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IQ120以上のずば抜けた知力を持つ一方、“問題児扱い”されることも…「ギフテッド児」が直面する困難とは

  • 2025.9.4

“ギフテッド”の子には、さまざまな特性があり、「どう育てたらいいかわからない」と悩む家庭も少なくないそうです。そこで今回は発達障害の専門医でもある宮尾益知さんが監修した『ギフテッドの子を正しく理解し、個性を生かす本: 生きづらさを解消するサポートの方法』から、“ギフテッド”の子どもの特性と、才能を開花させるための育て方のコツをご紹介します。

「ギフテッド」とは

熟考する完璧主義者。知能検査で判明する

ギフテッドとは、ずば抜けて高い知的能力や才能をもつ人のことです。もともとは「天から与えられた才能をもつ者」という意味の言葉です。<ギフテッドは医学的な診断名ではない>ギフテッドの特徴は「IQが120~130以上で、先天的に著しく高い能力がふたつ以上あること」とされています。WISC(ウィスク)と呼ばれる知能検査が客観的な指標のひとつに用いられます。生まれつき脳機能に偏りがあり、IQ以外にも共通した行動特性としては、ひとつのことを深く考え、完璧にやりとげようとする傾向が見られます。しかし医学的な診断名ではありません。世界共通の診断基準等はなく、教育的・社会的概念です。ギフテッドをもつ子どもたちは、ずば抜けた知的能力のほか旺盛な好奇心、驚異的な記憶力、想像力など、特定の学問やジャンルで高い能力を発揮します。なかには秀でたリーダーシップを発揮する子もいます。一方で興味のないことにはまったく関心を示しません。神経質で感情の起伏が激しく、学校や家庭で「扱いづらい子」と問題児扱いされることもあります。社会性が低い点も共通の特徴で、集団のなかで孤立しがちです。またギフテッドにはASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)など発達障害のもつ症状との重なりも目立ちます。ギフテッドと発達障害の要素をあわせもつ場合、「二重に特別な人間=Twice Exceptional」を意味する2Eと呼ばれます。

知的刺激を切望し、特定分野を掘り下げていく

一般にギフテッド児は「飛び級できるような賢い子」と考えられていますが、多様な知的刺激を切望し、好きな分野を自分なりに極める能力に長けています。ギフテッドの能力(ギフテッドネス)を生かすには、たんに飛び級のような学習の先取りだけでは不十分です。周囲の大人は本人が好きな分野を思う存分掘り下げる機会をつくるだけでなく、思考や創造性をつねに刺激し、ギフテッド児が苦手な「忍耐力」や「やり抜く力」を意識的に育んでいくことが不可欠です。

知能検査はどこで受けられるのか?

(1)医療機関小児科や児童精神科などを通じて、医師が発達障害などの診断において必要と判断した場合に実施される。ケースバイケースだが保険の適用もある。(2)教育支援センター市区町村の教育委員会や福祉部局と連携。子どもに必要な支援を検討するために実施される。医療機関とは異なり、診断書の発行は行わない(3)民間施設(カウンセリングルームや心理相談室など)民間のカウンセリングルームや心理相談室などで実施される。結果をもとに家庭での具体的な対応方法などをアドバイスしてもらえることもある。

【学校での問題】先生との関係がうまくいかず、通学できなくなるケースも

ギフテッド児はIQが高いにもかかわらず、小学校に入るとさまざまな困難に直面します。クリニックを受診するのは小学校低学年から10歳ぐらいの子どもが多く、学校で問題視されて親御さんに連れて来られるパターンが一般的です。

知的水準が高い発言や反抗的な態度で問題が起こる

学校で問題視されるのは、ギフテッドの特性が周囲との関係においてトラブルになりやすいからです。ギフテッド児は知的に高度ですが、自分が興味のないことには関心を示しません。授業中も好きな本を読んだり、空想にふけったりしてしまいます。先生がそれを指導すると反抗的な態度を示します。一方、興味のあることはとことん突き詰めていくので、難解な質問で教師を困らせ、答えられないとバカにしますいまの義務教育のなかで、ギフテッド児に個別に対応できるほどの余裕が学校側にないのでしょう。先生から否定的な態度をとられ、通学をいやがるようになるケースも少なくありません。<オールマイティに優秀なわけではない>ギフテッド児のなかで、全ジャンルにおいて優れているという子は少ない。特定の分野で高い能力を発揮する。

