1. トップ
  2. 30年前、日本中が笑顔になった“皮肉なお礼ポップソング” 50万枚超えで1位を記録した“都会的メロディ”

30年前、日本中が笑顔になった“皮肉なお礼ポップソング” 50万枚超えで1位を記録した“都会的メロディ”

  • 2025.9.11

「30年前、どんな感謝の歌が流れていたか覚えてる?」

1995年。街にはまだCDショップの試聴機の前に行列ができ、オリコンチャートをチェックすることが日常だった。放課後のカラオケボックスでは誰かが必ず最新シングルを選曲していた。そんな日常の中に、誰もが一度は口ずさんだ優しいメロディがあった。

SMAP『KANSHAして』(作詞:戸沢暢美・作曲:林田健司)——1995年3月3日発売

若さと爽快さが重なったメロディ

『KANSHAして』は、SMAPにとって16枚目のシングル。元は林田健司のアルバム『RAPHLES V』(1994年)に収録された楽曲で、それをSMAPがカバーした形だが、林田いわくもともとSMAPをイメージして制作したものだったそう。

当時のSMAPは、テレビ番組やドラマでも存在感を高めつつあり、「国民的グループ」としての道を着実に歩み始めていた時期。そんなタイミングで届けられた『KANSHAして』は、グループの等身大の魅力と未来への可能性を重ねるような位置づけでもあった。

伸びやかで明るいメロディは、SMAPの若さと爽快さを引き立て、軽やかに未来へ進むイメージを描き出していた。歌声が重なる瞬間には、グループならではの一体感があり、聴く人の心を自然に軽くしてくれた。

undefined
作曲した林田健司-1998年撮影 (C)SANKEI

シニカルを笑顔に変える魔法

『KANSHAして』の魅力の核心は、恋愛や人間関係に潜むリアルなやり取りを、ポップに昇華している点にある。歌詞には「セクハラ上司を笑顔でかわし」といった社会的なニュアンスや、「いい男になって」「甘やかされないで」といった言葉が並ぶ。だがその一方で、「ほんとうは愛したいだけ」と素直な気持ちも覗かせる。

つまりこの曲は、不満や駆け引きを抱えながらも、「感謝して」と繰り返すことで、シニカルな視点をポジティブに着地させる構造を持っている。ユーモラスに描きながらも、聞き終えた後には前向きな余韻が残るのだ。

“輝きを増した歩みの証”

この曲はランキングで初登場1位を獲得。最終的に50万枚を超えるセールスを達成した。SMAPのキャリアにおいて、この時期は人気が全国区へと一層広がっていく重要なフェーズ。テレビ番組を通じて“親しみやすさ”を確立しつつ、音楽シーンでは確かな実績を重ねていった。その二つが交差する地点にあったのが、この『KANSHAして』だった。

そして『$10』や『君色思い』でタッグを組んでいた林田健司とSMAPの相性を、改めて強く印象づけた一枚だった。その後『青いイナズマ』のような大ヒットへとつながり、グループのサウンドを語る上で欠かせない流れを形づくっていく。キャッチーで親しみやすいポップから、都会的でクールな側面、さらにエネルギッシュなダンスチューンまで——林田作品はSMAPの多彩さを引き出し、その未来を確実に照らしていったのだ。

“30年後もよみがえる感謝の記憶”

1995年の春、街を歩けば誰かが口ずさんでいた『KANSHAして』。イントロが流れるだけで、当時の都会的な空気や人間模様が鮮やかに甦る。制服姿でカラオケに集まった放課後の友人たち、オフィス街で響く笑い声、流行のファッションに身を包んだ週末の街角。そのどこにも、この曲の軽快なフレーズは似合っていた。

歌詞は恋愛や仕事のリアルをユーモラスに切り取りながら、「感謝して」と繰り返す。不満や駆け引きを抱えたままでも、最後にはポジティブに転換する力がそこにはあった。だからこそ、この曲は単なるラブソングではなく、90年代半ばを象徴するライフスタイルのBGMとなったのだ。

あれから30年。スマホで音楽を聴く時代になっても、『KANSHAして』が放つ軽やかさは色褪せない。“ありがとう”という言葉に込められた少しの皮肉と、確かな肯定感。そのバランスこそが、この曲を今も特別な存在にしている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。