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素材別のメンテナンス法をプロが解説。自宅でできる、大切なジュエリーのお手入れ方法

  • 2025.8.30
A solution of baking soda(Sodium bicarbonate) and warm water will remove the tarnish from silver when the silver is in contact with a piece of aluminium tin foil. Pouring hot water over silver.

「身に着けるものの中で、ジュエリーこそが最も変身させてくれるもの」と、2024年に102歳で亡くなった世界的なファッションアイコン、アイリス・アプフェルは言った。ならば、ジュエリーの正しいお手入れ方法は、誰もが知っていて、簡単に答えられるファッションの基礎知識であるべきだ。

宝石をあしらった豪華なブローチから、普段使いのシンプルなゴールドのフープピアス、あるいは先祖代々受け継がれてきたネックレスや、「MOM」と刻印されたナックルリングまで、特別なジュエリーは、くすみのない輝きを保った清潔な状態がふさわしい。難しく考える必要はないが、ジュエリーを良い状態で保つためには、いくつかの鉄則がある。まずは、ジュエリーの素材を正確に把握すること。ゴールドか金メッキか。シルバーかスターリングシルバーか。真鍮か貴石か。お手入れの方法や頻度は、素材によって変わる。また、ブランドのウェブサイトを確認し、パンドラPANDORA)やメジュリ(MEJURI)のように特定の推奨するお手入れ方法や、使用するべき製品があるかどうかを確認するのもおすすめだ。

また、適切な方法で保管することも、変色やダメージを防ぐ上で押さえておきたい重要なポイント。ジュエリーは、直射日光が当たらない涼しい場所に個別に保管するのがベストだそう。「個別に保管することで、いつまでも輝きを保つことができます」と、ジュエリーブランド、セレステ・スター(CELESTE STARRE)の創業者でクリエイティブ・ディレクターのアンドラヤ・ケノンも言う。

今回、バリンジャー(BALLINGER)の創業者で、元UK版『VOGUE』のシニア・ストラテジスト、エミリー・ナンズにも話を聞いた。バリンジャーは、先祖代々受け継がれるヴィンテージにインスパイアされた、長く愛用できるステートメントジュエリーとデミファインジュエリーを手がけるイギリスのジュエリーブランドだ。「すぐに変色してしまうイヤリングや、数回着けただけで指が緑色になる指輪に、長年膨大な金額を無駄にしてきました」と彼女は明かす。「安いジュエリーではなく、高級ブランドで購入したものでもそうだったんです。ですから、バリンジャーの最初のサンプル制作では、多くの試行錯誤を重ねました。私は、イスタンブールを拠点にする職人の親子と協力して、ジュエリーデザインを形にしています。最終的に採用したのは、スターリングシルバーや真鍮を18Kゴールドの厚い被膜で真空コーティングする物理蒸着法(PVD法)という手法。通常の金メッキの10倍の強度があり、ジュエリーの耐久性が格段に向上します。バリンジャーでは、ジュエリーを食洗機にかけたり、塩水などの液体につける厳しい品質テストを実施していますが、損傷したものはまだありません」

ナンズは、ジュエリーのケアだけでなく、長持ちさせるための工法にも精通した人物だ。お手入れ方法の説明の前に、ジュエリーの損傷を予防するコツとして彼女が教えてくれたのは、ボディローションや香水オイル日焼け止めなどは、ジュエリーをつける前につけること。「こうすることで、どんなタイプのジュエリーでも着用後のお手入れが簡単になり、保護にも役立ちます」

石鹸やローション、ボディオイルは、ジュエリーのくすみや汚れを引き起こす。また、空気中の汚れ、ちりや埃などの環境的な要素、水泳やシャワー、ガーデニングなどの日常のアクティビティ、単に外に出かけるだけでも、ジュエリーには汚れが蓄積されてしまう。そこで、日頃から行える失敗しないお手入れ方法をプロに聞いた。

お手入れの頻度

お手入れは「少しずつ、頻繁に」がナンズのルールだ。「毎日ジュエリーを着用するなら、週に数回汚れを拭き取ることをおすすめします。そして、月に一度、入念なクリーニングを行います。用意するのは、温水、食器用洗剤、柔らかめの歯ブラシ、布だけです」また、アルコールベースのクリーナーは避けるように、彼女は指南する。「ジュエリーのお手入れにはアルコールの使用を避けた方が無難です。必要ありませんし、素材によっては損傷してしまう危険性があります。アルコールが宝石自体の自然な油分を奪うことで、ヒビ割れを起こすこともあるのです」

ネットにはあらゆる情報が溢れているが、ナンズはTikTokで紹介されている裏技に注意するように警告する。「強い洗剤に浸けることすすめる動画もありますが、絶対に避けてください!」

素材別のメンテナンスガイド

precious rings

1. ゴールド&金メッキ

純金は耐久性があり変色しないが、安価な金属のベースをゴールドの被膜でコーティングした金メッキは剥がれるリスクがある。どちらの場合にしても、中性洗剤(食器用洗剤でOK)と温水を使い、丁寧に取り扱うこと。「中性洗剤は必須です。強い成分はジュエリーを傷つける可能性があるため、漂白剤や塩素を含むものは避けてください」とナンズは付け加える。温水を入れた容器に中性洗剤を数滴加え、慎重にジュエリーを浸す。数分間浸けて、汚れには柔らかい歯ブラシを使っていく。「私のおすすめはベビー用歯ブラシです。毛先が柔らかく、濡れていても乾いていても、布では届かないジュエリーの隙間にも届きます」と彼女は説明する。すすいでから完全に乾かし、最後にマイクロファイバーの布で磨く。金メッキの表面は洗いすぎ、磨きすぎないように。

