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76歳・実家を手放し身軽に!70個の段ボールとともにシニア向けマンションへ

  • 2025.10.10

76歳・実家を手放し身軽に!70個の段ボールとともにシニア向けマンションへ

人生の後半戦、“自分サイズ"を見直して、シンプルかつコンパクトに暮らし替えをされた方を紹介する「小さい暮らし」の見本帖。今回、登場いただくのは、真藤眞榮さん。後編では、自分で選んだからこそ楽しいという今の暮らしについて伺いました。

自分で選択したから今の暮らしが楽しい

2020年の春、70個の段ボール箱とともにここへ引っ越してきた真藤さん。荷ほどきのタイミングで膝を痛めてしまい、しばらく杖が必要になるという想定外の出来事もあったが、「エアコン1台で暮らせるなんて夢みたい。何台ものエアコンとエレベーターのあった赤坂の家のように、もう電気代で頭を悩ますことはないですから」。

以前は仕事と介護で、「もう30分だけ寝たい」という多忙さだった。今は目覚ましはかけずに休み、それでも朝5時すぎには起きて、調子がよければ散歩をしにお気に入りの公園へ。帰宅後は自室で入浴と朝食をすませ、午前中はほぼ毎日、マンションのサークル活動に参加。午後はのんびり部屋で過ごしたり、友人と連れだって外食や観劇に出かけたり。

「ここでの暮らしが楽しいのは、自分の意志で『ここに住む』と決められたから。70歳という年齢も、住んでみて合わないと思ったらやり直せる年齢だったのがよかったと思うの」

もちろん、自分のような選択が誰にでも向いているとは思っていない。終活しかり、子どもとの同居や近居しかり、まわりからすすめられても「必要に迫られないと動けない」のは同世代としてよくわかる。

「ただ、気力と体力はどうしても衰えていくもの。誰かの世話になりたくないと思ったら、身の丈に合わせたサイズダウンは必要かもしれませんね」

実家を手放して身軽になった真藤さんの70代。「我慢」とは無縁の「自分ファースト」の暮らしを謳歌している。

60年使っているチェストとライティングビューローは「松本民芸家具」のもの。入居後に「ニトリ」でオープン棚を買い足し、両親の写真やお気に入りの食器などの定位置に。

「迎えたもの」は何ですか?

30代の頃から憧れていた長谷川竹次郎さんの銀器を自分へのご褒美に

若い頃に雑誌で目にして以来、長谷川竹次郎さんの銀器に憧れていた。高価なのでなかなか買えずにいたが、娘さんの知人が営むギャラリーで個展があり、匙と花喰鳥(はなくいどり)にひかれた盃を自分へのご褒美として買い求めた。

被災地で頑張っている作家さんの作品を支援の気持ちを込めて購入

落語家の立川志の輔さんが東日本大震災の被災地である宮城県気仙沼市で続けている独演会に、毎年泊まりがけで参加。その縁で知ったイラストレーター・山本重也さんの気仙沼の風景画や、能登半島地震で工房が被災した塗師・赤木明登さんの漆器を、応援の気持ちを込めて購入。

「はじめたこと」は何ですか?

マンションのサークル活動で食堂、手軽な自炊、外食を気分で使い分け毎日大忙し!70代でこんなにハマれるものがあるとは驚きです

ビリヤード、チェス、麻雀、卓球、ヨガ、太極拳と、毎日のようにマンションのサークル活動に参加している真藤さん。友人がゼロの状態で入居したが、一緒に楽しめる友人ができたのもサークルのおかげ。

「卓球をするのは卓球部だった高校生以来。動体視力が衰えちゃって、今は卓球というよりピンポンね(笑)」

「 生存確認」を兼ねた Facebook 投稿が毎日の習慣に。交流は知り合いに限定して

「こちらへ来てからは〝生存確認〞も兼ねてFacebook に毎日投稿するようになりました」。

知らない人からの友達申請は少し警戒してしまうため、今は知人とだけ交流。娘の舞衣子さんは「ママ、忙しそうだね」と見守ってくれているとか。

Profile

真藤眞榮さん
しんどうまさえ●枯藤庵隠居 1949年北海道生まれ。50年以上前に太宰府のお茶室から譲り受けた扁額(横長の看板)の「枯藤庵」(ことうあん)が真藤さんのSNSのアカウント名。ひとり娘の舞衣子さんは料理家。現在の住まいの下見を一緒にし、「ここなら安心」とお墨付きをもらった。

撮影/土屋哲朗 取材・文/志賀朝子

※この記事は「ゆうゆう」2025年11月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

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