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【妻夫木聡・広瀬すず】日本に生きるすべての方、必見! 9月19日公開映画『宝島』対談インタビュー

  • 2025.9.13

1952年、沖縄がアメリカだった時代。⽶軍基地から奪った物資を住⺠らに分け与える“戦果アギヤー”と呼ばれる、沖縄の若者たちがいました。幼馴染のグスク(妻夫⽊聡)、ヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪⽥正孝)の3 ⼈と、彼らの英雄的存在でリーダーのオン(永⼭瑛太)。全てを懸けて臨んだある襲撃の夜、オンは“予定外の戦果”を⼿に、突然消息を絶つことに……。原作は真藤順丈氏による⼩説「宝島」。第160回直⽊賞も受賞した傑作小説の実写映画です。監督は、映画『るろうに剣⼼』、NHK ⼤河ドラマ「⿓⾺伝」などを⼿がけてきた⼤友啓史氏。上映時間、なんと191分。ただし、鑑賞前に「長っ! トイレ、大丈夫かな」と思っても、鑑賞後は「この長さは絶対に必要だ!」と、感動と共に多くの方がお感じになるのではないでしょうか。これは……映画館で観たい!
 
本作の企画は2019年に始動したもののコロナ禍にも阻まれ、撮影が2度延期に。スタッフとキャストの「なんとしてもこの時代にこの映画を届けたい」という情熱と執念で、戦後80年となる2025年の秋の公開となりました。主演の妻夫木さんと、広瀬すずさんにお話をうかがう貴重な機会を得ました。

ドーンとこちらに飛んでくる圧倒的生命力にやられちゃった気がします

――原作と脚本を読んだときにどう感じられたかを教えて下さい。
妻夫木聡さん(以下妻夫木) 一言でいうと、圧倒的な生命力でした。それは原作を読んだときも感じましたし、脚本を読んだときも、また本編を最初に観終わったときも感じました。生命力が満ち溢れているんですよ。戦後から復興期にかけての、あの時代だからこそ出る匂いや色、温度が確実にあると本当に感じました。「生きなきゃ」ってシンプルに思わせてくれる説得力が魅力でしたね。
広瀬すずさん(以下広瀬) 私は脚本を先に読ませていただいて、それから原作小説を読んだんですが、どちらもひたむきに生きる人間像をすごく久々に見せられた気分でした。それこそ妻夫木さんがおっしゃったとおり、ドーンとこちらに飛んでくる圧倒的生命力にやられちゃった気がします。

――この作品の企画から撮影までは、コロナ禍などの影響でかなり時間が空いてしまいましたよね。原作や脚本に圧倒されたお2人がその熱量をキープするのはなかなか苦労されたのでは?
妻夫木 不安でしたね。読了したときのイメージは消えないで残っていたんですが、本当にこの企画が動くのか動かないのか、というのはわからない状況が続いていたので。プロデューサーや監督には何度も問い合わせていましたし、その都度彼らが本気でこの作品に取り組もうとしていることはわかったのですが、それでも2回、流れてしまっています。そのときは、もうムリかな、と思いました。その後撮影にこぎつけられたんですが、正直、複雑な気分で。本当に撮影できるのか、という驚きと、とはいえまた止まったらどうしよう、という不安と。でも、時間が空いていた分、監督はじめスタッフ、キャストは最初に思い描いたものだけではないアイデアやイメージが増えていったはずなんです。それが無駄にはなっていないし、あながち、時間をかけたことは得になったのでは? と今となっては思っています。
広瀬 何度か企画が止まることで、この企画自体が、人のように、こっちを振り向かせようとしているような感覚になりましたね。止まって、動いて、の繰り返しのなか、毎回お声掛けをいただいてありがたいと思う一方で、「きっとできるから、こっち向いてよ!」みたいな呼びかけが、どこかから聞こえてくるような。だからなのか、撮影に挑んだときはそのたまっていた感情からか、「あ、撮影できてる!」「完成したんだ!」と、心から嬉しく思いました。ある意味、ここまで時間がかかっても仕方ないと思える映像のパワーがありますし、なにはともあれ無事に完成してお披露目できることを、夢のように感じています。

