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日本初公開も―古代ローマの息吹を感じる「世界遺産 ポンペイの壁画展」が開催中

  • 2016.5.15
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年間200万人もの観光客が訪れるというイタリアのポンペイ遺跡。そのポンペイと隣町エルコラーノから発見された、古代ローマ時代の壁画が六本木ヒルズにやってきました。 壁画のみに焦点を絞り、日本初公開のものはもちろん世界でもこれほどまでに一堂に介すことはないと言われる今回の展覧会「日伊国交樹立150周年記念 世界遺産 ポンペイの壁画展」。 さっそく見どころをチェックしていきましょう。

印象的な赤色が美しい壁画です

ポンペイは今から2000年近く前に、ベスビオ山の爆発によって埋没した町です。約5mもの火山礫で覆われたポンペイは、そのまま荒らされることなく18世紀に再発見されるまで、当時の面影をそのままに保存されてきました。

そのため壁画は色鮮やかなまま。緻密かつ精巧で豊かな色彩の表現力からは、当時の文化レベルの高さを感じることができます。 今回の展覧会は4つの章で構成されていて、その序章を飾るのが《赤い建築を描いた壁面装飾》です。鮮やかな赤色は“ポンペイの赤”と呼ばれる独特なもので、遠近法を駆使した画面は立体感にあふれ、まるでだまし絵のようです。

“ポンペイの赤”のおおもとはこちらです

ポンペイの赤に代表される、数々の鮮やかな顔料。その顔料も展示され、間近で見ることができます。

赤色顔料はさまざまな方法で作られたようで、黄土(ルブリカ)を熱したり、天然鉱物や天然由来の有機生成物から作られたと推測されています。

現代のようにペンキなどがなかった時代に多くの壁画を描いていく作業は、どれほど手間と労力がかかったのでしょうか。

失われた絵柄の数々

展示されている壁画は、発掘された分のみなので、かなり抜けが多く、一見するとボロボロの壁が貼り付いているように見えます。

失われた絵柄に何が描かれていたのか思いを馳せつつ、近寄ってじっくり眺めてみましょう。紋章や古代ローマで流行ったモチーフなどが顔をのぞかせていたりしますよ。

ちなみにポンペイの壁画の多くはギリシャ神話がモチーフになっており、さらにそこに古代ローマの皇帝なども象徴として加わるため、今回の展覧会はとくに音声ガイドを借りることをおすすめします。

ガイドを聞きながらまわると、予備知識がなくても楽しめるのに加え、剥がれ落ちている壁画の絵柄がない部分にまで想像を膨らますことができますよ。

古代ローマの一部屋が再現されています

壁画を見るとき、どうしても一面だけを見がちですが、そもそも古代ローマでは部屋の中に壁画がありました。その“部屋全体の構成を楽しむ”ことができるのが《カルミアーノの農園別荘、トリクリニウム》です。

展示エリアは3面で構成され、それぞれ神話をモチーフにした絵が描かれています。描かれているのはディオニュソスというお酒の神様に関連したもの。

つまりこの壁画があった場所はブドウ酒を作っていた、そして宴会をするための食堂であったことがわかります。また、東壁と西壁の絵が対となっていることから、壁画は部屋全体の構成を考えて配置されていました。

それに気づけるのは、今回のような「壁面を一斉に見渡すことができる」という展示方法だからこそ。観覧者にやさしい新しい試みです。

この空間の中央にたたずんで、古代ローマ人たちが美しい壁画を眺めながらブドウ酒を飲んで盛り上がっている様子を想像してみるのもまた一興です。

緻密な小鳥の壁画

こちらの小鳥の絵は、庭園を描いた壁画の一部。「庭園画」というジャンルがあり、紀元前1世紀末からローマで流行ったものだそう。動植物は本物に忠実に描かれており、それは図鑑のような役割もあったのではないかと考えられています。

フォトコーナーでちょっと休憩

順路の途中には写真が撮れるコーナーもあり、ポンペイに行ったかのようなカットも押さえることができます。

ベスビオ山の噴火状況がわかる立体動画もあるので、それを眺めるのも面白いですよ。

精巧で巨大な連作に感動

今回の展覧会の最大の目玉とも言えるのがエルコラーノのアウグステウムから出土した壁画です。エルコラーノというのはポンペイの隣町の名前で、ベスビオ山が噴火したときに20mを越える土石流の下に埋まりました。

アウグステウムというのは皇帝を讃えるための公共建築であったとみなされており、そこにあった壁画ということは、腕のいい職人に描かせたことが推測できます。

絵柄は迫力あるタッチで、ギリシャ彫刻のような肉体美が表現され、色使いや構図も美しく、他の壁画とは一線を画したレベルの高さがうかがえます。

3つの壁画は、中央が《赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス》=乳児期、左が《テセウスのミノタウロス退治》=少年期、右が《ケイロンによるアキレウスの教育》=青年期、をそれぞれ表していると言われ、若者の教育の場であったのではないか、とも解釈されています。

とくに中央の《赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス》は日本初公開であるのはもとより、海を渡って初めて持ち出された作品です。

イタリア国外に出ること自体が、これまでの歴史上2度目ということで、とても貴重な作品を目に焼き付けて帰りましょう。

最後はオリジナルグッズをチェック

途中で見かけた小鳥の壁画は展覧会のグッズとなって販売されています。こちらはお茶専門店ルピシアとコラボしたお茶「ORZO(オルヅォ)」です。

古代ローマ時代にも利用されていた古代種の大麦を低温で長時間焙煎したもので、今もイタリアのバールで飲まれているものです。スペシャルパッケージなのでおみやげとしておすすめです。

ほかにも壁画をあしらったノートやクリアファイル、さらにはポンペイの地図を施したマグカップまであります。展示を見たあとはおみやげもチェックしてくださいね。 ポンペイ自体にはなかなか行けないけれど、古代ローマの雰囲気を手軽に感じてみたいという方は、足を運んでみませんか?

2000年前の文化レベルの高さと、今もなお鮮やかな壁画の美しさにきっと驚くはずです。

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