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13年ぶり民放“連続ドラマ”初回放送で“天真爛漫な魅力”が爆発…!謎な妻を演じる人気女優『ちょっとだけエスパー』

  • 2025.10.28

世界を救う。そういう妄想に耽ったことは、男の子なら特にあるだろう。しかし、現実に世界はおろか、自分の人生すらままならない。日々の仕事に追われるだけで精一杯。いや、仕事があるだけマシだ。仕事も家も失ってしまうことだってある。自分の人生すら救えないのに、世界を救うなんて大それたことは考えられない。

野木亜紀子脚本、大泉洋主演のテレビ朝日系・火曜よる9時放送のドラマ『ちょっとだけエスパー』は、そんな厳しい現実と甘美なヒーロー願望を織り交ぜた、一風変わったSFドラマだ。主人公は、就職氷河期世代の家無し、仕事なしの男。そんな男が“ちょっとだけエスパー”になって世界を救うという。

男に傘を持たせたり、目覚ましを早めて世界を救う?

サラリーマンの文太(大泉洋)は、他の社員もやっている(と彼は主張している)経費でのネクタイ購入を「横領」と断じられ、見せしめとしてクビを宣告された。さらに妻にも離婚を突きつけられ、絶望の淵に立たされていた。損害賠償金と離婚の慰謝料で無一文となった文太は、漫画喫茶で寝泊まりしていたところ、謎の会社・NONAMARE(ノナマーレ)から連絡が入り、面接を受けることになる。

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『ちょっとだけエスパー』第1話より(C)テレビ朝日

最終面接で社長・兆(岡田将生)に赤と青の色が入ったカプセルを「飲んでください」と言われ、言われるがままにした文太は合格。さらに、彼はカプセルによって“ちょっとだけエスパー”になったらしく、「世界を救ってもらいます」とわけのわからないことを言われる。

そして、会社から社宅として与えられたのは、たこ焼き屋の2階。そこには謎の女性・四季(宮﨑あおい)がいた。兆が言うには、エスパーだと世間にバレないために、文太は四季とかりそめの夫婦として生活しなくてはならないという。

四季の妻としての演技は完璧で、文太は感心しきりだった。しかし、あまりにも完璧すぎて、この女性は本当に夫婦だと思い込んでいるのかもしれないと、文太は訝しむようになっていく。

翌日、社員の半蔵(宇野祥平)から渡された会社支給のスマホでアプリにログインすると、“見知らぬ人に夜まで傘を持たせる”“ある人の目覚まし時計を5分進める”といった、妙に地味なミッションばかりが課せられる。その過程で、文太は自分の能力が“人に触れている間はその人の心が読めること”だと知る。四季の完璧な演技ぶりといい、世界を救うとは思えない地味な仕事内容といい、文太にはわけのわからないことばかりだ。

初日の夜、文太の社宅の下(元たこ焼き屋)に、同じく“ちょっとだけエスパー”のノナマーレ社員・半蔵、円寂(高畑淳子)、桜介(ディーン・フジオカ)が集まって飲み会をする。円寂は「エスパーのことは四季ちゃんには内緒。」「社員じゃないし世界を救うミッションのことも知らないの。」と文太に釘を刺す。その一方、塀の外では大学生・市松(北村匠海)が文太たちの話を盗み聞きしていた。そして、この仕事を続ける条件として「人を愛してはならない」というものがあることを文太は知る。

地味な能力とミッション、そして「愛してはいけない」謎

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『ちょっとだけエスパー』第1話より(C)テレビ朝日

本作に登場するエスパーたちの能力は、お世辞にも強力とは言えない。文太の“触れた人の心が読める”能力はまだしも、桜介の“花を咲かせる”、円寂の“レンジで軽くチンする”、半蔵の“動物に片言でお願いできる”など、何に使うのか不明な能力ばかり。

ミッションも“傘を持たせる”“目覚ましを5分進める”など、拍子抜けするほど地味なものばかりだ。一見意味不明なミッションが、仲間たちのささやかなサポートによって対象者を少しだけ幸せにする様子は描かれるが、これがどうやって“世界を救う”という壮大な目標に結びつくのかは謎である。

そして最大の謎が、“人を愛してはいけない”というルールだ。会社名『NONAMARE(ノンアマーレ)』がイタリア語の“愛さない”を意味することと、どう関係するのか。文太が本心から「愛してる」と語る四季に心惹かれ始めたところで提示されるこのルールが、今後のSFラブロマンス展開の鍵となることは間違いない。

困惑する大泉洋と魅力的な共演者

人生のどん底でうだつの上がらない中年男性の悲哀と、次々と奇妙な状況に放り込まれる“巻き込まれ”体質。主人公・文太を演じる大泉洋は、まさにはまり役だ。訳の分からない事態に戸惑い、翻弄される姿は、北海道テレビ制作『水曜どうでしょう』(1996-2002)以来、彼の真骨頂と言える。

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『ちょっとだけエスパー』第1話より(C)テレビ朝日

その文太を戸惑わせるのが、宮﨑あおい演じる謎の妻・四季。13年ぶりの民放連ドラ出演となる彼女は、文太を本当の夫だと思い込み、完璧な“妻”として振る舞う。その天真爛漫な魅力は本作で爆発しており、物語のミステリアスな側面も担う重要な存在だ。

歴代最年少で主演を務めた大河ドラマ『篤姫』(2008年)や連続テレビ小説などのドラマをはじめ、「日本アカデミー賞」最優秀主演女優賞に輝いた映画『怒り』(2016年)、『舟を編む』(2013年)、『ツレがうつになりまして。』(2011年)など、多数の作品で人々を魅了し続ける宮﨑ですが、民放の連続ドラマに出演するのは、なんと13年ぶり!
出典:「野木脚本で大泉洋は期待感が半端ない」「鉄壁の布陣で勝ち確」と話題沸騰‼︎さらにビッグニュース‼︎13年ぶりの民法連ドラ出演となる宮﨑あおいが出演!|テレビ朝日『ちょっとだけエスパー』公式サイト

さらに、ディーン・フジオカ演じるアロハシャツ姿のエスパー仲間・桜介も魅力的。“花を咲かせる”能力を持つ彼の軽いノリは、いつものクールなカッコよさとは一味違う。ディーンにとっては新境地となりそうな役柄だ。

就職氷河期世代の苦境と野木脚本の社会性

主人公の文太は就職氷河期世代だ。会社への忠誠を信じて働いた結果、わずかな経費流用で見せしめにクビになり、すべてを失う。その背景には、現代社会の不条理や、一度レールを外れると這い上がることが困難な現実がある。

また、文太が能力で読み取る街の人々の心の声は、「死にたい」といった絶望に満ちている。野木亜紀子脚本は、荒唐無稽なSF設定の中に、こうした現代人の抱える孤独や社会問題を巧みに織り込んでいる。

映画『アイアムアヒーロー』(2016)でもタッグを組んだ大泉洋と野木亜紀子。さえない中年男がポンコツながらも世界(あるいは他者)を救うために奮闘するという構図が共通している。笑いの中にも鋭い社会批評を込める野木脚本が、本作でどのような社会を描くのか。大いに注目したい。


テレビ朝日『ちょっとだけエスパー』毎週火曜よる9時〜
TVerで見逃し配信中
https://tver.jp/episodes/ephqstadyn

ライター:杉本穂高
映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X(旧Twitter):@Hotakasugi