恋愛って、おたがいが好きと言い合って確認して始まる、というものではない

――物語のタイムラインが20年以上の時間経過があるなか、同じ役を演じ続けるというのは、もはや朝ドラか大河ドラマ級なんですが、役作りや芝居のアプローチはどうされたんですか?
妻夫木 あまり不安がなかったんですよ。衣装合わせのときから、ビジュアル面で年月の経過を表現でき、それが演じるうえで助けになることがわかっていたので、見た目は大丈夫。それよりもグスクがスクリーンの中でそれぞれの時代を生きていることを表現することに集中しよう、という感じで挑みました。
広瀬 どの役も時間の経過とともに経験値が増えていくんですが、私も衣装やメイクの力に助けられたところが大きいと思っています。

――こういう経験は今までありました?
妻夫木 あまりないんですよね。もちろん時間の経過が長い役はこれまでもチャレンジしてきましたが、グスクのようにひたすらオンちゃんの幻影を追い続けて数十年、みたいな役は初めてかもしれません。
広瀬 私もそうそうない経験だったと思いますし、主要キャストの中で私だけ年齢が離れていたこともあって、正直どうしよう、と思ったのが素直な気持ちでした。若いころのヤマコのパートよりも、大人になってからの彼女が物語のメインになっていますが、どの時代のヤマコも等身大のまま。それに関しては話し方などでいくらでも芝居できるから大丈夫だと思ってました。それよりも現場でも完成した作品を観ても感じたのが、妻夫木さんや永山さん、窪田さんが冒頭、本当に少年にしか見えないのがすごいと思ってます。

――グスクとヤマコの関係性はお二人の解釈としてはどう観ているんですか?
妻夫木 監督も悩まれたと思うんですが、僕が原作と台本を読んだ感覚として、2人の関係はプラトニック。でも、映像として表現するうえで、その感情をどこまでいれるか、というのは難しいところだったと思います。なにせ2人について描くことが多いから、恋愛の部分を入れてしまうと話がぶれてしまうと思っていて。僕としては一貫してそのパートはいらないんじゃないか、と思っていたんですよね。恋愛って、おたがいが好きと言い合って確認して始まる、というものではないと思うんですよ。一緒にいるのは、好意を持っているから。それだけでいい。グスクの場合「ヤマコが幸せならそれが僕の幸せ」という感情があったと思いますし、すずさんもそうやって演じてくれたのは助かりました。
広瀬 グスクはお兄さんのようでもあり、戦友でもあり、家族でもあり。ヤマコにとって自分の穴を埋めてくれるような存在。それが恋愛かと聞かれるとちょっと違うんですけど、まわりから見たら恋愛にも見えるんでしょうし、おたがいが心の支えになっている、相棒のようなものになっているんだと思いました。それがどんどんと物語上で共鳴し合うから、一般的な恋愛感情に走るのも、わからなくはないですよね。でも、ヤマコは自分の足でしっかり立って、人に頼らずに生きようとするキャラクターだから、グスクはそんなヤマコを甘やかさず、自分らしく生きるのを支えてくれる存在、というように感じてます。

