1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 泣いて「鮨2人前」を食べ尽くした息子の元嫁。“まさかの要求”に義母が突きつけたノー

泣いて「鮨2人前」を食べ尽くした息子の元嫁。“まさかの要求”に義母が突きつけたノー

  • 2025.9.13
38歳の息子が結婚し、やっと自由を手に入れた67歳女性。だが、「この人グズだから」とはっきり言う妻に息子は音を上げ、離婚。するとある日、女性の家におなかを空かせた元嫁がやってきて……。“まさかの要求”に女性は翻弄される。※サムネイル画像:PIXTA
38歳の息子が結婚し、やっと自由を手に入れた67歳女性。だが、「この人グズだから」とはっきり言う妻に息子は音を上げ、離婚。するとある日、女性の家におなかを空かせた元嫁がやってきて……。“まさかの要求”に女性は翻弄される。※サムネイル画像:PIXTA

年齢を重ねたら、なるべくストレス源からは解放されたい。ところが年齢を重ねるにつれ、人間関係が複雑になり、ますますストレスまみれになることもある。

息子がやっと結婚して

「うちの息子はなかなか結婚しなくて、私は一人気をもんでいました。そうこうしているうちに夫は病気で亡くなり、息子との二人暮らし。

早く結婚して出ていってほしいとずっと言っていたんです。彼がようやくその気になったのが38歳のとき。ホッとしました」

ナミエさん(67歳)はそう振り返る。当時、彼女は63歳だった。

息子の妻はまだ20代だったから、ナミエさんは年の差を案じたが、自分が心配してもどうにもならない。息子がいいならそれでいいという姿勢を貫いた。

「一人暮らしになって、何もかもから解放されました。地域のサークルに入っていたんですが、その中の友達と居酒屋に寄って遅くなっても誰にも何も言われない。

10代を過ごした実家はもうありませんが、実家近くの昔の友達の家に遊びに行ったりもしました。パート仕事は続けていたから、仕事仲間もいる。心配性の息子に邪魔されてなかなか行けなかった海外一人旅もしました」

息子が結婚したと聞いたナミエさんの友人は「あら、じゃ次はお孫ちゃんね」などと言ったが、彼女は「さあ、息子の人生だからどうなることやら」と答えてきた。

孫がいてもいなくても、ナミエさん自身はある意味で「関係ない」と思っていたからだ。

歯に衣着せぬ息子の妻

「息子に望むことは、やっかいな問題だけは持ち込まないでほしいということだった。本人には言いませんでしたけど、なんとなく嫌な予感はあったんです」

案の定、結婚してから息子は時々様子を見に来たものの、息子の妻は顔を見せようとしなかった。あるとき、一緒に外食しようと誘われて行ってみたら息子の妻がいた。

「久しぶりね。元気だった? と何げなく声をかけたら『元気だから来たんです』と言われて。そりゃそうねと言ったものの、どうしてそういうところで突っかかってくるのか不思議でした。

鍋物を食べたんですが、息子が野菜を入れようとすると『まだ早い』だの『肉や魚と、野菜とのバランス悪くない?』と私の前で息子にダメ出し。『穏やかにいきましょうよ』とゆったり言ったら、『だってこの人、すごくグズなんですもん』って。

若いから何でもはっきり言っちゃうのかしらねと皮肉交じりに言ってやったら、『頭脳明晰(めいせき)なもので』と返してきた。何となく丁々発止になって、息子が震えそうになりながら見ているのが分かりました」

最後は「お義母さん、全部、くず野菜をさらっちゃってくださいよ。雑炊するので」とぬけぬけ言った。

ナミエさんは同居しているわけでもないし、この子はこういう子なんだと思えばそれなりに楽しめたと笑った。

離婚後、突然現れた元妻

ところがそういう妻だから、息子にとっては非常に生活しづらい環境だったようだ。妻も働いているため、家事はきっちり分担することになったが、息子は家事が苦手だ。

母であるナミエさんが、男の子だからと家事を手伝わせなかったことを、妻は非難していたという。

「それでも子どもができれば何か変わるかもと息子は思っていたようです。でも2年たっても子どもはできない。不妊治療をもちかけたらその気になれないと断られたそう。

それどころか『あなたはもっと高給取りだと思ってた』とまで言われ、さすがの息子ももう一緒にいられないと思うようになったそうです」

結局、結婚から2年半で離婚。息子が出戻ってきたら自分の自由はなくなると戦々恐々としていたが、息子は会社近くにアパートを借りて住むと報告してきた。

「それからさらに1年以上たった今年の夏、パートから帰ってきたらうちの前に誰かが突っ立っているんですよ。ふと見たら、息子の元妻でした。『お義母さん……』と泣きながら抱きついてきたので、とりあえず家に入れました」

冷たい飲み物を出すと息もつかずに飲み干した。おなかが鳴っているのを聞いて、ナミエさんも情にほだされた。

お鮨が食べたいというので、近所の鮨屋から3人前とると、彼女は2人前をあっという間に食べ尽くした。

心が痛まないわけではないけれど

「どういうことなのと聞いたら、数カ月前に会社を辞めさせられたと。彼女は外資系企業に勤めていたんですが、どうも業績が悪くて切られたそうです。あんなに私は仕事も家事も完璧なのにと自慢していたのに」

ずっと泣いていた彼女は「ここに泊めてもらえませんか」と言い出した。家賃が払えないため、部屋も引き払ったのだという。

私は一人暮らしを満喫しているの。誰にも邪魔されたくないわと言ったら、「誰かいないと孤独死のとき大変ですよ」と言いつのった。

「私はまだどこも悪くないわよ、たとえ一人でここで死んでも決して孤独じゃないからと言ってやったら、『元嫁を助ける情さえないんですか。冷たい』と。

うちの息子と結婚しているとき、私、あなたに優しくもらってないからと言ってやりました」

泊めずに追い返したナミエさんだが、もちろん心が痛まないわけではない。大きめのリュック1つに身の回りのものが全部入っているのだろうか、誰か泊めてくれる人はいるのだろうか……。

息子に連絡してみると、「よくオレの実家を訪ねることができるなあ」とあきれていた。

あんな元嫁の姿は見たくなかった。自業自得とは言わないが、自分がしたことのツケは返ってくるものだという思いはある。

それでも、あれからどうしたのかとナミエさんは時々気にしているという。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。

文:亀山 早苗(フリーライター)

元記事で読む
の記事をもっとみる