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息子からの「赤ちゃんってどうやってできるの?」には、どう答えるのが正解?【初めての性教育】

  • 2025.9.21

ママが知っておくべき、男のコの【おちんちん】の話 vol.3

第3回となる今回は、ちょっと気になるけれど誰に聞けばいいのかわからない、“男のコあるある”にまつわるリアルなお悩みに対して、医師がやさしく誠実に向き合ってくれました。
 
ある日、息子に「赤ちゃんってどうやってできるの?」と聞かれた。ふいを突かれた母は、一瞬言葉を失う。だけどその戸惑いの奥には、「いつかは話さなくちゃ」という気持ちがずっとくすぶっていた。 “性”という言葉を前にすると、つい身構えてしまうけれど、それは命や身体のこと、そして大切な人との関係を学ぶ入り口でもある。わかっているようで、誰にもちゃんと聞けなかった、“男の子と性の話”。そんな“話したいけど話せない”親のために、“あそこ”のことをきちんと語れる、数少ない大人のひとり──泌尿器科医であり『キレイにむけたね』(販売元・秀和製薬)も展開する平山和秀先生に、真面目に、でもちょっと楽しく話を聞いてみました。

“性”という言葉の温度

性について語るというのは、たいていちょっとだけ勇気のいることだ。
その語感には妙な重さがあって、冗談にも真面目にもなりすぎてしまう。けれど、「性」とは、じつのところ、誰もが毎日静かに抱えている“からだとこころ”のことでもある。そして子どもは、ある日ふと尋ねてくる。「赤ちゃんってどうやってできるの?」と。その瞬間、親の心のどこかに小さなひるみが走る。
 
でもその問いこそが、親子の対話のドアをノックしているのだ。「性教育は、むしろ“早いほうがいい”と考えています」と平山先生は語る。「思春期を迎えてから性の話を始めるのでは、どうしても“避妊”や“性感染症”といった危機管理の話になりがちです。でも本来、性教育の第一歩は、自分の身体を知り、大切にすること。幼児期から、生活の一部として自然に始めていいのです」
 
たとえばお風呂の中で、「ここは大事な場所だから、やさしく洗おうね」と伝える。それはもう立派な性教育なのだ。

赤ちゃんってどうやってできるの?にどう答える?

「どこまで話せばいいのかわからない」という悩みは、多くのママに共通するものだろう。とくに“赤ちゃんの作り方”の話題は、その最たるものだ。
 
「まずは、子どもの理解力に合わせて段階的に説明することが大切です。たとえば小学校低学年であれば、“パパの精子とママの卵子がくっついて、お腹の中で赤ちゃんになる”という伝え方で十分です。それ以上に詳しく知りたがるようであれば、正確な情報を一緒に調べるのも良いですね」
 
子どもが「どうして?」と聞いてきたとき、「まだ早いから」「その話はしないで」と遮ることは、逆に“性は秘密で恥ずかしいもの”というメッセージを与えてしまうかもしれない。

勃起、性欲、自慰のこと。話していいの?

男の子が“性”について自覚し始めるとき、それはたいてい静かに訪れる。言葉にするには早すぎて、でも身体は確かに何かを感じている。そんな時間がある。「勃起や自慰などの話題も、隠すのではなく“自然なこと”として受け止める姿勢が大切です。自慰行為は成長の一環であり、無理にやめさせる必要はありません。ただし、衛生面や場所については丁寧に伝えることが重要です。『トイレや自分の部屋など、一人になれる場所でしようね』『清潔にすることが大事だよ』といった具体的な伝え方が、子どもにとっての安心につながります」
 
子どもは、自分の身体の変化に戸惑っている。そのときに“否定”ではなく“理解”をもって接することができたなら、その後の関係性はきっと変わる。実際、日本財団が行った「18歳意識調査」(2021年:第39回-性行為―)では、学校での性教育について「抽象度が高いと思う」が65.6%、「避妊方法を具体的に知りたかった」58.1%と「性の知識」の子ども(18歳はもはや成人だが)の需要と大人からの供給が微妙にアンバランスだ。さらに日本財団による18歳意識調査(2018年:第6回―セックス―)ではマスターベーションの経験について89.8%の男性が経験アリと答えている。つまり、多くの子どもたちは、最も身近なはずの親と大人と、“性”について話す機会を持てないまま大人になっている。だからこそ、小さな問いかけや会話を恐れず、まずは日常の中で“話せる空気”をつくっていくことが、将来の信頼や安心の土台になる。
 
“性”という言葉に、いやらしさを感じるのは、大人のフィルターかもしれない。子どもたちは最初、ただの「なぜ?」から始めているのだから。「“性”を“いやらしいもの”として伝えるのではなく、“命や人を大切にすること”として伝えることが大切です。性教育の本質は、“自分を大事にし、他人も大事にする”という人権意識の育成にあります」
 
