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【永瀬正敏さん&髙橋海人さん】撮影裏語る「髙橋くんが来るのが楽しみでしたし、可愛いですよね(笑)」

  • 2025.10.10

【永瀬正敏さん&髙橋海人さん】撮影裏語る「髙橋くんが来るのが楽しみでしたし、可愛いですよね(笑)」

今も絶大な人気を誇る江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎。その娘で、父とともに生き、自らも絵師となった娘・応為の人生を描いた映画が間もなく公開となる。タイトルは『おーい、応為』。作品中で北斎を演じる永瀬正敏さんと、そんな二人を程よい距離で見守る北斎の弟子・善次郎こと渓斎英泉を演じる髙橋海人さんに、作品に込めた思い、それぞれの役柄を演じて今思うことについて伺いました。

プロフィール
永瀬正敏さん 俳優
ながせ・まさとし●1966年宮崎県生まれ。
83年『ションベン・ライダー』で映画デビュー。
以後、国内外の映画に多数出演する。
91年『息子』で8つの主演男優賞を受賞。
『あん』『パターソン』『光』とアジア人俳優として初めてカンヌ国際映画祭に3年連続で出演作が公式選出された。
近作に『箱男』『国宝』など。写真家としても活躍中。

髙橋海人さん King & Prince
たかはし・かいと●1999年神奈川県生まれ。
2018年アイドルグループKing & Princeとしてシングル「シンデレラガール」でCDデビュー。
グループ活動と並行して、俳優としても幅広く活躍。
23年、ドラマ「だが、情熱はある」で第116回ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演男優賞を受賞。
19年には少女漫画家としてもデビューを果たした。

北斎とその弟子実在の人物に迫った日々

江戸時代後期の浮世絵師で、今も世界的に高い人気を誇る葛飾北斎。70年間にわたって森羅万象を描いたこの伝説の天才絵師には、やはり絵を志す「お栄」という娘がいた。いつも北斎に「おーい、おーい」と呼ばれることから後に「葛飾応為(おうい)」という号を授かり、江戸の芸術界でその才能を発揮していくことになるのだが、その応為の人生を描いた映画がこのほど完成した。

応為を演じるのは長澤まさみさん。家事の類は苦手だが、豪胆で自由に絵に生きる姿が鮮やかだ。そして、その応為の父であり師である北斎を永瀬正敏さんが、北斎の門弟の一人で、応為と友情を交わす実在の絵師・善次郎(渓斎英泉/けいさいえいせん)を髙橋海人さんが、それぞれ鬼気迫る迫力で独自の世界観をつくり上げて演じている。

「これはすごいなと思いましたね。それこそ北斎さんが描いた富士山みたいに乗り越えて行くのが大変な長い道のりだろうなと思いつつも、役者としてもうやりがいしかないというか。楽しみでしたね」

そう永瀬さんが最初の印象を述べると、今回が時代劇初出演の髙橋さんもその喜びを語る。

「僕も絵を描くので、もちろん北斎の存在は知っていましたし、絵の世界を描く映画に出られるのはすごく嬉しいなと思いました。そこに永瀬さんと長澤さんと共演と伺ったら、これは食らいついていくしかないと。英泉のこともすぐに調べました」

物語は、応為が嫁ぎ先から北斎の住む家へ出戻って来たところから始まるのだが、足の踏み場もないぐらい散らかった狭い家で、北斎も応為も、机ではなく畳にうつ伏せになってひたすら絵を描いていく。時に激しくぶつかり合いながらも、その師弟関係の根っこは決して揺るがない。

「まあ似ているんでしょうね。絵に対する思いとか、気持ちの表現が下手くそなところも含めて。それだけに、北斎は内心、応為のことが可愛くて仕方なかったんだと思うんですよ。応為も応為で、父としての北斎には反発しながらも、一転、師匠の助言となると素直に聞き入れる。その関係性は羨ましい気もしますね」

北斎と善次郎の場面はほとんどの台詞がアドリブ

北斎と娘の関係性をそう振り返る永瀬さんだが、実在の、しかも伝説の絵師を演じるにあたっては難しいこともあったのではないだろうか。

「稀に見る天才ですからね。天才を演じるってもう無理なんですよ。たった数カ月で天才になるなんて無理なので、とにかくひたすら絵を好きになろうと、そこからでしたね。もちろんいろんな資料を拝見して、コレクターの方に貴重な作品を見せていただいて、美術館にも行き、画集もこんなに買うのは初めてかもしれないと思うぐらい集めました。でも結局のところ、お墓参りして『撮影中は憑依してください』とお願いする、それだけでしたね。今みたいに映像が残っているわけではないので、北斎の人物像を語るものも、人づてだったり、第三者の印象だったり、それを繙いた人たちの解説本になるのでバラバラなんですよ。なので、もうこれは、監督の書かれた脚本の世界の北斎を誠心誠意思いを込めて生きよう、最後はそこに至りました」

