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カロリーゼロで砂糖の数百倍の甘みも……食品にも使われる甘草は危険? 副作用のリスクと注意点

  • 2025.10.9
【漢方薬剤師が解説】「甘草(かんぞう)」は漢方薬や食品によく含まれている生薬です。他の生薬のよい面を引き出す作用があり、食品としてはカロリーゼロで砂糖の数百倍の甘みを持ちます。一方で、副作用が問題になることもあります。安全性と注意点について、分かりやすく解説します。※画像:Shutterstock.com
【漢方薬剤師が解説】「甘草(かんぞう)」は漢方薬や食品によく含まれている生薬です。他の生薬のよい面を引き出す作用があり、食品としてはカロリーゼロで砂糖の数百倍の甘みを持ちます。一方で、副作用が問題になることもあります。安全性と注意点について、分かりやすく解説します。※画像:Shutterstock.com

漢方薬は複数の生薬から構成されている医薬品です。例えば、風邪のひき始めなどに使用される「葛根湯(かっこんとう)」の場合、葛根、麻黄、桂枝、芍薬、大棗、生姜、甘草という7種類の生薬から構成されています。

多くの生薬の中でも「甘草(かんぞう)」は、特に有名で幅広く使用されている生薬です。一方で、多く服用すると「偽アルドステロン症(ぎあるどすてろんしょう)」という副作用を起こしやすくなることも知られています。この副作用のため悪役にされてしまうこともある甘草の薬効や食品としての役割、副作用のリスクや注意点について、分かりやすく解説します。

甘草の効果は? 「生薬同士を調和する」薬効を持つムードメーカー

甘草の薬効として、主に体力を向上する作用、抗炎症作用、鎮痛作用、そして他の生薬との調和を行う作用が挙げられます。多くの漢方薬に含まれるのは、「調和作用」があるためです。

冒頭で述べた通り、漢方薬は複数の生薬から構成されます。一つひとつの生薬がプレーヤーで、漢方薬はそれらが合わさったチームの力として効果を発揮するイメージです。

甘草は、それぞれ個性のある各生薬のよい面が発揮できるように全体を調和させる、チームのムードメーカーのような役割を持ちます。具体的には、各生薬の毒性や刺激を軽減したり、甘草の甘みによって服用しやすくなります。この作用のおかげで、甘草はもっとも多く使用される生薬となっているのです。

カロリーゼロで砂糖の数百倍の甘み! 多くの食品にも使われる甘草

甘草はその名前が示す通り、少量で非常に強い甘みを発揮します。これは甘草に含まれる「グリチルリチン酸」の作用です。

砂糖の数百倍の甘みがある一方、カロリーもゼロなので、しょうゆ、みそ、漬物、ソース、菓子などの調味料や加工食品に、広く利用されています。

甘草の副作用「偽アルドステロン症」とは? 症状・原因

甘草はメリットも多い一方、過剰に服用すると「偽アルドステロン症(ぎあるどすてろんしょう)」という副作用を起こしやすくなることが知られています。

偽アルドステロン症は、体内でアルドステロンというホルモンがまるで過剰に働いているかのような状態になることで、血中ナトリウムの増加・カリウム低下が引き起こされます。その結果として、筋肉のけいれん、全身の倦怠感、むくみ、動悸、血圧の上昇などの副作用が生じてしまいます。

甘草は危険なのか? 副作用リスクがある量とメリット・デメリットのバランス

偽アルドステロン症は怖いから、「漢方薬や食品に甘草を使うべきではない」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、生薬同士を調和する作用や調味料としての有用性の高さを考えると、それは現実的ではありません。正しい知識を持って、副作用を防ぐことが大切です。

まず漢方薬については、甘草の服用量が1日で2.5g以上になると偽アルドステロン症の発症頻度が高まることが知られています。甘草を多く含む漢方薬は、筋肉のつりに有効な「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」が1日分に約5g。アレルギー性鼻炎に有効な「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」が1日分に約3gの甘草を含みます。

その他の多くの漢方薬で使用されている甘草は、1日量で2g以下です。したがって、「甘草が含まれているから、副作用の危険性が高い」と判断するのは、やや過剰反応と言えます。

食品についても同様で、日本人が食品から摂取するグリチルリチン酸の摂取量は、1日で0.2~0.5mgという研究結果があります。副作用のリスクが懸念される量は1日に100mgですので、200倍以上の差があるわけです。一般的な食生活を通じて偽アルドステロン症が問題になることはほぼ考えられません。

注意すべきは「漢方薬の併用」……薬剤師などの専門家に相談を

偽アルドステロン症が問題となるのは、主に複数の漢方薬を併用する場合です。すでに挙げたように、甘草は多くの漢方薬に含まれています。意図せぬ甘草の多量服用につながらないよう、漢方薬の併用には注意が必要です。もし漢方薬を併用する際は、組み合わせに問題がないか薬剤師などの専門家に相談してから服用するようにしましょう。

甘草の問題以外にも、漢方薬の法則として複数の漢方薬を併用すると全体的に効果がマイルドになってしまう傾向があります。生薬の組み合わせによっては、効果を打ち消しあってしまうケース(身体を温める生薬と冷やす生薬の場合など)もありますので、漢方薬を複数服用したい場合は薬局で確認するのがよいでしょう。

副作用防止は、日常生活でのセルフチェックも有効

甘草はもっとも使用されることの多い生薬であるためか、副作用(偽アルドステロン症)が注目されがちです。しかしながら、甘草は極端に副作用が起こりやすい生薬というわけではなく、ましてや毒薬のようなものでは決してありません。

一方で、体質的に少量でも偽アルドステロン症を発症してしまうケースもあります。日ごろからご自身で体調チェックを行うことが重要です。具体的には、筋肉のけいれんの有無、血圧測定、定期健診などで体調をチェックすることが、副作用防止につながります。甘草の特性を理解した上で正しく使えば、心強い味方になります。

吉田 健吾プロフィール

大正8年創業の漢方専門薬局を経営する管理薬剤師。城西大学薬学部卒業後に薬剤師免許を取得し、早稲田大学人間科学部医療人類学教室で医療と文化の関係性を学ぶ。一般社団法人・女性とこどもの漢方学術院理事長。漢方薬はもちろん、医療用医薬品、一般用医薬品(OTC薬)の解説から、医療制度や賢い医療機関へのかかり方まで、多くの人の健康に役立つ幅広い情報発信を行っている。

文:吉田 健吾(薬剤師)

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