつわることを、アメリカの人気性教育者が最新科学を用いて詳らかにする。世界28カ国で翻訳されたエンパワーメントの書が待望の初邦訳。

エミリー・ナゴスキー 著/小澤身和子 訳/高尾美穂 日本語版監修
日経ナショナル ジオグラフィック 2,640円


『娘と話す、からだ・こころ・性のこと』

高尾美穂 著 朝日新聞出版 1,760円。

更年期の母親と思春期の娘。人生の二大ピンチの時期にある女性や母娘に向けて、性や心身の悩みについて会話ができるように、知識から話し方までをフルサポート。

高尾美穂 著 朝日新聞出版 1,760円


続きは「CREA」2025年秋号でお読みいただけます。

文=今富夕起

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