これは人生のお話であり、あなたのお話

――お2人とも、沖縄を舞台にした作品の経験がありますし、この作品もご自身のキャリアの中で重要なものになることは確実だと思います。この作品を経て、沖縄への想いで変わられたことはありますでしょうか?
妻夫木 ようやくちゃんとした意味で向き合えた、という気がします。ずっと愛していた場所ではあったんですが、自分の力ではどうにも発信し尽くせないと感じていましたし、それに着手していないことに対して憤りもあったんです。僕は役者だから、役者として芝居を通して発信しないといけないと思うんですが、それがようやくできたのかな、と。自分が唯一発信できる芝居を通して、この作品で沖縄と向き合うことができた気がするんですよね。沖縄で知るべきこと、そして僕らが真剣に考えて向き合わないといけないことに、ようやく近づくことができたんじゃないかと思います。
広瀬 私も『怒り』の沖縄パートを経験したことで、沖縄の歴史には私たちが覚悟を持って向き合わないといけないことがある、というのは理解しています。気軽に立ち入るようなことはできないぶん、この作品で体現しようとすることにはすごく覚悟が要りましたし、挑戦したいという強い気持ちもありました。だって、こういうことを知っていくことで、自分自身の人生にも確実に影響がありますから。ある意味、今回の現場はなにかに試されているような緊張感がありましたし、そんな沖縄との縁を感じてしまうこともありました。

――最後に、小誌読者にメッセージを。絶対観たほうがいい、と私たちは思っているんですが、なにせトイレの不安を感じる長尺で、重厚な超大作なので尻込みしちゃう人も多いかな、と不安でして……。お二人の言葉でいただけると幸いです。
妻夫木 ほんと、きっかけはなんでもいいので、とにかくこの作品をご覧いただいて、映画を通して沖縄、そして日本について考えるきっかけになってくれればいいと思っています。観ていただければわかるのですが、戦後沖縄の話ではなく、これは人生のお話であり、あなたのお話なんです。生きることって、人生って、ということに向き合う機会ってそうそうないですし、だから、僕はこの作品の印象を「圧倒的生命力」と思ったんですよね。ちょっと元気がなくなってるな、とか感じている人は、この作品で前を向いて生きる力をもらってほしいですね。
広瀬 この作品を観ることで、知る機会がなかったからこそ知ることができる、と思うんですよね。物語の最後の方は、私たちが演じた役が読者の皆さんと同じ世代になりますから、観ている方も自分の生きている道を見つめ直したくなる気分になると思いますよ。

『宝島』
story 1952年、米軍統治下の沖縄。「戦果アギヤー」という若者達は、米軍基地に侵入して物資を奪い、それらを困窮する一般人に分け与えていた。ある夜の襲撃で、リーダーのオン(永山)は思いもよらぬものを手にしてしまい、失踪。それをきっかけにグスク(妻夫木)、ヤマコ(広瀬)、レイ(窪田)らは別々の道を歩み始めるのだが……。
監督:大友啓史/原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫)/出演:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太、塚本晋也、中村蒼、瀧内公美、栄莉弥、尚玄、ピエール瀧 ほか/配給:東映、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/公開:9月19日より、新宿バルト9ほか全国順次ロードショー
© 真藤順丈/講談社 © 2025「宝島」製作委員会

衣装クレジット(広瀬さん)
ブラウス¥134,200、パンツ¥287,100、ネックレス¥112,200、ブレスレット¥ 42,900、ブラックバングル¥ 56,100、ゴールドバングル¥48,400(全てディースクエアード/スタッフ インターナショナル ジャパン クライアントサービス)
ボディースーツ¥16,000(トゥ/on PR)
パンプス¥134,200(クリスチャン ルブタン/クリスチャン ルブタン ジャパン)
ピアス¥41,800 (キャリアリング)

【問い合わせ先】
スタッフ インターナショナル ジャパン クライアントサービス TEL:0120-106-067
on PR(トゥ) TEL:03-4334-6121
クリスチャン ルブタン ジャパン https://jp.christianlouboutin.com/
キャリアリング https://careering.jp

Photograph:KAZUYUKI EBISAWA[MAKIURA OFFICE]
Interview & Text:MASAMICHI YOSHIHIRO
Styling:YASUHIRO TAKEHISA(妻夫木さん)、AKIRA MARUYAMA(広瀬さん)
Hair & Make-up:AZUSA OUE(妻夫木さん)、MASAYOSHI OKUDAIRA(広瀬さん)

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