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“甘い誘惑”にさようなら。砂糖との健全な関係を築く方法、栄養士が伝授

  • 2025.8.17

現代の食生活において、砂糖は“どこにでもある存在”になっている。甘党でなくても、その影響力の大きさは無視できない。堂々とラベルに記載されていることもあれば、意外なところにひっそりと潜んでいることも多い。そして、摂りすぎればさまざまな不調を引き起こす可能性がある。

「砂糖は非常に中毒性のある成分です」と語るのは、栄養学とサイエンスに基づくウェルネスプログラムやサプリメントを展開する、ロンドン発のヘルスブランド「アータ(ARTAH)」の創設者リアン・スティーブンソン。「オピオイド受容体を活性化させたあと、ドーパミンの分泌が急増し、脳内の“快楽中枢”や“報酬系”を刺激します。これらはギャンブルやコカイン使用などの依存行動にも関連している領域です」

砂糖を摂ることで一時的に気分が上向き、頭が冴えたり、幸福感や安心感を覚えることもある。一方で、それが叶わないと、無性に甘いものを求めたり、過食の衝動にかられたり、さらにはイライラ、不安、頭痛などの“禁断症状”に襲われることも。

「身体的にも、血糖値の乱れ(グルコース調節異常)や高インスリン血症、炎症反応、免疫力の低下など、さまざまな影響を及ぼします」とスティーブンソンは警鐘を鳴らす。

砂糖の過剰摂取が引き起こす、体内の炎症と肌老化の真実

「砂糖は体内や肌に炎症反応の連鎖を引き起こします」と話すのは、栄養士のローラ・ロス。「甘いものや精製された炭水化物を食べると血糖値が急上昇し、それを抑えるためにすい臓がインスリンを分泌します。インスリンは糖をエネルギーとして細胞に運びますが、甘いものを慢性的に摂りすぎていると、やがて体はインスリンに反応しづらくなり、血糖コントロールがうまくできなくなってしまうのです」

この「インスリン抵抗性」は、代謝異常症候群や糖尿病といった深刻な健康問題の引き金にもなりかねない。

砂糖の過剰摂取がもたらす影響は、それだけにとどまらない。血糖値の乱高下により気分の浮き沈みや倦怠感、集中力の低下、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)といった不調を引き起こす可能性があるうえ、「慢性的な高血糖状態は、全身の炎症レベルを高めます」とロスは語る。「炎症は心疾患、気分障害、大腸がん、乳がん、前立腺がんなど、さまざまな疾患と密接に関連しています」

さらに深刻なのは、こうした健康リスクだけではない。砂糖はホルモンバランスを乱し、肥満や不妊の一因にもなる。美容面でも、糖の過剰摂取は見逃せない影響をもたらす。

「グリケーション(糖化)」という現象により、体内の糖が細胞のタンパク質に結びつき、コラーゲンの劣化を招くのだ。肌のハリや弾力を支える重要な構成要素であるコラーゲンが失われることで、たるみや深いシワ、黄ぐすみといった老け見えの原因になってしまう。

そもそも、私たちの体は“砂糖まみれ”の食環境に対応できるようには設計されていない。「旧石器時代の人類は、年間で摂取する砂糖の量がティースプーン約20杯程度と考えられています。一方、現代のアメリカ人は、加工食品などに含まれる砂糖によって、1日に約53杯分もの糖を摂取しているのが現実です」とロスは指摘する。

過度な制限食は推奨されないが、果物のような自然な糖ではなく、人工的に加えられた「添加糖」を減らすことは、多くの専門家が「長期的に見て健康に良い」と認めている。

同じ甘さでも、ここが違う。果物 vs 添加糖による血糖値と健康への影響

砂糖との健全な関係を築くうえで理解しておきたいのが、果物のような自然な糖と、加工食品に含まれる“人工的な糖”との違いだと、リアン・スティーブンソンは指摘する。

「たとえばリンゴを食べる場合、その糖分は食物繊維やポリフェノール、ビタミンCなどと一緒に摂取されるため、体内への吸収速度がゆるやかになり、果糖に対する反応も穏やかになります」とスティーブンソンは解説する。「一方で、超加工食品に含まれるのは、精製され濃縮された“純粋な糖”のようなもの。こうした糖は短時間で体内に急激に入り込み、そのインパクトは極めて大きいのです」

さらに彼女は、食品メーカーの思惑にも言及する。「企業は、消費者がつい“食べすぎてしまう”ように、味覚に強く訴える“ハイパーパラタブル”な食品を作ろうとします。結果的に私たちは必要以上に食べてしまい、企業の売上は伸び続けるのです」

「これは非常に巧妙なしくみです」とスティーブンソンは警告する。「私たちの生理機能そのものが乗っ取られているようなものなんです」

“隠れ砂糖”にも要注意

砂糖との付き合いをさらに複雑にしているのが、「隠れ砂糖」の存在だ。ドーナツやチョコレートに糖分がたっぷり含まれていることは誰もが知っているが、実はそれ以外の、いかにも“ヘルシー”に見える加工食品にも、多くの糖が潜んでいる。

インスタグラムでは、加工食品に潜む“隠れ砂糖”の危険性について発信している海外の専門家も多い。そのひとり、イギリスの栄養学者ティム・スペクター教授は、「見た目にはわかりにくい糖分こそが、もっとも厄介」と語っている。「ラベルだけでは気づきにくいため、知らず知らずのうちに摂取量が増えてしまい、コントロールが難しくなるのです」と警鐘を鳴らしている。

