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【南果歩さん】友達に「ごめん、私60過ぎてるよ」と告白。孤独とうまくつき合う方法とは?

  • 2025.9.8

【南果歩さん】友達に「ごめん、私60過ぎてるよ」と告白。孤独とうまくつき合う方法とは?

昨年還暦を迎え、これまでにも増して精力的に、世界を舞台に活躍中の南果歩さん。新作映画では、異文化との出合いで変わっていく女性をいきいきと好演しています。私生活では30年ぶりの一人暮らしを開始。同世代女性へのメッセージを贈ってくれました。

プロフィール
南果歩さん

みなみ・かほ⚫1964年兵庫県生まれ。
84年、映画『伽倻子のために』で主演デビュー。
89年『夢見通りの人々』で第32回ブルーリボン賞助演女優賞受賞。
2015年映画『MASTERLESS』で全米デビューを果たす。
Apple TVのドラマ「PACHINKO パチンコ」他、世界を舞台に活躍中。

外国の友達から言われた。「37、38歳でしょう?」

昨年のインタビューで、子育てが終わり、離婚も経験したことで、自身を中心とした時間割が組めるようになったと晴れやかに話してくれた南果歩さん。この5月に、二世帯住宅で同居していた息子さん夫妻がニューヨークに移住し、いよいよ30年ぶりに一人暮らしを始めることになったという。

「24時間を自分の時間として生きられるようになったので、その意味ではとっても自由なんですけど、でもやっぱり自由と孤独はワンセットですからね、必ずそこに孤独はついてきます。人間は誰しも一人で生まれて一人で死んでいく。孤独を上手に友達にしていくしかないですよね。私はそれが少し得意かも。よく『楽しそう』『幸せそう』と言っていただけるのは、だからなのかもしれないですね」

とは言っても、母・娘・孫娘と3代にわたる愛犬を飼っていて、本当の一人暮らしとは違うかもしれないが、賑やかで楽しい。毎朝、新聞を2紙読み、気になる記事を切り取るのも日課だ。

「スクラップするわけじゃないんですよ。気になったら切り取って、後でまた読んでみる。自分の知らない世界を知るのがとても好きなんですね。勉強熱心とかではなくて、ただ単に好奇心が旺盛なんでしょうね」

5月、息子さん夫妻の引っ越しを手伝いがてら訪れたニューヨークでは、図書館で行われている無料の英語クラスがあり、月曜から金曜までの週5日、毎日2時間の授業に通ったという。授業後には、芝居を観たり美術館に行ったり、友人と会ったりと、充実した日々を過ごした。

「その英語のクラスで友達になったポーランド人のアネタという女性がね、最後の日に『それで果歩はいくつなの?』って聞くんですよ。アネタ自身は40歳だと言うので、『何歳に見える?』と聞いてみたんです。そうしたら『私よりちょっと下だと思うから、37、38歳?』って言うので『ごめん、私60過ぎてるよ』と告白したら、目を見開いていました(笑)。こちらがびっくりしちゃって」

いやいや、今の南さんのツヤツヤした肌やはじけるような笑顔を見ていたら、アネタの気持ちがわかるというもの。内側から湧いてくる好奇心やときめきが、常に人生を目いっぱい楽しもうとする前向きな気持ちが、南さんを輝かせているのだろう。

その軽快なフットワークは仕事面でも、新たな境地を切り開いている。2021年にオーディションでメインキャストに選ばれたApple TVのドラマ「PACHINKO パチンコ」をはじめ、フィリピン映画界の巨匠、ブリランテ・メンドーサ監督作の『義足のボクサー GENSAN PUNCH』など、世界の作品への出演が続いているのだ。

「何かゴールを決めて、目標をそこに置いて動いているわけではないんです。今、自分の関心が向いているもの、自分が面白いと思うものを優先していった結果、そういう方向に行っているのかなって思っています」