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成績が芳しくないギフテッド児も多い

ギフテッド児は記憶力、理解力が高く、全教科にわたり成績優秀な子もいます。その一方で、興味ある特定の分野では突出した能力を発揮するのに、学校の成績が芳しくないギフテッド児もたくさんいます。得意・不得意のギャップが非常に大きいことが一因です。またギフテッド児に多いのは、手先が不器用、運動が苦手という問題を抱えるケースです。手首足首が柔軟に動かせない特性があるので、ボールなどの道具を使う運動、書字や図工、音楽、裁縫や料理などがうまくできません。できないことはやりたがらないため、上達もしません。手足や目の動きを協調させる運動が苦手な発達障害に、発達性協調運動症(DCD)があります。10代になってこうしたことがあるとDCDとの重なりがあるギフテッド・2Eと診断される子もいます。現在のところ、教育現場では周知がじゅうぶんとはいえず、周囲の理解不足から、傷つけられる子も多いと考えられます。

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【ギフテッドの困難】完璧主義と飽きっぽさ。 学習経験が積み上がらない

一般に高いIQや才能は社会で有利と考えられがちです。しかし、ギフテッド児の場合、飛び抜けて優秀なのに必ずしもうまくいきません。

秀でているのになぜうまくいかないのか?

うまくいかない理由のひとつはギフテッドの脳の特性にあります。ギフテッド児は、知識を得ることは得意でも、作業に必要なことを一時的に記憶するワーキングメモリや、処理速度の能力が低いなどのアンバランスさがあります。そのため能力を発揮できないことが多いのです。また、才能はあっても、その才能を開花させるには、経験や訓練などの努力が必要です。ところがギフテッド児は、コツコツと同じことをくり返すといった地道な努力や鍛錬が苦手です。さらにギフテッド児は自分よりはるかに能力が低い人たちと行動することにストレスを感じます。IQ130程度まで(2SD未満)ならなんとか周囲と調和できますが、IQ145を超える(3SD以上)と周囲とのギャップが大きすぎるので調和は難しいと考えられています。フラストレーションで感情を爆発させ、問題児扱いされてしまいます。

失敗がイヤ。失敗するなら最初からやらない

ギフテッド児の才能を開花させるには「3つの輪」が必要だとされています。3つとは「高い知能(平均以上の知能)」に加えて「創造性」「課題へのコミットメント(やり抜く力)」です。この3つをそろえることは容易なことではありません。たとえば「創造性」を育むには柔軟な思考や積極的なチャレンジが不可欠ですが、ギフテッド児は完璧主義で失敗を極端にいやがります。苦手なことは最初からやらない。失敗しながら経験を積み上げていくことが難しいのです。また、ギフテッド児はわずかな反復学習でなにをどうすればいいのかわかってしまいます。でも、すぐ飽きるのです。漢字書き取りなどなぜ反復しなくてはいけないのか理解できず、学習習慣が身につきません。モチベーションの維持が困難で、ひとつの課題をやり抜くことができないのです。

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▼著者プロフィール▼宮尾益知(ミヤオマストモ)小児精神神経科医・どんぐり発達クリニック名誉院長。医学博士。東京生まれ。徳島大学医学部卒業。東京大学医学部小児科、自治医科大学小児科学教室、ハーバード大学神経科、国立研究開発法人国立成育医療センターこころの診療部発達心理科などを経て、2014年にどんぐり発達クリニックを開院。専門は発達行動小児科学、小児精神神経学、神経生理学。

今回紹介したのはこちら!

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ギフテッドの子を正しく理解し、個性を生かす本: 生きづらさを解消するサポートの方法 (心のお医者さんに聞いてみよう) 宮尾益知 著/大和出版「好きなことだけしかやらない」「すぐに癇癪を起こす」「反抗的な態度を取る」「まわりをバカにする」「暴言を吐く」親は手を焼き、先生は対応しきれず、クラスでは浮いてしまう。IQが高いのになぜ問題児になってしまうのだろう? どうしたら持てる才能を伸ばせるか?認知脳に比べ、社会脳の発達が遅れているギフテッド児は社会の中で他人の心を想像し、自分に引きつけて考え、行動することが苦手なため、集団で協力しあって行う学習にもついていけなくなる。IQが高くても、知識を活用して考えを深め、新たなことを発見・創造するまでには至らないのだ。持てる才能の芽を摘まずに個性を伸ばしていくには、適した学びの場や親のサポートが必要なのである。不可解で学校でも家庭でも“扱いづらい”とされる子の困難を知り、上手に寄り添い援助する法。

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