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【こんなことで人は死ぬ】「風邪をひいただけなのに…」高齢者の意外な死因。法医学者の結論は?

  • 2025.10.16

【こんなことで人は死ぬ】「風邪をひいただけなのに…」高齢者の意外な死因。法医学者の結論は?

何気ない日常の中に、思いがけない“死の落とし穴”が潜んでいるかもしれません。大切な人が、そして自分が、そんな危険に巻き込まれないために——。話題の新刊『こんなことで、死にたくなかった 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(高木徹也著・三笠書房)から、そのヒントを抜粋してお届けします。第4回は、「風邪をこじらせて死ぬ!?」

風邪をこじらせて死ぬ!?

検案や解剖の依頼でよくあるのは、「数日前からほぼ寝たきり状態の高齢者が、布団の中で亡くなっているのを家族が発見しました」 というケースです。

詳しく話を聞くと、「それまで比較的元気に過ごしていたが、数日前に風邪をひいてからほぼ寝たきりだった」とか「ごはんも食べなくなって衰弱していたようだ」といった話が出てきます。

冬場は、年齢問わず風邪が流行ります。特にインフルエンザウイルスによる感染は、高熱や関節痛などの症状を引き起こすので病院を受診することも多いはずです。また世界的に大流行した新型コロナウイルスによる感染は、特に糖尿病など、持病のある高齢者が重篤な肺炎を引き起こして亡くなることもあります。

そのため、亡くなる前に風邪をひいていたと疑われるケースでは、解剖検査中にインフルエンザウイルスA・Bと新型コロナウイルスの検査を必ず行ないます。

ところが、いざ解剖してみると、意外にも体内に常在している「黄色ブドウ球菌」や「大腸菌」などの細菌による気管支炎や肺炎が原因だったりするのです。

活動的に行動している高齢者は、まだまだ免疫機能も元気です。しかし、些細な病気やケガであっても、それを契機に寝たきり状態になると、免疫機能がガクッと低下します。すると、常に身体の中にいる細菌によって感染症を引き起こしてしまうことがあるのです。これを「日和見感染」といい、高齢者だけでなく、抗がん剤やステロイド薬など免疫機能を低下させるような薬を摂取している人にも起こり得ます。

高齢者の場合、寝たきりの状態では不衛生になりやすいことも、このような感染を引き起こす要因の一つになります。特におむつをすると、自身の便の中に潜む大腸菌が悪さをするのです。

警察が「事件性あり」と誤解してしまうことも……

ちなみに、このようなケースの検案や解剖の依頼があった際、まれに警察から「高齢者虐待が疑われます」との報告を受けることがあります。

警察からすると、亡くなった高齢者がやせていて、擦過傷のようなものが体表面にあることが多いため、家族からネグレクト(介護放棄)を受けた、もしくは暴行などの身体的虐待を被ったという可能性を否定できないわけです。

一方、私たち法医学者からみると、やせているのは寝たきり状態で食欲が低下したからであり、当然だと判断できます。

また擦過傷のようなものは、高体温で布団の中にいて、汗などで湿った環境にあったことから、皮膚をひっかいたことや「床ずれ」(体重で圧迫された部位にできる傷)になりかかったものだと推測します。

現場を確認してから、警察に「寝たきりになる前に風邪をひいていませんでしたか?」と質問すると、「おっしゃる通りです」と返ってくるので、風邪をひいたことを契機として亡くなったと判断することになるのです。

【このような危険を避けるには……】

・高齢者の場合、風邪だからと甘く考えず、速やかに医療機関を受診する。
・長期間寝る場合には、寝具をこまめに交換する。
・部屋の換気と掃除をこまめに行なう。

※この記事は『こんなことで、死にたくなかった 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』高木徹也著(三笠書房刊)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。

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