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コム デ ギャルソンの全24ルックをレビュー。より強い表現を追求し続ける川久保玲の覚悟とは【2026年春夏 パリコレクション】

  • 2025.10.11

10月4日夕方(現地時間)に行われたコム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)のショーの会場は、廃墟のような空間だった。細長いランウェイの両サイドには、いつものように観客たちがひしめき合い、ショーの開始を待ち構えている。

Fátima Miranda による独特な声色の歌唱が流れるなか登場したファーストルックは、ベージュと赤を組み合わせた波打つドレスで、裾は色移りしてしまったかのように赤く染まっていた。

以降も巨大で抽象的なフォルムが続くが、麻袋のような自然素材や結ぶディテール、しわが目立つ。足もとのカウボーイブーツ(1988年設立のフランスのブランド、MEXICANAとのコラボレーションだという)、音楽も相まってプリミティブな印象を持った。

ショーが終わると拍手喝采が起こったが、はたして私たちはデザイナー、川久保玲のメッセージを受け取ることはできたのだろうか。真意は何だったのか。

実は、これらは「完璧なオブジェのような服を制作し、それを大きな機械に入れて洗うことでダメージを与えた」ルックなのだった。製品洗いや縮絨といった加工はコム デ ギャルソンではおなじみだが、そのレベルではない。完成品にあえてダメージを与えることは、これまで既成概念を壊し続けてきた川久保にとってもかなりハードな仕事だったようだ。

なぜそこまでしたのか。それは「自由やお互いを思いやることがなくなりそうな異様な世界の中で、何か強いことをしなくてはならない」と思ったからだという。そうすることで「新しい感覚や価値観、ポジティブな気持ちを作り出すこと」を目指した。

強く、新しいものを作り出すのはコム デ ギャルソンの信条であり、私たちはこれまでたくさんの結果を目の当たりにしてきた。世界中から尊敬の眼差しを向けられ、毎回ショーで拍手喝采を浴びても、川久保が歩を止めることはない。わかりやすいものが支持され、思考停止に陥りがちな今だからこそ、より強い表現に踏み切ったのだ。服の迫力に加え、その覚悟に圧倒されてしまうのだった。

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Photos: Gorunway.com Text: Itoi Kuriyama

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