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ミュウミュウの特別アップサイクル企画、「Miu Miu Upcycled」がキャサリン・マーティンと特別コラボレート

  • 2025.7.18
キャサリン・マーティンの監督デビュー短編映画『Grande Envie』(25)のワンシーン。モデルは「Miu Miu Upcycled by Catherine Martin」のコレクションを着用している。ちょうど100年前、故国を離れてサントロペで享楽の日々を送っていたボヘミアンの子孫のようなムードを醸し出している。
キャサリン・マーティンの監督デビュー短編映画『Grande Envie』(25)のワンシーン。モデルは「Miu Miu Upcycled by Catherine Martin」のコレクションを着用している。ちょうど100年前、故国を離れてサントロペで享楽の日々を送っていたボヘミアンの子孫のようなムードを醸し出している。

旧知の仲のミウッチャ・プラダから、ミュウミュウMIU MIU)のカプセルコレクションでのコラボレーションを打診された瞬間、キャサリン・マーティンの脳裏には、優雅かつとびきりスポーティで、時にアンドロジナスなファッションが浮かんだ─つまりは、1920年代の南仏で見かけるようなスタイルだ。

「アメリカから地中海沿岸のリビエラに移り住んだ作家のフィッツジェラルド夫妻をはじめ、多くのアーティストがこの時期、故国を去って南仏にやってきました。生活費が良心的で、過ごしやすい気候でしたし、こうした人々は欲望のおもむくままに、いろいろなことができる場所へエスケープしたい、という強い願望を抱いていたからです」

著名な衣装デザイナー兼セットデザイナーとして知られるキャサリン・マーティン。
著名な衣装デザイナー兼セットデザイナーとして知られるキャサリン・マーティン。

映画の衣装デザイナーやセットデザイナーとして多くの称賛を集めるマーティンは、数十年にわたり、既存のルールに縛られない姿勢を貫いてきた。4度のアカデミー賞、6度のBAFTA賞(英国アカデミー賞)に加え、トニー賞も1度獲得と、その実績も折り紙つきだ。また、以前にも『ロミオ+ジュリエット』(96)、『華麗なるギャツビー』(13)、『エルヴィス』(22)の衣装で、ミウッチャ・プラダと組んだ経験もある。これはいずれも、彼女の夫で映画監督のバズ・ラーマンがメガホンを取った作品だ(マーティンは今も、製作中のジャンヌ・ダルクを描く映画で、彼と組んでいる)。

『ロミオ+ジュリエット』(96)。レオナルド・ディカプリオのスーツはプラダのもの。
ROMEO AND JULIET, Leonardo Di Caprio, Claire Danes, 1996, TM & Copyright (c) 20th Century Fox Film C『ロミオ+ジュリエット』(96)。レオナルド・ディカプリオのスーツはプラダのもの。
『華麗なるギャツビー』(13)ではミウッチャ・プラダが、マーティンと組み、多彩なプラダ、ミュウミュウの衣装を制作した。
THE GREAT GATSBY, 2013. ©Warner Bros. Pictures/courtesy Everett Collection『華麗なるギャツビー』(13)ではミウッチャ・プラダが、マーティンと組み、多彩なプラダ、ミュウミュウの衣装を制作した。
『エルヴィス』(22)でもコラボレーションが実現。こちらでもマーティンとミウッチャ・プラダが共同で映画『エルヴィス』の衣装制作を手掛け、衣装をデザインするとともにアーカイブの服を再解釈した。<br />
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ミウッチャ・プラダからオファーを受けたマーティンは、「Miu Miu Upcycled」のアイデアに、たちまち魅了された。これは2020年に立ち上げられたスペシャルコレクションシリーズで、これまでにもヴィンテージドレスのリメイクや、リーバイスとのコラボレーション、デニムや端材をパッチワークにしたバッグなどを実現させてきた。

華やかなデザインが目を引きがちな「Miu Miu Upcycled」だが、その根幹には、循環消費のサイクルを回すという、堅い意志がある。加えて、若者たちにこよなく愛されているミュウミュウというブランドが、かれらにとって切実な環境問題にコミットする意志を示すのは、完璧に理にかなった行動と言えるだろう。そもそも、「グラマラスなものは、資源の浪費なくして成り立たない」なんて、いったい誰が決めたのだろうか?

このプロジェクト自体は過激なまでに未来志向だが、マーティンがインスピレーションを求めたのは、過去のファッションの姿だった。彼女のもとには、世界中のヴィンテージマーケットから持ち込まれ、アップサイクルしたジャージーやデニム、さらにはかつて女性たちに愛用されていたランジェリーからレスキューした、繊細なレースなどが集まった。これらの素材が彼女の手にかかると、英国、ケンブリッジを流れるケム川の川下りで着るのにぴったりに思える、ボート競技のユニフォームのようなブレザーから、映画『ベニスに死す』(71)で主人公を夢中にする美少年、タッジオにあつらえむきのセーラーカラーのジャケットまで、どこかノスタルジックなアイテムに生まれ変わった。

キャサリン・マーティンの監督デビュー短編映画『Grande Envie』(25)より。
キャサリン・マーティンの監督デビュー短編映画『Grande Envie』(25)より。

