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ハルノブムラタの挑戦──西洋のエレガンスに“日本の自然美”を重ねて【2026年春夏 東京コレクション】

  • 2025.9.3

会場は青海エリアにあるテレコムセンター。時折鳥のさえずりが混じる心地良い音楽が流れている。中央には黒いやぐらのような装置が設置されており、いつものように客席に置かれたプレスリリースによれば、滝をイメージしているようだった。「自然を愛し、都市を軽やかに生きる女性像」を描くとあり、だんだん広大な円形の吹き抜けのスペースが丸い地球を象徴しているかのように思えてくる。やがて中央の装置から白いスモークが溢れ出し、ショーが始まった。

取材に応じたデザイナーの村田晴信によれば、「自然」と「都会」の要素を掛け合わせようと思ったのは、最近自然を愛でる心の余裕を持ち、肩の力を抜いて都会を生きる女性たちが目立つように感じたからのようだ。また、自身がこだわって生産された野菜で料理をすることに豊かさを感じ、のめり込んだことも一因になったという。

オーガニックなものや、ナチュラルなものにまつわるフィーリングが気になったんです」。たしかに、コレクションを通じて一番印象に残るのは軽やかさだった。

何十枚もの薄く軽量なオーガンジーを重ね、手作業で枚数を調整して「霧のように曖昧な輪郭」を作ったというファーストルックのドレスをはじめ、カジュアルなデニムスウェットのアイテム、オーバーサイズのビスコースのセットアップなどにそれが表れている。どうやら、今年ファーストリテイリンググループが展開する中価格帯のブランド、プラステのウィメンズ・クリエイティブディレクターに就任したことも影響しているよう。

「これまでに比べて、日常を生きる女性像を強く意識するようになったと思います」

そこで自然現象を再現するインスタレーションで名を馳せ、環境問題に取り組むオラファー・エリアソンや自然をテーマとした作品を発表し続ける吉岡徳仁といったアーティストたちを念頭に置きつつも、着想源として前面に打ち出すことはしなかった。

取材の最後に海外進出への意欲を改めて明らかにし、「グローバルに展開していくうえで、自分たちが持っているどういう価値観が武器になるのか」考えていると語っていた村田。おそらく自身のルーツである日本の要素もその一つで、今回は代表が友人だという京都・西陣の織元、織楽浅野の帯を再解釈したスカートが登場したが、用いられたのは枯山水をイメージしたというルック1体のみ。

「京都にある織楽浅野にアーカイブを見に行った時、その庭の静謐な空気に感銘を受けました。あからさまに“和”をアピールするというよりは、そうした要素に目を向けられる日本人らしい自然の捉え方や価値観が強みになるのかもしれない、と思ったんです」

たとえばファーストルックで布と着用者が作り出す陰翳には、小説家の谷崎潤一郎が指摘したような日本の伝統美を意識している。

村田が長年ヨーロッパで経験を積んだこともあり、欧米的なエレガンスの表現が際立っていたように思われたハルノブムラタHARUNOBUMURATA)だが、心境の変化や海外進出への意欲の高まりからか、今季はより一層ブランドらしさを追求することになったようだ。しかし、それをやみくもに主張するのではなく、きっと時代の空気を読み取りつつなのだろう、打ち出し方のバランスを取ろうとしている。その感覚を大切にしながら、世界を舞台にする時に向けて、ますます独自性を発揮していってほしい。

Photos: Gorunway.com

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