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「偉大すぎる父を持って…」長澤まさみが演じた「葛飾北斎の娘」の素顔とは?

  • 2025.10.17

日本を代表する浮世絵師、葛飾北斎。その娘で、北斎の右腕として活躍した女性浮世絵師・葛飾応為(おうい)を長澤まさみさんが演じた。

時代劇映画の主演は初めてという長澤さん。「知れば知るほど味わい深い人物で、実際に会ってみたい、見てみたいと思った」と話す応為を、どう演じたのか。

©文藝春秋(撮影:榎本麻美)

◆◆◆

――本作のオファーを受けて、どのようなお気持ちでしたか?

長澤まさみさん(以下、長澤) 葛飾北斎は、今も世界中に熱狂的なファンを持つ、日本を代表する浮世絵師です。でも、その北斎に「葛飾応為」という娘がいて、弟子でもあったということはそれほど知られていません。

これまでに、応為を主人公にした漫画やドラマなども作られてはいましたが、私自身、応為についてそれほど深く知っていたわけではなかったので、こういう人がいたということに大変興味を惹かれました。

応為と北斎の親子関係に魅了された

――長澤さんにとって時代劇映画では初の主演となります。オファーを受けた決め手はどこにあったのでしょうか?

長澤 応為という女性に興味をそそられたことが大きいですが、脚本を読んで応為と北斎の親子関係に魅了され、演じてみたいと思いました。

『MOTHER マザー』(2020年)でご一緒させていただいた大森監督と、また一緒に仕事がしたいという気持ちもありました。私にとって面白いチャレンジができるのではないかと思い、ぜひやらせてほしいとお答えしました。

――応為という女性をどのようにとらえましたか?

長澤 すごく男勝りで、大胆剛毅。いい意味で「男らしい」女性だと思いました。一方で、純粋で優しい。どう演じるのが応為らしいだろうと悩んでいた時に、監督から「長澤さんの素のままで」と言っていただきました。それを聞いて気持ちがすごく楽になって、“応為を演じる”というよりも、私が感じた応為をそのまま出せばいい、という意識で演じました。

偉大すぎる父を持って

――誰もが知る天才絵師・葛飾北斎を父親に持つというのは、娘としてどのような気持ちだったと思われますか?

長澤 偉大すぎる父を持ったことについて、応為が萎縮していたとは思えません。自分自身も絵師だった応為は、目の前で絵を描いている北斎の姿に、自分も負けまいと必死で食らいついていたのではないかと思います。父の名声や存在の大きさに物怖じするような女性ではなかったのではないかと感じました。

©2025「おーい、応為」製作委員会

――応為にとって北斎はどんな存在だったと想像されますか?

長澤 誇りだったと思いますし、背中を追い続ける憧れと尊敬の対象だったと思います。父と娘というよりは、固い絆で結ばれた師弟関係という意識が大きかったかもしれません。

そもそも、父と娘の間には、母と娘とは違う親子関係があるように思います。異性というのもあるのかもしれませんが、心の隙間を埋めるというか、お互いに癒やされる存在なのかもしれないと思います。

応為と北斎は確執があったと思う方もいるかもしれませんが、私は本音を言い合える心許せる存在で、お互いにほっとする関係性でもあったのではないかとみています。

感性で演じられるようになりたい

――北斎を演じた永瀬正敏さんとは初共演です。いかがでしたか?

長澤 永瀬さんは真っ直ぐで、四六時中役のことを考えているような方でした。北斎になろうとされて、途中からは本当に北斎になっているように見えるくらい。その集中力や情熱に助けていただきながら親子を演じさせてもらったのはありがたいと思っています。

現場では優しいお気遣いでまわりを包み、「家族」という言葉を口にしなくてもファミリー感を醸し出してくださる方で。安心して場に浸ることができました。

©文藝春秋

――応為を演じて、どのような手応えを感じていますか?

長澤 純粋に絵を描き続けた応為を演じて、“演じる”ということに対して、その時感じることにもっとピュアに素直にやっていきたいと思うようになりました。頭で考えすぎず、感性で演じられるようになりたい、と思いました。

時代劇だからと気負わずに

――完成した映画をご覧になって、いかがでしたか?

長澤 本当にいい親子の物語だなと感じました。北斎と応為の生活を覗き見しているような、2人のドキュメンタリーのような映画で、じんわり心に響きました。

――自分らしく生きる応為の姿に励まされる作品だと思います。

長澤 そう言っていただけると嬉しいです。江戸時代に女性が浮世絵師として活躍するのは、珍しいことだったと思います。でも応為は自分の気持ちに正直に、やりたいと思うことを諦めずに生きた。その姿は、現代の女性が見てもすごく共感できると思いますし、勇気をもらえると思います。

時代劇だからと気負わずに、“現代時代劇”を観るつもりで、少しタイムスリップした先の粋でカッコいい応為を楽しんでいただけたら嬉しいです。

文=相澤洋美
写真=榎本麻美
ヘアメイク=スズキミナコ
スタイリスト=百々千晴

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