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リュウノスケオカザキ、ロンドンの博物館「V&A」で新作のドレスを披露。ブランドの新たな挑戦を語る

  • 2025.9.16

自然や平和への祈りを込めて

幼少期から自然と人間の営みに向き合い、その精神性に感銘を受けてきたというデザイナーの岡﨑龍之祐。ルーツの背景にあるのは、広島で生まれ育ち、平和教育を受けてきたことに遡る。初期の作品では、折り鶴の再生紙を裁断した紙糸でドレスを作るなど、自身の手から生まれるクリエイションで平和への祈りを表現してきた。どの作品にも共通するのは、素材との対話によって生まれる唯一無二の造形美だ。自身の感性を活かし、国内外で多くの展覧会を開催し注目を集めてきた岡﨑だが、2025年9月13日からはロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(以下、V&A)で、コレクション「003」から新作の「004」まで、計7作品を展示する。ファッションとアートの視点で生み出される造形美を深掘りするとともに、ブランドとしての新たな試みについて話を聞いた。

── 2026年春夏コレクション「004」のテーマやデザインのポイントについてお聞かせください。

5回目のコレクションになりますが、「自然への祈り」、「平和への祈り」といった核となるコンセプトは今も変わっていません。手を介して偶発的に創りだされるフォルムがシーズンごとに自然に移行していくような感覚です。造形の進化があったり素材を変えてみたり。

2022年春夏「000」“JOMONJOMON”
2022年春夏「000」“JOMONJOMON”
2022年春夏「000」“Nature's Contours”
2022年春夏「000」“Nature's Contours”
2023年 (THE FACE DAIKANYAMA -Tokyo)
2023年 (THE FACE DAIKANYAMA -Tokyo)

タイトルは作品によってつけることもありますが、シンプルな連番にすることで過去の作品との繋がりを感じてもらえれば。「000」の“JOMONJOMON”は縄文土器がインスピレーション源で、長い年月からなる自然と生命への恩恵を表現しました。花びらのような“Nature's Contours”は、自然と人との関係性がテーマ。

「002」は身体の造形そのものを拡張したドレスで立体性を際立たせ、新しい生命力を反映しています。はじめてチャレンジした木材の彫刻は神道をモチーフにしており、日本人の精神性を抽象的なフォルムに落とし込みました。前回の「003」はこれまでを踏襲しつつも、今までの手の経験にとって、より繊細なドレスに昇華させたという感覚です。いづれもシンメトリーな造形は神道から着想を得ていて、これまで大切にしてきた“祈り”と結びつきました。

最新コレクション「004」は柔らかなベロアやシアーなストレッチ素材を多用

2026年春夏コレクション「004」
2026年春夏コレクション「004」

── 岡﨑さんの作品といえばこれまで“シンメトリー”がひとつのルールでした。「004」ではアシンメトリーなフォルムが組み込まれています。また今シーズン、過去最大の29ルックを展開していますが、新たに取り入れたテクニックやデザインはどんな点ですか?

これまでは芯材を軸にして左右対称に拡張し、関節を外側に広げていくイメージでドレスを制作してきました。着ることで身体と一緒に動いていくような感じです。ですが、今回は線から布の面積を増やして美しいドレープを表現しました。素材は、柔らかなベロアやシアーなストレッチ素材を用いています。アシンメトリーな布の動きによって新たな曲線が生まれ光の反射を捉えることで、よりエレガントな表情に。布の面がもたらす、たわみや皺を肌に覆うことで身体の動きそのものを表現しています。例えになりますが、縄文土器の複雑な造形から、より人間的な親和性に寄り添う感覚です。

2026年春夏コレクション「004」
2026年春夏コレクション「004」
2026年春夏コレクション「004」
2026年春夏コレクション「004」

── 作品からみてとれる色彩感覚は、活動を始めたときからどのような変化がありますか?

自然からのインスピレーションは既に自分のなかでインプットされているので、今も変わらないものとして備わっています。色選びにしても大事なのは、心の琴線にふれるかどうかだと思っています。

受注のためのECサイトを準備中

2026年春夏コレクション「004」
2026年春夏コレクション「004」

── 今シーズンの新たな取り組みとして、初のバッグコレクションがローンチされましたが、あえてボルドーとブラックにこだわった理由は?

ドレスもそうですが、色も素材も自分の感覚に響くものを選んでいます。バッグに関しては他の色もいろいろ試した結果、ボルドーとブラックに絞りました。素材はフェイクレザーで、曲線を用いたドレスバッグとして「004」とリンクさせた造形で全6型を用意しました。受注をスタートするため、ECサイトも準備中です。

2024年「Sleeping Beauties_ Reawakening Fashion」
2024年「Sleeping Beauties_ Reawakening Fashion」

ロンドンのV&Aで「Ryunosuke Okazaki – JOMONJOMON」展を開催中

Photo_ Peter Kelleher © - Victoria & Albert Museum, London 2025
LDF installations V&A, 11th September 2025Photo: Peter Kelleher © - Victoria & Albert Museum, London 2025

── 昨年はニューヨークのメトロポリタン美術館で開催された「Sleeping Beauties_ Reawakening Fashion」展で展示、収蔵されたほか、北京や香港などでの展示を経て、2025年9月13日からロンドンのV&Aで展示がスタートしました。同展の世界感について教えてください。

空間をみてどう展示するかは、その場で決めることが多いです。大事にしていることは鑑賞者にとって豊かな時間にできるかどうか。今回は過去作品を含め計7点を展示しています。博物館に収蔵されるスモーキーピンクのドレスは、日本の桜からインスピレーションを得ています。世界的に有名な美術館や博物館に作品が収蔵されると聞いたときはとても光栄に思いました。自分の想いや視点が国や文化を越えて、未来へと受け継がれていく可能性に大きな価値を感じています。私の作品は、日本で生まれ育った中で染みついた感覚や考え方が反映されています。遠い国で多くの人の目に触れ、そこで新たな解釈や感情を生むかもしれないということは、作り手として嬉しいことです。

Photo_ Peter Kelleher © - Victoria & Albert Museum, London 2025
LDF installations V&A, 11th September 2025Photo: Peter Kelleher © - Victoria & Albert Museum, London 2025
2026年春夏コレクション「004」
2026年春夏コレクション「004」

── 今後、プレタポルテも積極的に考えているとのことですが、展開するにあたって変えていく部分はありますか?

1点もののドレスから手にとりやすいアイテムまで、アートとファッションを行き来しながらブランドの規模を大きくしていきたいと思っています。手の経験が生きるクリエイションをより多くの人に知ってほしいから。プレタポルテをきっかけに、ブランドの核である「平和への祈り、自然との繋がり」について、これからの若い世代にも伝えていきたいです。

Ryunosuke Okazaki – JOMONJOMON

会期/2025年9月13日(土)〜10月19日(日)

場所/V&A South Kensington

入場/無料

https://www.vam.ac.uk/

Photos: Courtesy of RYUNOSUKEOKAZAKI Interview & Text: Megumi Otake Editor: Mayumi Numao

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