1. トップ
  2. おでかけ
  3. テーマは「Circle of Life いのちの環」。KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭に出かけよう!

テーマは「Circle of Life いのちの環」。KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭に出かけよう!

  • 2016.5.10
  • 983 views

新緑の京都の風物詩となりつつある国際的なフォト・フェスティバル「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」。第4回目となる今年は、「Circle of Life いのちの環」をテーマに15会場で14の写真展が開催されています。京都ならではの寺院や歴史的建造物などを舞台に、世界で活躍するアーティストたちの新作や貴重なコレクションに出合えるまたとないチャンス。オススメの写真展と参加アーティストの声をお届けします!

● サラ・ムーン「Time Stands Still」@招喜庵(重森三玲旧宅主屋部)

モデルから写真家に転身し、シャネルやディオールなどトップメゾンの仕事に携わってきたサラ・ムーン。ゆらぎのある幻想的な映像表現で、世界中に熱狂的なファンを持つ彼女の作品が展示されているのは、昭和を代表する作庭家・重森三玲の旧宅です。ヨーロッパ各地の風景をモノクロームで捉え、水平線をイメージして制作し、初めてプラチナプリントにトライしたというシリーズが、薄い土佐和紙に印刷され、吊るすように額装されています。格式ある空間とマッチして、いつまでも眺めていたいような展示でした。ここを訪れるなら、お隣の重森三玲庭園美術館の「永遠のモダン」と称された枯山水庭園も事前予約して見学するのがオススメです。


● サラ・ムーン「Late Fall」@ギャラリー素形

ギャラリー素形で開催されているもうひとつのサラ・ムーンの展示「Late Fall」は、アンティークミラーに写した植物標本や動物の剥製をモチーフにした大型プリントの作品群。幸運にもトークショーでサラ本人に会うことができました。コム デ ギャルソンの黒いパンツスーツをさらりと着こなし、フランス人女性らしいアンニュイさと色気、品をまとっていた彼女。「よい写真とは長い間眺めていてもがっかりさせないもの、表現するべきこと、伝えるべきことがあるもの」「鳥は自由と美の象徴」と語っていたのが印象的でした。

ほかに、アソシエイテッド・プログラムとして何必館・京都現代美術館で開催されている「Sarah Moon 1, 2, 3, 4, 5」(〜6/26)も見応えたっぷり。併せてチェックしてみてください!


● アルノ・ラフェエル・ミンキネン「YKSI : Mouth of the River, Snake in the Water, Bones of the Earth」 @両足院(建仁寺内)

アルノ・ラファエル・ミンキネンは、森や湖などの美しい自然とともに、一糸まとわぬ自身の姿を撮影する独自のスタイルで国際的な評価も高い、フィンランドを代表する写真家。その日本初となる本格個展は、半夏生の名所として知られる両足院が会場です。

撮影場所は、故郷フィンランドとよく似た地であるアメリカ・マサチューセッツ州のフォスターズ・ポンドが中心。裸体と自然が一体化したようなモノクロームの写真は、静けさと力強さを併せ持ち、想像力をかきたてられます。庭園には、京都で撮り下ろした最新作が展示されていて、宝探し気分で探すのも楽しかったです。


● ティエリー・ブエット「うまれて1時間のぼくたち」 @堀川御池ギャラリー1階

生後1時間以内の新生児を撮影し、24点のシリーズにまとめたのは、フランスの写真家、ティエリー・ブエット。彼自身の娘が誕生したパリ郊外の体外受精専門の病院の協力を得て撮影した新生児のポートレートが、子宮をイメージした丸い空間に展示されています。

ティエリーは、「生まれたての赤ちゃんがこの世にどんな反応を示すのか、その瞬間を捉えたかった。難しかったのは、ひとりの人間として見てもらうため、寝ている赤ちゃんが立ってカメラを見ているように正面から撮影すること」とトークショーで語っていました。泣いていたり、笑っていたり、あくびをしていたり、両手をぎゅっと握っていたり。一枚一枚にまっさらで力強い生命力が満ちあふれ、まさに今年のテーマである生命の誕生について考えさせられます。


