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食欲ダウンに注意! 夏場の寝たきり高齢者に「微熱」が続く原因&対処法

  • 2016.5.17
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【女性からのご相談】

40代。82歳になる母は大腿骨頸部骨折をきっかけに病院で寝たきりの状態となり、患部周辺の筋委縮による脱臼と多臓器の機能低下から、今後も医療療養病床での寝たきり生活が続く見通しとなりました。その母に、この2週間ほど37度台前半の微熱が続いており、心配です。

発熱当初の血液検査では腎機能の低下と炎症反応があり、水分と抗生剤の点滴を受けていったんは回復しました。

その後の検査ではWBCやCRPの上昇もなく尿路感染症などもありません。喉の渇きも訴えなくなってきたので腎機能もそれなりに回復してきていると思われます。

それなのに微熱が続いて下がらないのは、何が原因と疑われるでしょうか。

●A. 加齢に伴う恒常性の維持困難、発汗量減少による熱こもり、生体リズムの変調などが考えられます。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

筆者の母親もご相談者様のお母様と近い状況にあるため、御心配のほどはわがことのごとくに痛み入る次第にございます。心よりお見舞い申し上げます。

ただ、このような状況にある80歳を超えた高齢者に対して、いたずらに身体的苦痛を伴うような精密な検査を行うことがいいのかどうかと考えますと、「あまりいいことではない」というのが正しい答えであるような気がいたします。

ここ数日、感染症は否定的で喉の渇きもピーク時ほどではないということですから、腎機能うんぬんというよりは加齢に伴う恒常性の維持困難、発汗量減少による熱こもり、生体リズムの変調などが原因としては考えられるようです。

東京・多摩北部にある医療療養病床併設の総合病院で副院長を務める医師のお話に基づいて、記述をすすめてまいります。

●5月〜9月の“夏場”は、寝たきりの高齢者に微熱が続きがち

『医療療養病床に入院している寝たきりの高齢患者さんの場合、熱こもりや生体リズムの変調など、いろいろな要因が重なって体温を維持・調節するメカニズムが異変をきたします。

これは、東邦大学看護学部の高齢者看護学研究室で准教授をされている藤野秀美博士(老年学)という先生が高齢者看護の豊富な現場経験から指摘していることですが、5月から9月にかけてのいわゆる“夏場”は、外気温の高さに伴って高齢のかたが熱を持ちやすくなり、下がりにくくなる ということもあるようです』(50代男性/都内総合病院副院長・医師)

私たちは“発熱”というとついつい感染症をはじめとする“病気”が潜んでいるせいだろうと考えがちですが、医学に精通された医師の先生が看護の専門家の見解に学んでいるというところが興味深いですね。

高齢者の療養病床の現場では微熱だけにとどまらないいろいろな問題が起きていることが想定されるため、医学のみならず看護学や介護学の視点から幅広く患者さんを見ていくことが大事なのだろうと考えさせられます。

●微熱それ自体よりも食欲減退の方が問題

それから、微熱が続いていること自体より、微熱によるダルさでお母様が食事を受けつけなくなることの方が、注意を払わなければならない問題であるようなのです。

『寝たきりの高齢者が熱由来のダルさから食欲の減退を起こすようになると、食事量そのものの減少を引き起こし、低栄養、低血糖、眠気といった負のスパイラル に入るおそれがあります。現代医学では経鼻胃管栄養法や胃ろう栄養法といった栄養摂取の方法があるとはいえ、まずはそういった状態にならないように心がけるべきでしょう』(50代男性/前出・医師)

寝たきりの高齢者が継続する微熱のダルさのせいで食事をとらないようになると、飲み込む力もあっという間に衰えてしまうようです。

療養病床での寝たきり生活でも、ハリのある生活を送ることによって負のスパイラルに陥ることをできるだけ防ぐべきです。

そのために、家族も心がけて本人が興味の持てる活動というか動作を少しずつでもするように促し、生活の“ハリ”をキープさせること が大切かと思います。

微熱が続くことは心配ではありますが、それ以上に注意すべきこともまた、あるみたいです。

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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