だからこそ、たとえば“見せない・さわらない・さわらせない”という原則は、小さなころから繰り返し伝えるべきだと平山先生は語る。そしてスマホより先に、親が教えようと先生は続ける。「今の子どもたちは、スマホやSNSを通して、性に関する情報に早くから触れる可能性があります。そのとき、正しい知識がないまま受け取ってしまうと、偏った理解や不安を生む原因になります」。そう、“ネットより先に親が教える”という姿勢が、大きな安心につながるのかもしれない。フィルターアプリよりも、何より強いのは「どんな話題でも、ママに聞いていいんだ」という空気。それをつくるには、日々の何気ない会話の積み重ねしかないのだ。

「好きな子ができた」と言われたら、どう返す?

息子がぽつりと言う。「好きな子ができた」と。そのとき、あなたはどんな顔をするだろう。「恋愛の話題も、“性”と切り離して考えず、自然に受け止めてほしいです。大切なのは、気持ちと行動のバランスを学ばせること。『相手を思いやる気持ちが大事だよ』『自分の気持ちを押しつけないようにね』といった会話ができるといいですね」。ドキドキする気持ちも、戸惑う感情も、子どもにとってはすべてが“はじめて”だ。それを誰よりも先に話せる存在であれること。それが、親の特権なのかもしれない。

「性のことをどう話せばいいかわからない。自分もちゃんと教わってこなかった」。そう感じるママは、少なくない。でも、それでいいのだ。「親が完璧である必要はありません。“ママもわからないから一緒に調べよう”という姿勢が、子どもにとっては安心になります。性教育は、一方的に教えるものではなく、対話を通して学び合うプロセスなんです」
 
むしろ“知らないことを認める”という姿勢こそが、もっとも強いメッセージになる。

会話は小さくても、安心は大きい

性の話は、いつも少しだけぎこちない。だけど、そのぎこちなさを超えて、話そうとする姿勢そのものが、何よりの教育になる。「親子のあいだに“性の話をしていい空気”があること。それが、将来の性被害・加害を防ぐことにもつながります。正しい知識が、子ども自身を守る力になりますから」
 
性教育は、“はじまり”の話だ。からだのことも、命のことも、人を好きになるということも。すべてはそこから始まる。
 
今日の夜ごはんのあと、「そういえばさ…」と、ちょっとだけ話してみてもいい。それはきっと、未来へのささやかな準備になるはずだ。お風呂で息子が言った。「ねえ、ママ。赤ちゃんって、どこから出てくるの?」。その声は、湯気の中にふわっと浮かんで、タイルの壁にすこしだけ跳ね返ってから、ママの耳に届いた。ママは一瞬、湯船のふちに置いたボディソープのポンプのことを考えた(それくらい、とっさに言葉が見つからなかった)。「赤ちゃんはね、お母さんの“特別な場所”から出てくるんだよ」。なんとかそう答えると、息子は「えっ!」と叫んで、お風呂の中で思いきりのけぞった。「ほんと? おしり? おしっこ出るとこ? 鼻の穴?」
 
平山先生は、笑いながらこう話してくれた。「子どもって、真剣に聞いてくるんです。でも、だからこそ、“正しく、でも怖くない表現”が大事なんですよ。『赤ちゃんが生まれるのは、お母さんの身体の特別な通り道から』とか、『病院でお医者さんが手伝ってくれることもあるよ』と伝えてあげてください。想像できる“入り口”があるだけで、子どもはすごく安心しますからね」
 
大人は、ときどき“全部説明しなきゃ”と思いすぎる。でも子どもは、答えそのものよりも、“その話をしていい空気”をちゃんと覚えている。だからときどき、湯船の中で「おしっこって、何回たまると出るの?」なんて言われても、笑っておけばいい。

彼らは、すべてを知りたがっているわけじゃない。ただ、信じられる誰かに「聞いてもいいか」を、毎日少しずつ試しているだけだ。

 

平山和秀/国立大学法人 熊本大学医学部卒業後、聖路加国際病院にて外科系初期研修医を経て京都大学附属病院泌尿器科に入局。泌尿器科専門医・指導医、がん治療認定医、ロボット手術ダヴィンチ免許を取得し、欧州泌尿器科学会、米国泌尿器科学会、世界泌尿器科学会に3年連続採択。アメリカで最も権威のある泌尿器科雑誌『UROLOGY』に論文出版する傍ら、形成外科医として美容医療に従事。『専門分野である男性器治療・性同一性障害・AGA(薄毛治療)の分野で安全で質の高い医療を提供したい』とカズ博多クリニックを開院。日本男性器学会理事長や日本初の男児向けデリケートゾーンケアクリーム『キレイにむけたね』を展開する秀和製薬代表取締役社長を兼務。

illust:YAECHIN

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