● 「コンデナスト社のファッション写真でみる100年」 @京都市美術館別館1階

モードラバーに欠かせない展示が、こちら。「VOGUE」「VANITY FAIR」「GLAMOUR」などの雑誌を通じ、ファッション写真というジャンルを築いたコンデナスト社の貴重なアーカイブから選りすぐった作品が4つの時代に分けて展示されているのです。シャネル・ネクサス・ホールに次ぐ世界巡回展ですが、東京に比べ、京都の方が写真の量もぐっと増えているそう。黎明期のエドワード・スタイケン、黄金期のマン・レイ、アーヴィング・ペン、ニュー・ウェーブをもたらしたリチャード・アヴェドン、ヘルムート・ニュートン、80年代以降のマリオ・テスティーノ、スティーブン・マイゼルなど、約80人の著名な写真家が名を連ね、特にその駆け出しの頃の作品を紹介しているという点でも貴重な展覧会です。モードだけでなく、女性の美や歴史的背景など時代時代の空気感を感じ、ファッション写真の魅力をたっぷり堪能することができます。


● クリスチャン・サルデ「PLANKTON 漂流する生命の起源」 @京都市美術館別館2階

上記展覧会の2階で披露されているのが、海洋生物学者であるクリスチャン・サルデが捉えた美しくて神秘的なプランクトンの世界です。自身が乗船し、世界規模で調査・研究を行う「タラ号海洋プロジェクト」にて撮影された作品や下田で撮り下ろした最新作、マイクロプラスチック(海中の微小のゴミ)の問題に触れた作品などを展示。真っ黒な背景に浮かび上がる蛍光色のプランクトンを眺めていると、生命の不思議に思いを馳せ、自然の造形や美しさにはかなわないと改めて思います。高谷史郎がビジュアルを、坂本龍一がサウンドを手がけたビデオインスタレーションも見どころのひとつで、不思議な浮遊感に包まれます。


● アーウィン・オラフ「Light by Erwin Olaf presented by Ruinart」 @ASPHODEL

1729年創業の世界最古のシャンパーニュ・メゾン、ルイナールがアルフォンス・ミュシャに広告制作を依頼したのは1896年のこと。それから120年という記念すべき今年、タッグを組んだのがオランダの写真家、アーウィン・オラフです。精巧な撮影方法で社会問題やジェンダーをテーマにした作品で知られていますが、今回のコラボレーションでは近年世界遺産に登録されたルイナールの雄大なチョークセラーを撮り下ろし。経年変化により自然がつくりだしたヒビや雨の跡、セラーで働く職人たちの手によるものであろうサインや彫刻のあとなどが、彼ならではの鋭い視点で捉えられ、目に見えない気配を感じるような、静謐で深淵な世界観が印象的でした。ギャラリーの3階にはルイナール シャンパーニュ ラウンジが設けられ、ルイナールのシャンパーニュがグラス(¥2,500)でいただけるのもうれしいポイントです!

そのアーウィン・オラフに今回の作品やKYOTOGRAPHIEについてインタビューをすることができました。
「ルイナールからのミッションは、ルイナールの遺産を表現することと、商業的なものでなくアート作品を作るということだった。いつもはセットを作り込んでストーリーを構築する撮影方法だけど、それがうまくいかず、落ち込んでセラー内を歩いている時に、壁に自然にできた跡や人が残したサインなどを見つけたんだ。そして壁を撮り始めた。10分で180度の方向転換だよ。写真を撮り始めた1979年頃の、ルポルタージュやジャーナリズムといった写真の原点に戻っているように感じた。質感が出せるという点でいつも画家にジェラシーを感じるけれど、今回の作品では質感が出せたと思うし、構図とサイズでアートに近づけたんじゃないかと思う。仕上がった写真は、1932年にブラッサイが撮った写真や1950年代のマーク・ロスコの絵画、1960年代のドイツのアート運動にも通じるものがある。ルイナールのメゾンの歴史と同時に、現代アートを振り返るような作品になった。僕は正確さやディテールを大事にしているけれど、京都はまさにそんな街。KYOTOGRAPHIEは写真だけでなく、建築やアートなども見られて刺激的な体験になる」。アーウィンは、厳格な作品のイメージからは想像できないほど、オープンマインドで多弁な方。来春にヴァカンスで再び日本を訪れることに決めたとか。お気に入りの色というネイビーのスーツが青い瞳によく似合っていました。

年々来場者が増え、ますます注目を集めているKYOTOGRAPHIE。街のあちこちで関連イベントも多数開催されています。古都を彩るの赤いフラッグを目印に、この時期だけの京都観光に出かけませんか?

『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2016』
京都市美術館別館とロームシアター(岡崎エリア)、虎屋 京都ギャラリー、堀川御池ギャラリーほか
会期:開催中~2016年5月22日(日)
開館時間、休館日、入場料は会場により異なる

●問い合わせ先
KYOTOGRAPHIE事務局
Tel. 075-708-7108
www.kyotographie.jp

photos:TAKUYA OSHIMA, texte:NATSUKO KONAGAYA

の記事をもっとみる