種類にかかわらず、ジュエリーのお手入れで最も重要なポイントは、優しく扱うということ。強い摩擦は厳禁で、特にメッキ加工のジュエリーには注意が必要だ。

2. シルバー&スターリングシルバー

シルバーは変色しやすい素材。シルバーのお手入れの大きな違いは、汚れを落とすプロセスよりも、変色を起こさない適切な保管にあるとナンズは言う。「外気、湿気、日光に長時間晒されるとシルバーは変色してしまいます。シルバーのアクセサリーは必ず内側に裏地が付いたジュエリーボックスに保管してください」。彼女が手がけるバリンジャーのすべてのピースに、美しいブルーのベルベットのギフトボックスが付属するのは、ジュエリーを安全かつ上品に保管できるようにするためなのだ。

シルバーポリッシュや、フォームタイプのクリーナーもお手入れに役立つアイテムだ。黒ずみを落としながら、表面に保護膜を作ることができる製品だが、難点は少々手間がかかること。使い捨ての汚れ落としシートや、シルバー磨き専用のクロスを常備しておくのも便利だ。

より本格的な黒ずみ落としには、重曹と水を3対1の割合で混ぜたペーストを塗り、布で軽く拭いてから水で洗い流し、乾いた布で磨く。重曹がない場合は、少量の歯磨き粉でも代用できる。

とはいえ、アイテムによっては注意が必要だ。「重曹には金属を傷つけるリスクもあるため、私たちのスターリングシルバーの製品にはシルバー磨き用のクロスを使用しています」と、エナメルやレジン、金属、淡水パールなど多様な素材を使用したY2Kテイストのジュエリーを打ち出すニューヨークのブランド、ボンボンウィムズ(BONBONWHIMS)の創業者でクリエイティブ・ディレクターのクレア・ンガイ=ハワードは言う。

3. ファッションジュエリー&コスチュームジュエリー

アルミニウム、真鍮、銅などの硬度の低い素材のコスチュームジュエリーやファッションジュエリーは変色しやすい。変色やダメージをできるだけ防ぐには、ここでも温水に数滴の食器用洗剤を加えた溶液を使う。ただし、今回は宝石や接着剤、プラスチックなどが剥がれてしまうおそれがあるため、ジュエリーを浸けてはいけない。代わりに、マイクロファイバーの布を溶液を含ませ、優しくジュエリーの表面を拭く。汚れが落ちたら清潔なクロスで拭き、軽く水分を拭き取ったらタオルの上に置き自然乾燥させる。

4. 宝石、貴石、真珠

「自宅でできる最も安全な指輪のクリーニング方法は、温水と中性の食器用洗剤を使う方法です」と明かすのは、ニューヨークのミートパッキング・ディストリクトに店舗を構えるアンティークジュエリー店、ドイル&ドイル(DOYLE & DOYLE)のエリザベス・ドイルだ。

頑固な汚れの場合、ジュエリーをしばらく浸けて汚れをふやかし、その後柔らかい毛先の歯ブラシで磨く。「汚れが溜まりやすい石の台座の裏側までしっかり洗ってください」とドイルは言う。ただし、こちらも珊瑚や真珠などの有機宝石、オパールやターコイズなどの多孔質石には洗剤を使用してはいけない。「消毒剤に含まれるアルコールが宝石を乾燥させてしまい、表面にダメージやひび割れを引き起こすリスクがあります」

真珠は特に注意が必要だ。「真珠はとてもデリケートなので、洗う水の温度が高すぎるだけでダメージを引き起こすリスクがあります」とナンズは言う。「食器用洗剤は真珠の輝きを奪い、酸性や研磨剤の含まれるものは傷やダメージの原因になります。私はぬるま湯で洗い、自然乾燥させてから、柔らかい布で拭くことをおすすめします」

宝石や真珠をあしらったジュエリーを日常的に使うなら、週に数回柔らかい布で軽く拭き、表面に付着した油分や香水を取り除くことをナンズは推奨している。

ジョージ王朝時代やヴィクトリア朝初期の美しい装飾が施されたアンティークジュエリーの場合も特に注意が必要だ。「台座の裏側が閉じたデザインの指輪に水が入ってしまうと、石の見た目に影響が出る場合があります」とドイルは言う。「また、ロケットリングや、ガラスの下部に写真や装飾が施された指輪は、水で洗わないようにしてください」

クリーニングサービスを依頼するタイミング

Young woman covering her face

アンティークや思い入れのあるアイテム、複雑なデザインのものなど、セルフクリーニングでジュエリーを傷つけてしまうことが心配な場合、プロのサービスを利用することをナンズはおすすめする。「専門家はあなたのジュエリーの輝きを取り戻すことができます」と彼女は言う。「ただし、普段使いのデミファインジュエリーの場合、自宅でお手入れをしているなら、専門のサービスを利用する必要はありません」

お気に入りのジュエリーを最高の状態で保つために

お気に入りのジュエリーを日常的に使う上で、毎日のルーティーンにマストで取り入れるべき習慣もある。手を洗うとき、入浴時、掃除をするとき、メイクやスキンケアをするとき、香水をつけるとき、泳ぐときは必ず指輪を外すこと。変色防止用の保管袋やジュエリーボックスに投資し、保管方法を守ること。そして、思い入れのあるものや、高価なものに関しては、気になることがあればプロに相談して状態を確認したり、美しさを保つためのアドバイスを仰ぐことをおすすめしたい。

Text: Ana Cafolla Translation: Motoko Yoshizawa

From VOGUE.COM

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