映画の衣装の仕事であれば、好きなだけ多様な素材を使うことができるが、今回のコレクションでは、アップサイクルという性質上、使える素材は限られていた。それでも、この制約から来る挑戦を、マーティンは喜んで受け入れた。

加えて、コレクションの製作過程では、素敵なサプライズが次々に起きた。素材として採用されたカシミアもその一例だ。マーティンによれば、これは驚きの新技術によって、アップサイクルが可能になったのだという。「もともとの糸をいったんほぐしてから紡ぎ直したり、綿毛のような繊維のかたまりを使ったりして……もう使われなくなったものが、見事に新しい衣服としてよみがえりました」。マーティンのコレクションでは、こうして再び輝きを取り戻したカシミアが、明るいボーダー柄のジャンプスーツに生まれ変わっている。

アップサイクルされたウールとカシミアのジャンプスーツ ¥473,000(予定価格/店舗限定)/MIU MIU(ミュウミュウ クライアントサービス)
アップサイクルされたウールとカシミアのジャンプスーツ ¥473,000(予定価格/店舗限定)/MIU MIU(ミュウミュウ クライアントサービス)

ショートフィルムの製作にあたり、彼女が真っ先に着手したのは登場人物たちのキャラクター設定だった。「登場人物について、短い段落3つ分の設定を書いて、彼らに住む世界を与えたんです。ストーリーボードを作り、ミュウミュウに送ったのはそのあとですね」

デイジー・リドリー、エリオット・サムナー、ウィレム・デフォー(写真上)など、マーティンの夢のような作品に登場する登場人物たち。
デイジー・リドリー、エリオット・サムナー、ウィレム・デフォー(写真上)など、マーティンの夢のような作品に登場する登場人物たち。

この初期段階で作られたストーリーボードで設定をしっかりと定められた想像上の人物たちは、マーティンが創り上げたショートフィルムの中で生き生きと躍動し、今回のカプセルコレクションのコンセプトを表現している(実はこれは、マーティンが手がける初めての映像作品だった)。登場するキャストはみな、ちょうど100年前、故国を離れてサントロペで享楽の日々を送っていたボヘミアンの子孫のようなムードを放っている。夢のような世界を描いたこのショートフィルムには、デイジー・リドリー、エリオット・サムナー、ウィレム・デフォーなどが出演し、薄手のドレスや挑発的なブラレットなどをまとった、美しい過去を体現するキャストが次から次へと登場する。

ショートフィルムに登場する、現代によみがえった放蕩者たちと、100年前のスタイリッシュなボヘミアンは、自由を求める強い気持ちでつながっている。自身がインスピレーションを求めた、100年前のつかの間の幸福な時代について、マーティンはこう語る。

映像作品を制作中のマーティン。繊細なレースのルックを手に取っている。
映像作品を制作中のマーティン。繊細なレースのルックを手に取っている。

「ちょうど私たちが知る現代社会が生まれた時期ですよね。それまでは何もかもが隠されていましたが、この時代になると、解放された女性たちは、下着だったものをアウターとして着るようになりました。コルセットからの解放というコンセプトが生まれ、さらに非常にボディコンシャスな、バイアスカットのドレスが世に出ました。女性たちはもはや、自分の体のラインを露わにすることを恥じなくなったのです」

今回のコラボレーションがローンチされれば、誰もがこの夏はこのコレクションのひとつである薄手のスリップドレスをまとい、誇らしい気持ちで街を歩くことができるはずだ。実はこのドレスは、イタリアンシルクのシーツをリメイクしたものだ。

ドレス ¥737,000(予定価格/店舗限定)/MIU MIU(ミュウミュウ クライアントサービス)
ドレス ¥737,000(予定価格/店舗限定)/MIU MIU(ミュウミュウ クライアントサービス)

シルク生地にヴィンテージレースをふんだんにあしらうことで丈を伸ばし、さらにトップにTシャツを縫い付けてドレスに仕立てていて、その発想の意外さには驚かされる─それに、今回のコンセプトを考えれば、お気に入りの服の布地が、ところどころすり切れていたとしても、地中海のラ・プラージュ・ド・ラ・ガループの砂浜でつま先立ちで踊るゼルダ・フィッツジェラルドが、そんなことを気にしただろうか?とも思えてくるのだ。

「私たちはまず、コンディションの良好なパーツをピックアップし、そこにさまざまな素材を加えて、デイリーに着られるけれど、特別感のあるものにしました」と語るマーティン。さらに、こうしたプロセスから生まれたアイテムは、遊び心にあふれているが、それだけにとどまらないと打ち明けてくれた。「どれもみな、既存の価値観を打ち砕くものなのです。そういう発想が、私はとても気に入っています」

お問い合わせ先/ミュウミュウ クライアントサービス 0120-45-1993

Photos: Hugh Stewart (Portrait), THE GREAT GATSBY, 2013. ©Warner Bros. Pictures / courtesy Everett Collection, ROMEO AND JULIET, 1996, TM & Copyright © 20th Century Fox Film Corp. All rights reserved, ELVIS, 2022. © Warner Bros. / courtesy Everett Collection, Courtesy of Miu Miu (Products) Director of Photography: Mandy Walker Director: Catherine Martin Translation: Tomoko Nagasawa

Text: Lynn Yaefger Adaptation: Yui Sugiyama

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