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6年前の朝ドラで巻き起こった“熱狂”「すべてを奪われた」「演技力に衝撃」ハッシュタグ爆弾した“主人公の夫”

  • 2025.10.28

2019年に放送されたNHK連続テレビ小説『スカーレット』は、戸田恵梨香が主演を務め、滋賀県信楽を舞台に、女性陶芸家の人生が描かれた。朝ドラには、さまざまなタイプのヒロインが登場するが、長年朝ドラを観てきた中で、『スカーレット』の喜美子ほど情熱的なヒロインは、ほかには思い浮かばないかもしれない。言葉は悪いが、ちょっと引くくらい常軌を逸することもあった喜美子の“情熱”は、何年経っても頭に残っている。今回は、戸田が非常に印象深いヒロインを演じた朝ドラ『スカーレット』を振り返ってみたい。

朝ドラ名物“ダメな父親”がセクシーで人気に!?

戦後間もない昭和22年(1947年)、9歳の川原喜美子(川島夕空)は家族と、大阪から滋賀・信楽に引っ越してくる。父・常治(北村一輝)が事業に失敗し、一家は困窮。信楽には、常治の戦友・大野忠信(マギー)が住んでおり、常治は大野家を頼って転居することにしたのだった。

中学3年生になった喜美子(戸田恵梨香)は、教師から進学を勧められるほど成績優秀で、絵も得意だったが、家計を助けるために、地元の“丸熊陶業”に就職することに。ところが、その時代ならではの男性社会のせいで内定を取り消され、大阪の下宿屋“荒木荘”で女中として働くようになる喜美子。

『スカーレット』を観ていた当時、父・常治が不甲斐ないために、3姉妹の長女である喜美子が貧乏くじを引いているようで、非常にイライラしたのを覚えている。でも、北村が常治をチャーミングに演じたことで、ダメなところもある父親だが、どうにも憎めないキャラクターとして、逆に人気を得た。SNSでも“常治の入浴シーン”などが話題を呼び、北村のセクシーさが注目を集めた。

15歳から50歳までのヒロインを熱演した戸田恵梨香

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戸田恵梨香 (C)SANKEI

信楽で喜美子は、大野家の一人息子・ 信作(林遣都)と、丸熊陶業の裕福な娘・照子(大島優子)という同い年の友達ができ、仲良くなる。この幼なじみ3人の友情がずっと続いていくのも、本作の見どころの1つだ。後に、林と大島が実生活で結婚したのは、朝ドラウォッチャーとして感慨深い。

大阪の荒木荘で働き始めた喜美子は、そこでいろいろな人と出会い、さまざまなことを学ぶ。副業の内職などもしてお金を貯め、美術学校への入学を目指す喜美子。だが、実家の窮状を知り、信楽に戻ることになる。美術を学びたいと願う前途有望な喜美子が、家庭の事情で何度も壁に阻まれることに胸が痛んだ。

演じる戸田は、当時31歳だったが、15歳から50歳までの喜美子を好演。喜美子が10代の頃の荒木荘編では、女中の仕事や内職について教えられると、どんどん覚えて器用にこなし、前向きに働いていた彼女がとても眩しかった。戸田は、苦労の多いヒロインを生き生きと体現しており、観ていて清々しい気持ちになった。

その後、改めて丸熊陶業に就職し、社員食堂で働くことになった喜美子は、絵付係の仕事現場を見て、絵付師になる夢を抱く。火鉢の絵付師・深野心仙(イッセー尾形)に弟子入りした喜美子は、陶芸家への道へと足を踏み入れていく。

冒頭に、常軌を逸するくらいの情熱と書いたが、喜美子の陶芸への執念は凄まじく、穴窯から何日も離れず没頭したこともあった。その時の喜美子の熱い眼差しが非常に印象的で、ある意味、狂気的にも感じた。朝ドラ史上、最も情熱的なヒロインを戸田が熱演したのではないかと思う。SNSにも「熱量と凄み、半端ない」「自然な演技に、周りの演者さんも引っ張られて輝いている」「いい意味でNHKっぽくない、新しい」「唯一無二」といったコメントが上がっていた。

沼にハマる視聴者が続出した八郎役の松下洸平

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松下洸平 (C)SANKEI

喜美子は、丸熊陶業の同僚・十代田八郎(松下洸平)と出会って恋に落ち、陶芸家を目指す彼と、紆余曲折を経て結婚。八郎は、川原家の婿養子となった。その後、2人は独立して“かわはら工房”を立ち上げ、息子を授かる。

かわはら工房は、八郎の陶芸作品の製造販売が中心で、喜美子も自分で創作することはあるものの、あくまで八郎を支える立場だった。ところが、八郎は壁にぶつかり、満足のいく新作を作れなくなる。一方、うまくいかない八郎の隣で、めきめきと陶芸家の才能を発揮していく喜美子。やがて、2人の間に溝が生まれ、別居生活となる。

真面目で優しくて、実直な性格の八郎は、視聴者から大人気となり、“#八郎沼”というハッシュタグができるほどの熱狂が巻き起こった。SNSには「朝の時間すべてを奪われました」「唯一無二の演技力に衝撃」「日々幸せ」などの絶賛コメントが見られ、喜美子と八郎の夫婦仲の行方に気をもむ視聴者が続出した。

6年経っても色あせない朝ドラの傑作

『ホタルノヒカリ』シリーズや『#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜』などでも知られる水橋文美江が脚本を担当し、信楽焼の女性陶芸家・神山清子をモデルにしたヒロインを戸田が演じた朝ドラ『スカーレット』。神山は日本国内の骨髄バンクの立ち上げにも尽力した人物で、それについてはドラマの後半で描かれるエピソードとつながっているが、終盤のネタバレになるので、ここでは割愛する。ぜひ、機会があったら『スカーレット』を全話観てほしい。

常治役の北村をはじめ、喜美子の母・マツ役の富田靖子、妹たちを演じた桜庭ななみと福田麻由子、次女の恋人に扮した“Aぇ! Group”の正門良規など、多彩なキャストが主演の戸田の脇を固めた『スカーレット』。6年経っても色あせない本作は、朝ドラの傑作の1本ではないだろうか。


ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X(旧Twitter):@KumikoShimizuWP