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軽井沢──静寂と洗練を求める旅人のサンクチュアリ

  • 2025.7.16

【万平ホテル】生まれ変わった軽井沢のシンボルの新しい楽しみ方

2018年に登録有形文化財指定されたアルプス館(1936年築)。
2018年に登録有形文化財指定されたアルプス館(1936年築)。

1894年創業の万平ホテルは、かつては室生犀星や堀辰雄、三島由紀夫、そして70年代の最後には、毎年夏を日本で過ごしていたジョン・レノンファミリーが頻繁に滞在した、軽井沢を象徴する歴史あるホテル。ジブリ映画「風立ちぬ」の舞台、草軽ホテルのモデルとも言われている。昨年初の大規模リニューアルを完了し、穏やかでクラシカルな雰囲気はそのままに、宿としての快適性は大幅にアップした。

赤い屋根とハーフティンバー風の外観が軽井沢の景色によくなじむ本館「アルプス館」に入ると、重厚な木造建築のロビーと深紅の絨毯がゲストを出迎える。リニューアル前の趣を忠実に再現した空間になじみの客は「戻ってきた」と実感するのだ。全12室の客室は、伝統工芸の軽井沢彫家具など、特徴的な和洋折衷のデザインを踏襲し、万平ホテルらしさを存分に感じることができる。

メインダイニングルームの中庭に面した席は、明るい光に満ちた特等席。豊かな自然を眺めながらランチがいただける。
メインダイニングルームの中庭に面した席は、明るい光に満ちた特等席。豊かな自然を眺めながらランチがいただける。

リニューアルを機に建て替えた新築棟「愛宕館」は、繊細な組子格子に西洋家具を合わせるなど、クラシックな面影を残しながら、新たな和洋折衷を提案。特筆すべきは南軽井沢・塩沢温泉から運び入れた温泉を全30室で楽しめることだ。2001年に増築された新館「碓氷館」も同時にリニューアルし、意匠の異なる4タイプの部屋が揃った。

名物カクテル「霧の軽井沢」や「軽井沢の夕焼け」をオーセンティックなバーで。
名物カクテル「霧の軽井沢」や「軽井沢の夕焼け」をオーセンティックなバーで。

万平ホテルと言えば、メインダイニングでフレンチというのがお決まりのコースだろう。そのメインダイニングルームも改装され、象徴的なステンドグラスと折り上げ格天井を維持しながら、より開放的なレストランに進化した。大人気のカフェテラスも改装を終えて100席以上に拡張。ジョン・レノンが愛したアップルパイとロイヤルミルクティーも大切に受け継がれてる。

そんな万平ホテルの王道の楽しみ方に加えて、人気を呼んでいるのが、明治時代の歴史的建造物をリニューアルした離れで、期間限定でオープンしているすき焼き・鉄板レストラン「檜」だ。万平ホテルですき焼き?と思うなかれ。昭和30年代にゴルフを楽しんだ文化人たちがこのホテルに立ち寄って、すき焼きを楽しみつつ、ゴルフ談義に花を咲かせたという。そんな粋な楽しみ方が再現されて、ホテルに新たな魅力が加わった。

関東風ながら甘さを控えめにして、上質な牛肉の旨味が堪能できる「檜」のすき焼きディナー。
関東風ながら甘さを控えめにして、上質な牛肉の旨味が堪能できる「檜」のすき焼きディナー。

万平ホテル

長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢925

Tel./0267-42-1234

料金/1人1泊55,717円~(2食付)※2025年7月現在

www.mampei.co.jp/

【ししいわハウス No.3】軽井沢の自然と一体化する10棟のパビリオン

中庭を挟んで縁側や回廊でゆるやかにつながるパビリオンは、それぞれが独立した家でもあり、集合住宅のようでもある。Photo_ Kazumasa Harada
中庭を挟んで縁側や回廊でゆるやかにつながるパビリオンは、それぞれが独立した家でもあり、集合住宅のようでもある。Photo: Kazumasa Harada

日本を代表する避暑地で新たな歴史を紡ぐのが、ししいわハウスだ。中軽井沢駅から国道146号線を3kmほど北に向かった静穏な森に佇むリトリートは、3つコレクションで構成されている。2019年にオープンしたNo.1、2022年のNo.2はともに、プリツカー賞を受賞した世界的建築家の坂茂が、続くNo.3は、設計事務所SANAAの共同創設者で、同じくプリツカー賞受賞の西沢立衛が設計した。

各棟のテラスは四季折々の森林の風景を見渡すように設計。Photo_ Kenichi Suzuki
各棟のテラスは四季折々の森林の風景を見渡すように設計。Photo: Kenichi Suzuki

どのコレクションも、軽井沢の恵まれた環境を最大限生かしながら、建築、デザイン、アートを見事に調和させている。最新のNo.3は、10棟のパビリオンから成り、縁側や回廊、中庭によってゆるやかにつながりながら、プライベートな空間も確保。その開放的な構造によって、周囲の自然とも一体化している。大きな窓は森林の風景を美しく切り取るフレームとなり、各棟のテラスは中庭を見晴らすように設計されている。柱や壁、備え付けの家具から内風呂に至るまで、全館にわたって岐阜県産のヒノキが使用され、建物の耐久性に加えて、清涼感のあるナチュラルな芳香と穏やかなリラックス感をゲストにもたらしている。

