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米ポートランドの新ホテル、CASCADAになぜ国内外の旅好きが押し寄せるのか

  • 2025.8.10
ノース・イーストのアルバータ・アート地区にあるCASCADA。アートギャラリーやセンスのいいショップ、レストラン、カフェなどが集まるエリアだ。Photo_ ©Jeremy Bitterman
ノース・イーストのアルバータ・アート地区にあるCASCADA。アートギャラリーやセンスのいいショップ、レストラン、カフェなどが集まるエリアだ。Photo: ©Jeremy Bitterman

コンパクトな街づくりで知られる米・オレゴン州の街、ポートランド。住宅地から徒歩で移動できる範囲に、郵便局やスーパーマーケットなど日常生活に必要なあらゆる機能に20分以内にアクセスができるように各地域が整備されている。そんな市街地に昨年末に突如現れたホテル「CASCADA(カスカーダ)」。ラグジュアリーホテルのほとんどは街の中心(ダウンタウン)にあるなか、住宅街が隣接している場所にオープンしただけでも事件なのだが、国内外の高感度な人たちがこぞって押し寄せているのだ。

人気の理由のひとつは、ポートランド初の本格的な温泉&スパ施設がホテル内にあること。アウトドアスポーツやアクティビティが盛んでありながら、ウェルネスに特化したホテルがなかったポートランドとあって、地元のユーザーも多いのが特徴だ。

地下のスパ&温泉エリア「サンクチュアリ」。正面にあるのが「ミネラルプール」。静かな滝のような温水が壁を伝って天井から落ちてくるので、壁に背筋を伸ばして座るとリラックスできる。
地下のスパ&温泉エリア「サンクチュアリ」。正面にあるのが「ミネラルプール」。静かな滝のような温水が壁を伝って天井から落ちてくるので、壁に背筋を伸ばして座るとリラックスできる。

3フロアある施設内の設備は、「デトックス」「スキンヘルス」「エンドルフィン(多幸感をもたらす)」など、健康効果を考慮した構成となっている。地下は「サンクチュアリ」と呼ばれる温泉とスパのエリアで、暗めの照明に設定されており、瞑想や呼吸法、リラックスすることを促すため、ここでは会話はご法度。3種類の温度の異なる温泉(30℃、37℃、40℃)と冷水プール(10℃)、ドライサウナとスチームサウナがあり、温泉のひとつ「ミネラルプール」にはマグネシウムやミネラル分が配合され、天井から壁を伝って温泉の湯がおりてくるので、壁に背をつけると気持ちがいい。サウナ後に体を急激に冷やしたり、氷でマッサージするためにアイスファウンテン(氷の山)も完備。温泉は紫外線ライトを含む浄水システムを使用しているため、塩素臭をほとんど感じないの特筆すべき点だ。

温水プールのある「コンサバトリー」と呼ばれるエリア。トロピカルな植物が中心の平面緑化をはじめ、グリーンの植物があふれる気持ちのいい空間。
温水プールのある「コンサバトリー」と呼ばれるエリア。トロピカルな植物が中心の平面緑化をはじめ、グリーンの植物があふれる気持ちのいい空間。

1Fは「コンサバトリー(温室)」と呼ばれる温水プールのフロアがあり、室内は常時28℃に設定。壁には熱帯地域原産のマグノリアや、エアプランツ、モンステラなど何百もの植物が生い茂っていて、まるでリゾート地に来たかのよう(ここでは会話はOK)。7月には中庭に「シークレットガーデン」と称したドライサウナと露天温泉、冷水シャワーの遊歩道、焚火台を囲んで外気浴のできるスペースもオープン。ちなみに水着オーガニックコットンのローブ、サウナハットなどシンプルで質の高いオリジナルウェアが2Fのブティックで販売しており、要チェックだ。

7月にオープンしたばかりの「シークレットガーデン」のサウナ。住宅街が隣接しているせいか静かでのどかな雰囲気。スムージーやサラダなどウェルネスを意識したメニューが充実した朝食&ブランチカフェが併設。
7月にオープンしたばかりの「シークレットガーデン」のサウナ。住宅街が隣接しているせいか静かでのどかな雰囲気。スムージーやサラダなどウェルネスを意識したメニューが充実した朝食&ブランチカフェが併設。

また、メインダイニング「Terra Mae(テッラマエ)」も話題だ。世界的に各国の食文化をミックスさせたハイブリッドな料理がトレンドだが、こちらはポルトガルと日本料理の融合がコンセプト。ポルトガル系とメキシコ系の血筋をもつミーガン・スカイシェフと、ハワイ育ちのジュールズ・ボイドシェフのふたりの豊富な経験とインスピレーションから生まれる料理は極めてユニークで、オリジナリティにあふれている。