無意識のうちに摂り続けてしまう“見えない砂糖”。それこそが、現代の食生活における最大の盲点なのかもしれない。

今日からできる、砂糖との上手な付き合い方

まず意識したいのは、「しょっぱい=砂糖なし」とは限らないこと。見た目や味だけで判断せず、どんな食品にも糖分が含まれている可能性があるという前提で、食べるものを選ぶことが大切だ。

スーパーで購入するパッケージ入りの食品は、必ず成分表示をチェックする習慣を。「“隠れ砂糖”の名前を覚えることも重要です。砂糖にはさまざまな名称があり、ラベルを見ても気づかずに摂取してしまうことがあります」と栄養士のローラ・ロスは話す。「シロップ類、はちみつ、果糖ぶどう糖液糖、アガベシロップ、濃縮果汁、そして『〜オース(ose)』で終わる成分名(スクロースなど)もすべて糖に分類され、白砂糖やきび砂糖と同様に血糖値に影響を与えます」

もし成分表示を読み解くのが難しければ、食品のバーコードをスキャンするだけで、糖分の含有量や健康度を手軽にチェックできるアプリを使用するのもひとつの手。「目安として、100g中5g以下の糖分に抑えられているものを選ぶといいでしょう」と彼女はアドバイスする。

依存性のある成分であるだけに、適量を保つのが難しいのも砂糖の特徴。徐々に減らせる人もいれば、いっそ完全に断ったほうがラクな人もいる。いずれにしても、砂糖を控える際は「栄養価が高く、甘みを満たしてくれる自然食品に置き換えることが鍵です」とスティーブンソンは語る。「果物や根菜など、自然な甘みを持つ食材を取り入れれば、満足感を得ながら食物繊維やたんぱく質も補えます。これらは満腹感を高め、空腹を抑える働きもあるため、砂糖の摂取量を減らしたいときに有効です」

ロスはさらに、ビタミンB群の摂取も勧めている。「葉野菜や全粒穀物、卵、栄養酵母などに含まれているので、毎日の食事に取り入れてください。エネルギー代謝をサポートするビタミンB群のサプリメントを加えるのもおすすめです」

血糖コントロールに良い影響をもたらすミネラルとしては、クロムやベルベリンが注目されている。どちらも含む〈Artah〉の「メタボリック・フィックス」は、日常に取り入れやすいサポートアイテムだ。「当社の“メタボリック・リセット”のように、ガイドラインやレシピがそろったプログラムを活用することで、砂糖からの“デトックス”がしやすくなります」とスティーブンソンは提案する。

なお、砂糖を断ち始めた直後は、頭痛やイライラ、不安といった“離脱症状”が現れることもある。その期間はしっかりと水分補給を行い、軽い運動を取り入れてエンドルフィン(幸せホルモン)を活性化させることがポイントだ。

精製された糖の摂取量を減らすことで血糖値が安定し、甘いものへの渇望や“エネルギー切れ”を感じる瞬間が自然と減っていく。時間の経過とともに、砂糖を欲する気持ちは薄れていき、無理なく“甘い習慣”を手放せるようになるはずだ。

甘いものとの“新しい関係”を始めよう

ケーキやスイーツを完全にやめる必要はない。ただ、今の食べ方や調理の仕方を少し見直すタイミングが来ているというだけ。リアン・スティーブンソンはこうアドバイスする。「パンやシリアル、スナックバー、いわゆる“間食系”の食品には、特に注意を払ってください」と前置きしつつ、「でも基本的には、自炊をすることで食べるものを自分でコントロールできるようになります。素材そのものを使った手作りの料理にシフトすることが、砂糖との健全な関係の第一歩になります」と続ける。

ヘルシーで“本当においしい”デザートも、意外と簡単に家で作れる。たとえばスティーブンソンが紹介している「チョコムースケーキ」のレシピは、目から鱗の一品だ。「ローカカオやアボカド、デーツなどの自然素材で、驚くほどおいしいスイーツが作れます。定番のケーキだって、食物繊維やたんぱく質を加え、砂糖の量を抑えることで、よりヘルシーなレシピに変えられるんです」と彼女は語る。

ロスも、手作りまたは低糖のフルーツソルベや、シナモンで煮た洋梨に無糖のバニラココナッツヨーグルトを添えたもの、ナッツベースのスライス菓子などを“罪悪感のない甘味”としてすすめている。

もし外食でデザートを楽しむ場合は、「血糖値の急上昇を避けるため、まず最初に野菜と良質なたんぱく質を摂ることを意識してください」とスティーブンソンは助言する。さらに、食後に軽いウォーキングをすることで、血糖値の上昇を抑えられることも研究で明らかになっている。

どれだけ甘いものが好きな人でも、少し意識を変えるだけで、砂糖との関係はきっと変えられる。そしてその変化は、心にも体にも、きっとポジティブな影響をもたらすはず。砂糖の過剰摂取から解放された先には、トマトやメロンのような自然な甘みに、思わず笑顔になる瞬間が待っている。忘れかけていた“本当の美味しさ”が、また日常に戻ってくる。

FROM VOGUE.UK

Text: Hannah Coates Editor: Makiko Yoshida

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