1階にリビングルームとテラス、2階にベッドルームとバスルームを備える「キャビンヴィラ」。Photo_ Kazumasa Harada
1階にリビングルームとテラス、2階にベッドルームとバスルームを備える「キャビンヴィラ」。Photo: Kazumasa Harada

館内にはル・コルビジェの従兄弟にあたるピエール・ジャンヌレの「イージーチェア」やアルネ・ヤコブセンの「スワンチェア」、ミヒャエル・トーネットの「ベントウッド・スツール」など、歴史に残るモダンな名作家具が随所に配置され、有田の「1616/arita japan」のティーカップ、「Ploh」の浴衣ガウンなど、細部に至るまで美が追求されている。贅沢なヒノキ風呂が自慢の貸切浴場「バスハウス」のほかに、お茶会が楽しめるティーハウス、季節のお茶や和菓子を用意したお茶の間ラウンジなど、共用スペースも居心地がよく、自然に包まれながら安らぎのひとときを過ごすことができる。

全8室のスーペリアルーム。室内は天井から床まで、備え付けの家具もすべてヒノキ造り。Photo_ Kenichi Suzuki
全8室のスーペリアルーム。室内は天井から床まで、備え付けの家具もすべてヒノキ造り。Photo: Kenichi Suzuki

ししいわハウス No.3

長野県北佐久郡軽井沢町長倉2147-40

Tel./0267-31-6658

料金/1室1泊75,900円~ ※2025年7月現在

www.shishiiwahouse.jp/ssh03/

【ラ・メゾン軽井沢】フランス人の人生の楽しみ方を知るバケーションレンタル

オーナーが日本滞在時のみオープンするエスタミネ「Octave」を併設する。
オーナーが日本滞在時のみオープンするエスタミネ「Octave」を併設する。

上皇夫妻が出会われた場所としても知られる軽井沢会テニスコートの裏手、旧軽井沢の緑に包まれるように建つ1日1組限定の宿が、ラ・メゾン軽井沢だ。まるでヨーロッパの深い森の中の別荘で暮らすように過ごす、夢のような体験を可能にしてくれる。

オーナーのダルジャン酒井聡子は、大学卒業後、金融機関での勤めを経てフランス人と結婚。パリと軽井沢の二拠点生活を送りながら、2019年にラ・メゾン軽井沢をオープンした。幼少期から軽井沢にあった祖父母の別荘をよく訪れていたため、この土地に特別な想いを寄せる。

木立の緑が目にまぶしい庭に面したダイニングルーム。
木立の緑が目にまぶしい庭に面したダイニングルーム。

軽井沢とフランスの暮らしを知るオーナーのこだわりの宿は、どこを切り取っても美しく絵になる。彼女が実践しているのは、「アール・ド・ヴィーヴル」。豊かな食事、お気に入りのインテリア、美しいアートや音楽などに囲まれ、日常を楽しむことで人生をより深いものにするというフランス人の生活信条だ。ガラス越しに心地よい陽光が差し込む広々としたリビング&ダイニングは、モダンとぬくもりが調和する。ゆったりとしたソファーや寒い日に火を灯す暖炉、オーナー自らフランスで探したというランプや調度品がセンスよく置かれ、「暮らすように過ごしてほしい」という気持ちが伝わってくる。

広々としたリビングは、クラシックのアーティストによるサロンコンサート、有名予備校講師による学びの場「寺子屋」などの会場にもなる。
広々としたリビングは、クラシックのアーティストによるサロンコンサート、有名予備校講師による学びの場「寺子屋」などの会場にもなる。

調理器具や食器の揃ったフルセットのキッチンに加え、足を伸ばせる大きなバスタブを備えたバスルーム、肌触りのよいタオルや香りのよい「コダージュ」のバスアメニティが、ストレスフリーの優雅な滞在を実現する。

チェックインを済ませた後は、なにも縛りのない自由な時間。この自由さの価値は滞在しなければ分からないだろう。食材を買い込んでバーバキューを楽しむのもよし、もちろん出張シェフを頼んだり、ケータリングを依頼することもできる。オーナーが日本に滞在中というタイミングに恵まれたら、併設するエスタミネ「Octave ※」の食事を予約しよう。オーナーが自ら腕を振るう料理と特別にセレクトされたワインが満喫できる。

フランス人のバカンスのようにとことん自由に、そしておしゃれに過ごすことができる。また訪れたくなる、ちょっと癖になる宿だ。

ベッドリネンのセレクションひとつ取り上げてもオーナーのセンスが感じられる。
ベッドリネンのセレクションひとつ取り上げてもオーナーのセンスが感じられる。

ラ・メゾン軽井沢

長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢965-1

Tel./090-8684-3586

料金/1棟1泊123,000円〜(2名利用)※2025年7月現在

www.lamaison-karuizawa.com/

※宿泊客は事前予約で利用可、その他は完全紹介制

Text: Yuka Kumano

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