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還暦女性の恋「選択肢にない」人、「なければ輝けない」人も。違いはどこにある?

  • 2025.9.15
還暦を迎えた単身女性たちの中には、おひとりさまを楽しむ人もいれば、生活に彩りを求めるなら「恋しかない」という人もいる。このあとの人生をどう生きていきたいのか、二人の女性に話を聞いた。※サムネイル画像:PIXTA
還暦を迎えた単身女性たちの中には、おひとりさまを楽しむ人もいれば、生活に彩りを求めるなら「恋しかない」という人もいる。このあとの人生をどう生きていきたいのか、二人の女性に話を聞いた。※サムネイル画像:PIXTA

還暦を迎えたとき、すでに離婚や死別で単身となっている男女は少なくない。このあと一人で生きるのか、あるいはパートナーを求めるのか、結婚しなくても恋愛をしたいと熱望するのか、いろいろな考え方があるようだ。

恋は選択肢にない

「独立してすでに家庭をもっている子どもたちがいるから、のちのちの財産分与などを考えると結婚したいとは思っていないんです。恋も別に……面倒くさいだけかなと(笑)」

タカコさん(61歳)は60歳で定年退職をし、その後は嘱託として仕事を継続している。仕事の内容も量も変わらないのに収入は半分になったと嘆くが、それでも何もしないで家にいるという選択肢はなかった。

「55歳のときに離婚したんです。夫が『一人になりたい』と言い出して。私も気が合わない夫と老後を過ごすのは懸念しかなかったので、渡りに船で離婚しました。慰謝料も何もなし、夫が身1つで出ていった。さっぱりした離婚でした」

その前にすでに二人の子どもたちは独立していたため、初めての一人暮らしに最初は戸惑った。

「自分のためだけに生きるなんて初めてだから、一気に怠惰な生活になっちゃって。食事も総菜を買ってばかり。宅配も多かったですね」

ある日、娘が幼い子を連れて遊びに来た。宅配をとろうとしたタカコさんに「お母さん、いつもそうやってるの?」と言った。

「一人じゃご飯を作る気にもならないし、かえって不経済なのよと言ったら、娘は『私はそうは思わない。自分のためにちゃんと体のことを考えて料理するなんてすてきなことじゃない。お母さん、料理好きだったでしょ』と。あ、そうか。自分の好きなものを作っていいんだと目から鱗でした」

一人での生活が楽しくなってきた

それ以来、自分の好きなものを簡単に調理して食べるようになった。佃煮など保存のきくものを作り置いておけば、疲れたときでも熱々の白米と具だくさんの味噌汁でホッとすることができる。総菜を買うよりかえって節約にもなった。

「友達や同僚と食事に行くこともあるけど、一人のときもちゃんと作ってちゃんと食べる。今日は何を作ろうかと考えるのも案外、楽しくなってきました」

いくつか習い事も始め、新たな趣味と仲間も増えた。仕事はできる限り続け、今後はさらに何か学んでいきたいと考えている。

「誰にも遠慮することなく、一人での生活をやっと楽しめるようになったところです。推し活もしているから、特に恋したいとも思いませんね」

いつしか自分の生活の中から「恋」という選択肢はなくなっていたが、それが寂しいことだとは思わないそうだ。

恋がしたい人も

一方、毎日のように「恋したい」と願っていると言う女性もいる。エイコさん(62歳)は、目をキラキラさせながら「やっぱり女性はいくつになっても恋をしたいと思うものじゃないですか」と熱弁をふるった。

「5年前に夫を病気で失いました。特にラブラブというわけではないけど、互いを信頼していたとは思います。ごく普通に生活していて、病気発覚から3カ月あまりで亡くなったから、心の準備もできてなくて。一人息子は遠方で仕事をしていて家庭もありますから、頻繁には会えない。

夫を失った直後は毎日のように息子に電話をしていたんですが、あるとき『もうお母さんも精神的に自立した方がいいよ』と言われて、息子に疎まれていると分かりました」

息子といえども一人の大人だし、仕事と家庭で忙しい日々を送っている。これ以上は迷惑をかけられないと肝に銘じた。

「パート仕事はしていますが、夕方以降は寂しくて……。話す人もいない、一緒にテレビを見る人もいない。だんだん気持ちが鬱々としてきました。そんなとき助けてくれたのは3歳違いの妹でした」

誰かのために生きるのが幸せ

妹は地方に住んでいたが、子どもが東京の大学に進学したため、時々やって来るようになった。子どもの様子を見にいくという名目での息抜きだ。

「妹は上京するとうちに泊まっていくようになりました。夜中までおしゃべりしたり、一緒に外に食事に行ったり。ただ、だんだん妹が『お姉ちゃんは愚痴ばかり。つまらない』と言い出して来なくなった。メンタルクリニックに通うようになって、私が依存し過ぎたと気付きました」

そういう経緯を経て、今はなんとか寂しさを紛らわせながら一人で生活することに慣れてはきた。それでもこの生活に彩りを求めるなら、「恋しかない」と思うそうだ。

「誰かを好きになって、誰かのために生きる。それが一番の幸せだと思うんですよね。自分のためだけに生きるなんてつまらない。やっぱり恋をしなくちゃと思っています」

シニア向けのマッチングアプリも試しているが、なかなかこれと思う人には出会えていない。それでも日々、「恋をしなければ私は輝けない」と信じているという。ともすれば相手に依存しがちな性格を把握しているので、依存してはいけないと自分に言い聞かせながら、彼女は今日もアプリをのぞく。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。

文:亀山 早苗(フリーライター)

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