「Terra Mae」とはポルトガル語で「母なる大地」。奥にある絵は地元のアーティスト、ブレイン・フォンタナの“母”をイメージした描きおろし。
「Terra Mae」とはポルトガル語で「母なる大地」。奥にある絵は地元のアーティスト、ブレイン・フォンタナの“母”をイメージした描きおろし。

例えば大人気の「ワサビサラダ」は、シャキシャキ食感の豆のツルとエディブルフラワー、クリスピーな揚げ玉を散らしたワサビクリームドレッシングのサラダ。「ブリのスパイスクルード」は、鮮度抜群のブリの刺身を甘めの味噌クリームソースとりんごのサルサ、アーモンド、ケイパーとポルトガルの唐辛子と和えた、フルーティかつリッチな一皿。海と山の両方があるオレゴン州ならではの豊かな食材と、組み合わせの妙が光る新感覚な料理の数々が堪能できる。

「ワサビサラダ」14ドル。豆のつるはおかひじきにも似たシャキシャキした食感で、揚げ玉とのコントラストが楽しい。
「ワサビサラダ」14ドル。豆のつるはおかひじきにも似たシャキシャキした食感で、揚げ玉とのコントラストが楽しい。
パッションフルーツとオレンジリキュール、ジン、屋上で栽培されたエディブルフラワーのフルーティなカクテル16ドル。
パッションフルーツとオレンジリキュール、ジン、屋上で栽培されたエディブルフラワーのフルーティなカクテル16ドル。
大西洋でとれたクロマグロの赤身のタルタル(26ドル)。キャビアとトリュフ、しょうゆとオリーブオイルのソースで。
大西洋でとれたクロマグロの赤身のタルタル(26ドル)。キャビアとトリュフ、しょうゆとオリーブオイルのソースで。

また、ポートランドはジンやウイスキーの蒸留所が多く、レストランで提供するカクテルのレベルが高いことでも有名で、ここも例外ではない。オレゴン産のワインクラフトビールの品揃えも充実しており、軽く飲みに立ち寄れるカジュアルさが地元のひとたちにも支持されている。ちなみに、ホテル内の1Fのラウンジにはコーヒースタンド(コーヒータウンらしい高クオリティ)と自家製サンドイッチやシャルキュトリー、チーズなどをおいたデリが併設されており、こちらも人気だ。

そして、「サステナブル・ラグジュアリー」をコンセプトに掲げた、持続可能を追求した設計デザインも注目だ。国際的なサステナビリティの最高ランクであるLEEDプラチナ認証を取得しており、その徹底ぶりは本物。建物部分には地元の木材を利用した最先端のマスティンバー(複数の木材を組み合わせて作られ、炭素貯蔵効果が期待できる)と低炭素コンクリート(製造時のCO2排出量を抑える)を使用。さらに雨水の再利用、気密性の高い三重構造の窓、ソーラーパネル、最先端の水冷式熱交換システム、全館自動省エネ制御システムなど持続可能な設計要素が組み合わさり、一般的なホテルと比較してエネルギー消費量を約60%削減している。

「Studio Room」タイプのゲストルーム。ベッドの壁のレザーのように見えるヘッドボードもコルク製。
「Studio Room」タイプのゲストルーム。ベッドの壁のレザーのように見えるヘッドボードもコルク製。

シンプルモダンな部屋のインテリアは石油由来の商品と動物の皮の使用を完全に排除し、自然由来の材料でベッドやソファなど職人と共に独自に開発したというからすごい。例えば、ポルトガル製コルクを原材料にした布を張ったソファは触感が皮にそっくりだ。加えて、人間の体内時計に配慮したサーカディアン照明を採用しており、照明の色温度や明るさを調整し、自然光に近い光環境を人工的に再現。これにより、生体リズムを整えたり、睡眠の質を高めたり、集中力や生産性を向上させるなどの効果が期待できる。そして全室、キッチンと洗濯乾燥機付きなのも長期滞在者にはありがたいポイントだ。

「ウェルネス」や「サステナビリティ」を掲げるラグジュアリーホテルが何百もオープンしているなか、トラベル+レジャー誌の2025年ITリスト(世界のベスト100新規ホテルを厳選したリスト)に選ばれたことからも、そのスペシャル感は唯一無二。なによりも「CASCADA」が観光客のみならず、地域の人たちにも愛されるホテルづくりに情熱を注いでいることに好感が持てる。秋には地元のアーティストの作品も扱うギャラリーをオープン。地域と密接なホテルだからこそ、ポートランダーになったつもりで滞在してみたい。

CASCADA

1150 NE Alberta St. Portland Oregon 97211, United States

Tel./+81-503-227-2232

料金/1人1泊458ドル~(3食付)※2025年5月現在Studio Room1泊299 ドル~(税別)。スパ&温泉施設利用には50ドル必要(宿泊客以外は100ドル)。

https://cascada.me/

Text: Yumiko Takayama

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