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ブライダルルックは、母から受け継いだイッセイ ミヤケのカスタムツーピース。世界にひとつしかない1着と再会するまで

  • 2025.8.12

「もし高校時代に、『あなたたちは結婚する』というお告げを受けていたら、ふたりとも本当に驚いたと思います」とアートアドバイザーのニケユ・キャラウェイは言う。彼女と夫のジェームズ・オーガスティンは、ニューヨーク州北部にある全寮制高校に通っていたときに出会い、親しくなった。しかし、当時ニケユにはほかに付き合っている人がいたため、ジェームズは恋愛対象ではなかったという。月日は流れて、コロナが収束したころにふたりは再会。都会と地方の二拠点生活を送っている、家族がアートやクリエイティブな分野に携わっているといった共通点をきっかけに意気投合した。不動産関係の仕事に就いているジェームズと、「友人としてではなく、恋人という違った形で関係を築くことは、なんだか面白かったです。でも、とてもうまくいきました」とニケユは話す。

プロポーズは、愛犬のマギーとベアーを連れて、ハンプトンズの夕暮れのビーチを散歩していたときに受けた。その前から、ジェームズがプロポーズを計画していることを察していたというニケユは、散歩の間中、今か今かとその瞬間を待っていた。「ひざまずいて、プロポーズしてくれました。そしたらイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルのマギーが大暴れして。マギーはちょっとクレイジーなところがあって、あのときもとにかく走り回って、海に入って、濡れて騒いでいました。ふたりとも犬が大好きなので、マギーの姿を見て終始笑っていた気がするんですけれど、それがまた、とてもいい演出になってよかったです」と彼女は振り返る。婚約指輪は、代々受け継がれてきたグラフ(GRAFF)のエンゲージメントリング。ダイヤモンドがゴールドにセットされたそれは、ニケユが結婚式で身につける“サムシング・オールド(何か古いもの)”のもののひとつとなった。

失われたと思われていた、母のブライダルルックとの運命的な再会

ブライダルルックを見つけるのは、気が遠くなるような作業だったとニケユは明かす。「正直なところ、自分の好みではないスタイルのドレスも、とにかく手当たり次第試着している感じでした」。そう語る彼女は、モニーク・ルイリエ(MONIQUE LHUILLIER)のブティックで、ようやく自分に合った1着を見つけられた。「ほかの人がモニークのデザインを着ているのを見て、ずっと良いなと思っていたんです。なのでお店に行ったとき、ここで運命のドレスを見つけられると思いました」。州北部に住む親戚の裏庭でガーデンウエディングを挙げる予定だったため、会場にも合うバラの模様がプリントされた、バブルヘムの1枚をニケユは選んだ。

しかし、計画が変わり、ふたりは会場をニケユの父親が住む近くにあるゴルフコース、The Bridgeに変更。それに伴い、式の雰囲気も最初に思い描いていたものとは一変し、ドレスも新たに選び直す必要があった。そこで彼女は、当初決めたバラのプリントをクラシックなホワイトのものに替え、デザイン全体にモダンなテイストを加えることにした。「バスト部分のネックラインをスウィートハートに、スカートをマルチウェイに、袖をキャップスリーブにしてカスタマイズしました」

ウエディングドレス以外のルックを、ニケユは自身の日本のルーツにオマージュを捧げるものにしたかった。「最初に思い浮かんだのが、イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)です。私にとって彼は単なるデザイナーではなく、実は私の両親が出会ったきっかけでした」と彼女は言う。「父が彼をアーヴィング・ペンに紹介し、それがふたりの長年にわたるコラボレーションと友情につながったんです。イッセイは私たち家族とずっと親しくしていて、彼にちなんで名づけられた弟のゴッドファーザー(名づけ親)でもあります」

ニケユの母のために、三宅はブライダルルックとしてカスタムのツーピースセットを制作していた。家族は皆、この1着をとうの昔に無くしてしまったものだと思っていたが、実家の物置きをあさっているときに、ニケユは偶然見つけた。両親はすでに別れてしまっているが、このルックは依然として、彼女に特別な意味を持つ。「自分が一番必要としていたタイミングで見つけることができて、運命的なものを感じました」。セットアップにはハイポニーテールと義母から贈られたガブリエラ・キス(GABRIELLA KISS)のトンボのイヤリングを合わせ、Bridgehampton Innで行われたリハーサルディナーと、その夜にThe Watermill Centerで開かれたウェルカムパーティーで着用した。「ガブリエラは家族ぐるみの友人で、息子たちも私たちの学校に通っていた素晴らしいジュエリー職人です」と付け加えた。

その後、ニケユは母親が日本から持ってきた着物に着替えた。「ほとんどの人は、伝統的な着物が、これほどまでに何層にもなっている、複雑な構造のものだということを知らないと思います。ふたりのメイド・オブ・オナーに着付けを体験してもらいたかったので、母を手伝ってもらいました。カオスで、自分のパーティーに遅刻してしまったんですけれど、ウエディング全体を通して、一番思い出に残る出来事のひとつでした」と冗談めかして語った。

「選んだルックはすべて、何かしらのレガシーがあるもの」

挙式では、カスタムのモニーク・ルイリエのドレスを纏った。当日はあいにくの嵐。強風のせいで、どこか物々しくなってしまったが、それでもとても特別なセレモニーになったとニケユは言う。「風が吹き荒れ、雨が降り、霧が立ち込める夕日の中、誓いの言葉を読むことになって。いろいろな感情が渦巻くシーンだったんですけれど、マルチウェイのスカートのおかげで、あまり濡れることはなく、変な心配をすることはありませんでした。そこはよかったです」

ニケユは当初、マックイーン(McQUEEN)のピンクのガウンを披露宴で着るつもりだったが、「式も披露宴も楽しみすぎて、着替えるタイミングを逃した」ため、二次会までウエディングドレスで過ごした。そして二次会では、サイモン ミラー(SIMON MILLER)が手がけた、スパンコールが輝くロングスリーブドレスを着用。「ミラーボールになった気分でした」

「選んだルックはすべて、個人的に思い入れがあるもので、何かしらのレガシーがあるものでした」と、ニケユは自身が纏ったブライダルルックの数々を振り返る。「私の家族の歴史だけでなく、私たちが共有する物語、そして今の私たちを形作ってくれた人たちや文化に敬意を表したものでした」

Text: Shelby Wax Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.COM

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