その思いのとおり、作品中の永瀬さん演じる北斎は、絵の魅力に取り憑かれた様子が、役者さんが演じていることを忘れさせてしまうような熱量で迫ってくる。そんな姿を「やっぱり存在感すげえなと、何回も奥歯ギリギリさせながらこんなふうになりたいって見ていました」という髙橋さんも、実在の絵師である英泉(善次郎)を演じるにあたっては、あれこれ思いを巡らせたという。北斎親子を一番身近で見ながらも、自身は家族を養うために絵師の道を選び、それだけに途中で画家を辞めて転身するという現実路線派と語る。

「たぶん善次郎は、北斎親子と正反対の思想の持ち主だったと思うんですよ。二人にとって絵が人生すべてを懸けて没入できるものであるのに対して、善次郎にとっては家族を養う一つの手段になっている。自分の才能もしっかりわかっていて、その上で、生きていくためにはどうすべきかを心得た現実主義者というか。明るくてちゃらんぽらんなだけじゃなくて、ある程度のことでは屈しない、見せない強さがあるところも、すごく魅力的だなというふうに感じました」

永瀬さんが続ける。

「善次郎は、作品の中で風を呼び込む人じゃないですか。応為と北斎の暮らしの中に新しい風を持って来てくれる人。だから、その意味で撮影中も毎回髙橋くんが来るのが楽しみでしたし、可愛いですよね(笑)」

それを受けて「ありがとうございます」と照れる髙橋さん。二人の佇まいは、映画の役柄同様、とても微笑ましい師弟関係に見えてくる。撮影中、永瀬さんはよくアドリブも仕掛けたという。髙橋さんが振り返る。

「師匠と善次郎の会話はほとんどアドリブだった覚えがあります。僕も絶対返したい、永瀬さんのアドリブに返せたら、それはもう俳優以前に自分の人生としていい財産になると思ったので(笑)気合いを入れて。その時間のすべてが幸せでした」

一つの道を極める北斎は憧れでしかない

3カ月ほど前から永瀬さんは絵の特訓を受けて、撮影中も時間を見つけては練習に励んだという。

「筆で描くのに慣れていないから、ただ直線を引くとか波線を引くだけで半分ぐらい過ごしたかな。それが一番難しかったですね」(永瀬さん)

「撮影期間も、撮影場所のそばに練習小屋があって、自分が撮影を終えてそこに行くと、もう黙々と描いているお二人がいる。何だか部室みたいでおかしかったです」(髙橋さん)

強烈な個性で絵を描き続けた北斎だが、同じ表現者としてその生き方をどう思うのか。永瀬さんが言う。

「職人さんとか一つのことを極めている人たちが好きなんです。ですから北斎は憧れでしかないです。僕も今さら料理人にはなれないし、髙橋くんのように踊れない(笑)。かといって、まだ道の途中なので『これが自分』というものもわからない。一つひとつ積み重ねた作品から、観る方たちに何かを感じていただけるようになれたらいいなと思いますね」

映画の見どころについて髙橋さんが最後にこんな言葉を添えてくれた。

「僕の演じた善次郎は、観てくださる皆さんと割と近い目線で二人の生活を見ていると思うんです。ですから、善次郎の視点でご覧いただくのも、物語を身近に感じていただける一つの方法なのかなと。ぜひ世界に浸って楽しんでいただきたいです」

【Information】映画『おーい、応為(おうい)』

江戸時代、破天荒な絵師・葛飾北斎(永瀬正敏)と、彼の娘であり弟子でもあった葛飾応為(長澤まさみ)。「美人画では父を凌ぐ」と言われた才をもち北斎の右腕として、そして数少ない女性の絵師として、人生を描きぬいた応為。夫と喧嘩し離縁、北斎のもとに出戻ったお栄(のちの応為)は、より高みを目指し、絵のことしか頭にない父・北斎と再び暮らし始め……。

●脚本・監督/大森立嗣
●原作/『葛飾北斎伝』(岩波文庫・飯島虚心)、『百日紅』(筑摩書房・杉浦日向子)よりエピソード「木瓜」「野分」
●出演/長澤まさみ、髙橋海人、大谷亮平、篠井英介、奥野瑛太、寺島しのぶ、永瀬正敏 他
●10月17日(金)より全国公開
●配給/東京テアトル、ヨアケ

撮影/池田博美
スタイリング/渡辺康裕(永瀬さん)、丹 ちひろ(YKP・髙橋さん)
ヘア&メイク/TAKU for CUTTERS(VOW-VOW・永瀬さん)、浅津陽介(髙橋さん)

※この記事は「ゆうゆう」2025年11月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。

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