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アライアのドレスと“私らしさ”を纏って。デザイナー、スージー・コンディがNY市庁舎で叶えた自然体な結婚式

  • 2025.7.9

作家のバーナビー・ハリスは、17年間の交際の中でデザイナーのスージー・コンディに3回プロポーズしている。最初のプロポーズは14歳になる娘スティーヴィーが誕生した直後。ティファニーTIFFANY & CO.)のシュランバーゲのダイヤモンドバンドを贈った。2度目はその数年後、クラシックなダイヤモンドの婚約指輪を手に再び想いを伝えた。「面白いことに、私は毎回“YES”と答えてきたんです」とスージーは振り返る。

何度も婚約を重ねながらも、ふたりは娘を育てながら事実婚の生活を続けていた。娘から「なぜまだ結婚しないの?」と尋ねられることもあり、ついに正式な結婚を決意することになる。

3度目のプロポーズは、家族で訪れたパリでのディナーの席で行われた。バーナビーは母から受け継いだヴィンテージの腕時計リング、そして結婚指輪を取り出し、「3回目だけど、今度こそ」と伝えた。それを見たティーンエイジャーの娘が「今回は本当に結婚するの?それともまた別のプロポーズ?」と冗談を交わし、その言葉が後押しとなり、ふたりは正式に結婚することを決めた。

互いに再婚となるふたりは、盛大なウエディングではなく、ニューヨーク市庁舎でのシンプルな挙式と、親しい友人たちとのブランチを選択した。「もし結婚式をするなら、小さくてシンプルに」と考えていたという。スージーの両親もオーストラリアの市役所で結婚し、47年間連れ添ったという背景もあり、すでに家や子どもといった「人生」を共に築いていたふたりにとって、残るのは「いつ、どのように」式を挙げるかだけだった。

結婚式は2025年2月26日に行われ、挙式後にはニューヨークを代表するブラッスリー「バルタザール」でブランチを開催した。立地や雰囲気が気に入っており、友人たちにとっても気軽に訪れやすい場所だった。フランス出張が多いスージーにとって、フレンチシックなムードが漂う同店は特別な場所でもあった。

スージーが“運命のドレス”と出会ったのもパリだった。「パリにいつも泊まるお気に入りのホテルがあって、そのすぐそばにアライア財団があるんです。彼が亡くなった後も、そこには時間が止まったような特別な空気が漂っていて…。訪れるたびに心をぎゅっと掴まれるんです」。今回もその場所へ、友人であり仕事仲間のタルーラと訪れ、セレモニーだけでなく日常でも着られる特別な一着を探した。

選んだのは、アライア(ALAÏA)のニットウール素材のワンショルダードレス。アシンメトリーに入ったリブプリーツが印象的で、シンプルながら存在感のある一着だ。式当日は、同じくアライアの赤いハートモチーフがあしらわれたヒールと、愛用しているヴィンテージの赤いレザージャケットを合わせ、コーディネートを完成させた。

新郎のバーナビーは、手持ちのスーツにピンクのシャツを合わせ、ほんのりロマンティックなムードを演出。足もとは、プロポーズで訪れたパリ旅行の際に購入したチャーチ(CHURCH'S)のシューズで仕上げた。「彼はもともとセンスがいいので、あまり口を出さないようにしているけれど…つい意見してしまうんです」とスージーは笑う。

娘のスティーヴィーには、スージーが見つけたガニーGANNI)のシルクフローラルドレスを用意。「彼女が試着したのはこの一着だけでした。それだけひと目で気に入ったということです」と振り返る。

小さくても、心に深く残る一日を

迎えた2月26日。この日は冬のニューヨークにしては珍しく快晴だった。「それまでは“なぜ私たちはニューヨークに住んでいるんだろう、オーストラリアに戻るべき?”と思うような寒い日が続いていたのに、あの日だけは奇跡のように晴れてくれた」と話す。

結婚式で何より大切だったのは、娘のスティーヴィーがそばにいてくれたことだったという。「花嫁としてだけでなく、母として、娘がその1日をどう過ごすかを見届けられたことが、この上なく愛おしい時間になった」と語る。バーナビーも、スティーヴィーの存在が式をより「自分たちらしい時間」にしてくれたと話している。

特別なのは、飾らない幸せのかたち

挙式後は、親しい友人たちとのささやかな祝宴が開かれた。「どうしても呼びたかった人たちだけを招いた感じです」とスージーは言う。わずか20人という小さな集まりだったが、そこには知性と美意識が溶け合う、心地よい温かな時間が流れていた。詩人のエリザ・グリズウォルドがこの日のために詩を書き下ろし、写真家チャド・ムーアが記録を撮影。ゲストの似顔絵を描くイラストレーターの姿もあり、フローリストのミッシーが手がけたブーケが華を添えた。「すべてが自然で美しかった」とスージーは振り返る。

「結婚となると、“盛大な式を挙げて、ハネムーンにも行かなければ”というプレッシャーを感じることもある。でも本当に大事なのは、“私たちは何を望んでいるのか”ということ。今回の私たちの結婚式は、ささやかで愛おしく、特別な時間になった。挙式の翌晩にはパリへ旅立ってハネムーンを楽しんだんです。すべてが完璧で、この選択を変えたいと思うことはきっとこれからもない。心から満たされ、かけがえのない一日でした」

Text: Shelby Wax Adaptation: Mei Fujita, Saori Yoshida

From: VOGUE.COM

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