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肌寒くなってくる時期の「お風呂でのウトウト」が命取りに!法医学者が警告する入浴中の重大リスク

  • 2025.10.14

肌寒くなってくる時期の「お風呂でのウトウト」が命取りに!法医学者が警告する入浴中の重大リスク

何気ない日常の中に、思いがけない“死の落とし穴”が潜んでいるかもしれません。大切な人が、そして自分が、そんな危険に巻き込まれないために——。話題の新刊『こんなことで、死にたくなかった 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(高木徹也著・三笠書房)から、そのヒントを抜粋してお届けします。第3回は、「お風呂で死ぬ!?」

お風呂で死ぬ!?

冬の季節が近づいてくると、法医学者は「風呂溺が増える時期だなあ」と思うようになります。

風呂溺とは、入浴中に浴槽内で沈んだ状態で死亡すること。特に冬場に多く、近年では「ヒートショック」という名称で知られるようになってきました。

ただでさえ、冬は寒さで血管が収縮しています。その状態で温かい浴槽に入ると、血管が拡張して血圧が急激に低下し、脳に送りこむ血液量が減少してしまいます。これが、ヒートショックの主な要因です。

さらに統計的に、ヒートショックは65歳以上の高齢者に多い、という特徴があります。65歳というと、最近では多くの企業における定年の年齢。長寿国となった現代の日本では、見た目はまだまだ若々しく元気な人も多く見受けられますが、体内の老化現象はしっかりと進行しているのです。

そんな老化の中でも、特に「自律神経反射の遅延」と「感覚機能の低下」は、入浴中の死亡に深く関わっているように思います。

自律神経とは、脳に血液を送りこむために働く交感神経と、胃腸に血液を送りこむために働く副交感神経の総称です。簡単に言うと、交感神経は活動に、副交感神経は休眠に関する反射を担っています。一日の間に、この交感神経と副交感神経が入れ替わるように働くことで、日常生活における身体への過剰な負荷に抑制をかけ、私たちは円滑に生命を維持することができています。

ところが65歳あたりを境として、この交感神経と副交感神経の入れ替わりが遅延してしまうのです。

入浴中にウトウト……それ、気絶です!

入浴中にウトウトしてしまうことがありますよね。

実のところ、あれは居眠りではなく「気絶」です。お湯の温熱作用によって血管が拡張し、血圧が低下し、脳への血流が低下したことで意識を失った状態なのです。医学的にこの状態を「一過性脳虚血」と呼んでいます。

それでも若い人は自律神経の反射が俊敏なので、すぐに交感神経が反応して脳血流が復活し、「おっと、寝ちゃった」と目が覚めるため、大事には至りません。

ところが、自律神経反射が遅延している65歳以上は、すぐに交感神経が反応せず、意識を回復することなく浴槽内に沈んでしまうのです。

さらに感覚機能の低下も、入浴中の死亡に関与していると考えています。

温泉施設や銭湯で、ものすごく熱いお湯に平然と浸かっている高齢者がいますよね。あれは慣れや根性の問題ではなく、熱さに対しての感覚が鈍くなっているのです。

ただ、熱さへの自覚が乏しいというだけで、体内はしっかり熱さを認知しています。そのため、高温によって血管が一気に拡張し、気絶してしまうのです。

実際、入浴中に死亡した65歳以上の人の大半が、設定温度を高くしていたと報告されています。

【このような危険を避けるには……】

・入浴前に食事や飲酒をしない。
・脱衣所や浴室をあらかじめ暖かくしておく。
・設定温度を高くしすぎず、入浴中は家族にこまめに声をかけてもらう。

※この記事は『こんなことで、死にたくなかった 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』高木徹也著(三笠書房刊)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。

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