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【明日海りおの『エリザベート』】宝塚ではトート役。今回挑戦するのは新しいシシィ像【前編】

  • 2025.10.8

明日海りおさんは、今年は『昭和元禄落語心中』で和物ミュージカルへの出演を皮切りに、『コレット』で新しい境地を開拓、そして、待ちに待った『エリザベート』で、タイトルロールとなる新生「シシィ」(編集部注:エリザベートの愛称)を演じられます。そしてダブルキャストとして出演されるのが、明日海さんの同期であり盟友でもある望海風斗さん!

VOCEではこのダブルキャストのお二人にお話を伺い、それぞれの『エリザベート』という作品、そしてシシィへの想いをインタビュー。前編では、エリザベートにゆかりのある明日海さんがどんな想いを抱えながらお稽古に臨んでいるかなどについて、お話しいただきました。

オーディションを経て、挑戦したい気持ちを再確認しました

宝塚 花組 明日海りお

——明日海さんがいよいよシシィに挑戦です。ファンの方々も待ち望んでいたと思いますが、この役が決まったときのお気持ちをお聞かせください。

『エリザベート』は自分にとってとてもゆかりのある作品です。ファンでいた時代にものすごく好きで観ていましたし、自分自身も3回出演する中で、いろんな役に思い入れがあり、エリザベートを演じる方々も近くで観てきました。

——そうですよね! 明日海さんはこの作品との関わりがすごく深いですよね。

オリジナルミュージカルなどに、私も出させていただくことがありますが、女性の人生がこれだけしっかり描かれているお役はそう多くないですし、ミュージカル界において本当に根強い人気がある作品ですので、自分の中ではっきりと「やりたいです!」と言えないし、やりたいのかも分からない、やることになってしまったらどうしたらいいんだろうって、どうとも説明のつかない気持ちになりました(笑)

——確かに、あまりに有名な作品ですから、明日海さんのお気持ちは理解できる気がします。

とてもポジティブに捉えますとオーディションというのは、「あ、この人には無理だな、任せられないな」と思われれば、落選するわけだから大丈夫!みたいな感じの気持ちで臨みました(笑) 死ぬほど稽古をして臨みましたが、緊張で空回りしたり、歌いながら「これは絶対にダメだろうな」と青ざめたり……。

——明日海さんもそんなふうに思われるのですね……。

もう『私だけに』は人前で歌えないかもしれないなと思いました。 このオーディションを経て、挑戦したいという気持ちがこれだけ自分の中に強くあったのだと改めて気が付きました。

——明日海さんにとって、『エリザベート』という作品や「シシィ」というお役はどんな存在ですか?

私が観ていた宝塚バージョンでは、ヒロイン中のヒロイン。誰もが応援したくなり、シシィの気持ちで一生を見守るという存在です。そして、「トート」という、人間ではない“死”というものが主演として存在します。その二人が惹かれ合っているなんて、本当に他にない唯一無二の設定で……。

——おっしゃる通りです。宝塚バージョンのファンの方もたくさんいらっしゃいますね。

今、まさに稽古をしていて思うのですが、本当にすべての曲が素晴らしいんです。曲が流れているだけで、心を揺さぶられるナンバーの連続。本当に特別な作品だと思います。キャラクターも個性あふれる魅力的な人物ばかりで、フランツ、ルキーニ、ルドルフ、ゾフィーといろんな役があります。こんなに豊かなミュージカルは他にそうないんじゃないかと思っています。

舞台の上でも“自由に鳥のように“、リアルに生きていきたい

宝塚 花組 明日海りお

——これまでも数多くの宝塚出身の先輩がシシィというお役を演じられていらっしゃいますが、“明日海りお”が演じるシシィとして表現しようと思っているものについて、すでに何かプランはありますか?

自分の中だけの話なのですが、“死”というのはすべての生物を相手にしているわけですよね。地球が生まれた瞬間から、いつの時代にも“死”というものが存在している。人間だけでなく動物など命あるものがすべてに相対している「トート」が、初めて瞳を見つめただけで「眼差しが突き刺さり、凍った心溶かす」人の魂はどんなものなのだろう——。それを私は突き詰めたいなと思っています。

——トートがシシィに惹かれる瞬間の歌詞ですよね。本当に素敵なシーンです。

冒頭の『パパみたいに』などを立ち稽古でやっているのですが、実際にやってみてビックリしているんです。指の先にまで自由が満ち溢れていて。髪の毛も上を向いているんじゃないかと思うくらい、すごく自由な印象です。

——トートにもフランツにも出会っていない時期のシシィですね。

はい。そこから場面を重ねていくごとに、シシィはさまざまなものに縛られて、本来は自分のエネルギーを解放させて生きていくべき人なのに、まったく正反対の人生を歩むことになってしまいます。だから、もしかしたら、彼女を演じることはすごく苦しいかもしれないと思ったんです。しかし、苦しくなるのかなと思いきや、歌稽古をすると逆に役者として持った感情をどんどん放出していけばいいわけで(笑)

——なるほど。シシィの心情としては苦しいですが、明日海さん自身は感情を放出できている。

今のところはシシィと対照的にすっごく自由にやっています(笑) 気持ちが漲れば漲るほど、それをどんどん放出すればいいから。皆さんが「痩せちゃうんじゃないか」とか「しんどいんじゃないか」と心配されるのですが、役者としては楽しくて気持ちがいいです。

——それは実際に体感された方から伺うしかないので、すごく驚きです!