自分を好きでいられるか、それが大事

そんな南さんが次に挑んだのは、ハートフルなコメディ映画『ルール・オブ・リビング』だ。長く日本で俳優や演出家として活躍するグレッグ・デールさんが、監督・脚本と、出演も。作品は、異文化と出合って、本当の自分自身を取り戻していくミドルエイジの女性の姿を温かく描いている。

「主人公の美久子は、自分のルーティンを守りながら生きていて、そこからはみ出すイメージももっていない人。その意味では、多くの同世代の日本女性が共鳴する部分がいっぱいあるのではないかと思います。でも現状に満足しているわけではなくて、何か自分が変わるきっかけが欲しいとは思っている。そこへひょんなことからアメリカ人の男性とルームシェアをすることになって、最初は拒否反応しかなかったのが、窓が開いて新しい空気が入ってくるんですね。日本人って私自身もそうですが、人の目を気にして、年齢や肩書で自分を縛ってしまうところがありますよね。でも、大事なのは、自分自身が自分を好きでいられているか、人生をエンジョイしているかということ。そこを感じていただけたらいいなと思います」

デール監督と南さんは、昔ある舞台で仕事をして以来、年賀状をやりとりする間柄。今回久々にタッグを組んで、監督は、プロとしての南さんの期待以上の演技力と、特に「ハート」に感銘を受けたという。コメディ映画は難しいといわれるが、8つの国際映画祭から招待を受け、セドナ国際映画祭では最優秀長編コメディ賞も受賞している。美久子の姿は、きっと多くの女性の背中を押してくれるに違いない。

弱い自分を蹴散らして打ち勝ちたい

映像分野での活躍が目覚ましい南さんだが、この秋は舞台への出演も決まっている。注目の劇作家・横山拓也さんの新作『ハハキのアミュレット』だ。

「舞台は関西のとある町の、代々、手仕事で箒を作り続けている店。兄が放って出ていった店を妹が継いでいる設定なんですけど、そこへ兄が帰ってくる。後継者問題や手仕事の伝承問題も含まれていて、これまた一転、違った味わいを楽しんでいただけるかと思います」

兄役を演じるのが平田満さんというのも楽しみだ。

「舞台は何年やっても、毎回初日の舞台袖では怖くてブルーになるんです。それでも逃げないでやるのは、自分に負けたくないから。何とか弱い自分を蹴散らしたい。絶対できる、だから頑張れって。いつもその闘いです。それに打ち勝ちたい」

人生を思い切り楽しみながら、常に自身に挑戦を突きつけてそれと闘っていく。そしてひとつ次の扉を開くたびに、またそこには新たな世界が待っている。南さんの第2章はますます夢に満ちあふれている。

「来年はニューヨーク在住の女性監督と組み、映画のプロデュースと主役を務めます。私もいつも自分を好きでいられるようでいたい。なのでこれからも、できる限り可能性にチャレンジしていきたいと思います」

【Information】『ルール・オブ・リビング~“わたし”の生き方・再起動~』

ルールどおりに生きてきた会社員・美久子。介護中の母や海外を旅する娘、自分勝手な同僚たちに振り回され、心の余裕を失っていた。人生に迷いを抱える中、娘に突然紹介されたアメリカ人バックパッカーのヴィンセントと3カ月間ルームシェアをすることに。言葉も通じず、生活の感覚も異なる2人が同居するに当たり、美久子は4つのルールを決める。最初は戸惑い、衝突してばかりだったが、少しずつ心が通い始め……。人生を振り返り、自分自身を解放していくハートフルストーリー。

2025年9月19日(金)新宿ピカデリー 他、全国公開
監督・脚本/グレッグ・デール
脚本・翻訳/宮本弥生
出演/南 果歩、グレッグ・デール、椎名桔平、河北麻友子、すみれ 他
配給・宣伝:バリオン
宣伝:HAPPY WOMAN®
宣伝協力:ギグリーボックス
ⓒMirus Pictures

撮影/玉置順子(t.cube)
スタイリング/坂本久仁子
ヘア&メイク/黒田啓蔵(Iris)

※この記事は「ゆうゆう」2025年10月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。

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