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「勝敗つけるべき」「差別だ」“運動会のかけっこ”への先生たちの本音は?運動会の徒競走は教育観を映す鏡か

  • 2025.10.15

教職員アンケートで見えた「運動会の徒競走」現場の本音

「運動会の徒競走」現場の本音は?
「運動会の徒競走」現場の本音は?

ここ20年ほど話題になっている「順位を付けない徒競走」。実際のところ、どのくらいの学校で実施されているのでしょうか。特定非営利活動法人School Voice Projectが2025年6月から7月にかけて実施した教職員向けアンケート調査で、興味深い実態が明らかになりました。

小学校では9割超が実施、中高では半数程度

全国の小学校から高校までの教職員を対象とした調査によると、運動会・体育祭での徒競走の実施率は校種によって大きく異なることが判明しました。

小学校では実に94%が徒競走を実施していると回答した一方で、中学校では56%、高校では50%と半数程度にとどまっています。興味深いのは地域差もあり、関東地方では62%、中部地方では86%が実施しているという結果でした。

さらに興味深いのが、順位と得点の付け方です。中学校と高校では徒競走を実施している学校の100%が「順位と得点をつけている」と回答しました。

ところが小学校では様相が一変します。「順位と得点をつけている」と答えたのは64%にとどまり、「順位はつけるが得点はつけない」が14%、「順位も得点もつけない」が18%となりました。中には「4人で走り、1・2位のみに順位と得点をつける」という工夫をしている学校もありました。

教職員の本音は真っ二つ

自由記述では教職員の複雑な思いが浮き彫りになりました。

「続けるべき」派の中学校教員は「順位をつけないとなると、何のために体育大会をしているのかわからない。走る能力に個人差はあれど、その子の頑張りが見えるようにするためにも順位をつけないというのはおかしい」と主張します。

一方、「必要ない」派の小学校教員からは「徒競走は勝ち負けがハッキリし過ぎていて、身体にハンディキャップのない人たちが参加しやすい建て付けになっている。全員が強制的に参加しなければならないのは差別的」という声が上がりました。

現場が模索する折衷案

興味深いのは、両極の間で工夫を凝らそうとする教職員の存在です。小学校の養護教諭は「他人と比べて順位をつけるより、走る練習をすることで自分のタイムがどのくらい伸びたかを見る方が意味がある」と提案しています。

また、中学校教員からは「走りたくない生徒にも走ってもらうようお願いしなければならないのが心苦しい」という率直な悩みも聞かれました。

運動会そのもののあり方を問い直す声も

さらに踏み込んで、運動会全体のあり方を見直すべきという意見も出ています。小学校教員の「勝敗を経験する事も大切だとよく言われるが、負け続ける子そして不登校に至る子についての言及はない」という指摘は、現代の教育現場が直面する課題を端的に表しています。

まとめ:教育観を映す鏡としての徒競走

今回の調査結果から見えてくるのは、徒競走のあり方が単なる運動能力の測定を超えて、教育観や学校文化のあり方を映し出していることです。小学校では多様な工夫が見られる一方、中学校・高校では従来通りの実施が主流という傾向も、発達段階に応じた教育観の違いを反映しているといえるでしょう。

School Voice Projectの調査は、教育現場が「勝敗を経験させたい」という声と「苦手な子への配慮や多様性を尊重したい」という声の間で葛藤しながら模索している実態を浮き彫りにしました。徒競走をめぐる議論は、まさに現代の学校教育が向き合うべき課題の縮図といえるかもしれません。

(LASISA編集部)

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