もっと自分の表現したいことをちゃんと歌に乗せられるようにもっともっとお稽古したいと思うのですが、それは私のプランであって(笑) トートが古川(雄大)さん、(井上)芳雄さん、(山崎)育三郎さんと3人いらっしゃるので、そのお三方も毎日気持ちは違うはずですし、相手が誰かによっても全然違うはず。ルドルフが誰かによっても違うので、お客様が受ける印象もきっとそれぞれ違うのだと思います。

——毎日違うエネルギーが溢れそうですね。毎日観たくなります(笑)

皆さんとの化学反応をうまく吸収して、舞台の上でも自由に鳥のように、リアルに生きていけたら、本当に羽ばたいているみたいに立てたら、一番いいなと思います。ご覧になる方々もそれぞれに思い入れのある作品だと思いますし、お稽古を重ねると歴史や“型”をビシバシ感じるんです。スタッフや指導の方々が「これは何年の○○さんのときにこの型に変更したんだよ」と教えてくださるので、それらがびっしりある中で、どこで自分のオリジナルを発揮できるのかを模索するような感じです。

初めて尽くしの舞台。乗り越えた先に、自信が生まれれば

宝塚 花組 明日海りお

——今回のトート役は古川雄大さんを始め、井上芳雄さんや山崎育三郎さんとトリプルでご出演です。本当に誰もが観たい!と思う大きな公演ですね。

こんな4ヵ月にもわたる公演で、それぞれにキャストがダブルだったりトリプルだったり。ミュージカル界の大スターもプリンスもギュッと集まっていて……。元祖スターも初代プリンスも帝王も新プリンスもいる(笑)

——そうですね。座組として本当に大きいですし、ミュージカルファンだけでなくいろんな方々の話題に出ていて、評判もすごいです。

私もあまり経験したことのない大きさなんです。少数のカンパニーで自分が座長のときに考える、雰囲気をこうしようとか、そういうのとはまたまったく異なっていて、伝統のある作品に新キャストとして飛び込んでいくけれども、ちゃんと自分がつくるシシィという人の一生の流れを構築して、色付けしていかないといけないなと思っています。

——キャストのひとりとして背負うものもすごく大きいんだろうと想像できます。

トート役の方々が素敵なナンバーをガンガン歌い上げてくださって、それはとても素敵だと思うのですが、お客様が「エリザベートを観た」という充実感は、セットが素敵で世界観が素晴らしく、音楽が感情に訴えたとしても、やはりシシィが本当にそこに生きていないとダメだと思うんです。そのプレッシャーは今までに感じたものとは、また全然違う気がしています。

——私たちは単純にとても楽しみですが、プレッシャーはすごいでしょうね。

初めて尽くしのことなので……。でも、これを乗り越えられたら、少しは自信になるんでしょうか。もしかしたら、また見え方、というか、景色が変わってくるような気がします。絶対にあってはならないですが、もしも悔しさが残ったら、それと何年も闘うことになるのでしょうし……。結果は分からないですが、これだけ公演数があることはすごく幸せなことだと思いますので、とにかく体調に気を付けて、持てるすべてのものを捧げて、演じられたらと思います。

いつも通りのふんわりと優しい口調ながら、シシィ役にかける意気込みがビンビンと伝わってきて、ますます公演が楽しみに! 続編ではお待ちかねの宝塚歌劇団同期であり、今回のシシィ役ダブルキャストでもある望海風斗さんのお話や、“最新の明日海りお事情”について伺います。

明日海りお(Rio Asumi)
1985年6月26日生まれ、静岡県出身。2003年、宝塚歌劇団に89期生として入団。2014年に花組トップスターに。『エリザベート-愛と死の輪舞-』『ベルサイユのばら-フェルゼンとマリー・アントワネット編』『新源氏物語』『ME AND MY GIRL』『ポーの一族』など、数々の話題作で主演を務める。5年半のトップ在任期間を経て、2019年11月に惜しまれながら退団。ミュージカル『王様と私』『9to5』(2024年)、『昭和元禄落語心中』『コレット』(2025年)などの舞台、NHK連続テレビ小説『おちょやん』(2021年)、『グレイトギフト』(2024年)などドラマでも活躍。2026年2~3月、『エリザベート TAKARAZUKA30th スペシャル・ガラ・コンサート』(東京国際フォーラム・梅田芸術劇場)に出演予定。

\Information/
ミュージカル『エリザベート』

望海風斗/明日海りお (ダブルキャスト)
古川雄大/井上芳雄/山崎育三郎 (トリプルキャスト)
田代万里生/佐藤隆紀 (ダブルキャスト)
伊藤あさひ/中桐聖弥 (ダブルキャスト)
未来優希
涼風真世/香寿たつき (ダブルキャスト)
尾上松也/黒羽麻璃央 (ダブルキャスト) 他

東京公演:2025年10月10日(金)〜11月29日(土) 東急シアターオーブ
北海道公演:2025年12月9日(火)~18日(木) 札幌文化芸術劇場 hitaru
大阪公演:2025年12月29日(月)~2026年1月10日(土) 梅田芸術劇場メインホール
福岡公演:2026年1月19日(月)~31日(土) 博多座

ワンピース¥61600(ランバン オン ブルー・0120-33-8868) イヤリング¥19800(1DKジュエリーワークス/ドレスアンレーヴ・03-5468-2118) 靴/スタイリスト私物

撮影/楠本隆貴 ヘアメイク/山下景子 スタイリング/大沼こずえ(eleven.) 取材・文/前田美保

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