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災害関連死とは?事例や原因、対策を解説

  • 2025.6.25

災害後に、避難生活の肉体的・精神的負担などが原因となって死亡する「災害関連死」が後を絶ちません。国や自治体は、災害関連死を少しでも減らそうと対策を進めています。

そこで、この記事では災害関連死の事例と原因、対策などを紹介します。

災害関連死とは?

災害関連死とは、地震、津波、洪水などの自然災害による直接的・物理的な原因で死亡するのではなく、災害時の負傷が悪化したり、避難生活の身体的負担などから持病が悪化したりして亡くなることを言います。災害との因果関係があれば、精神疾患による自殺も災害関連死に含まれます。

災害関連死は、1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震などで繰り返し発生し、問題となってきましたが、国としての明確な定義はありませんでした。

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内閣府は、災害関連死を減らしていくために、まずその人数を把握することが重要と考え、2019年に災害関連死を定義し、自治体に周知しました。

災害関連死の定義

「当該災害による負傷の悪化又は避難生活等における身体的負担による疾病により死亡し、災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和48年法律第82号)に基づき災害が原因で死亡したものと認められたもの(実際には災害弔慰金が支給されていないものも含めるが、当該災害が原因で所在が不明なものは除く。)」

引用:内閣府「災害関連死事例集(増補版)」より

災害弔慰金とは、「1市町村において住居が5世帯以上滅失した災害」「都道府県内において災害救助法が適用された市町村が1以上ある場合の災害」などの、対象となる自然災害で死亡した人の遺族に、生計維持者が死亡した場合は500万円、その他の人が死亡した場合は250万円を支給する制度です。

遺族が支給を受けるには、死亡と災害とに因果関係があったという認定を受ける必要があります。

災害関連死の認定

災害関連死の認定を行うのは、市町村等の自治体です。認定を受けるためには、まず遺族が自治体に災害弔慰金の申請を行います。

申請には、「災害弔慰金に係る受領申出書」「口座振替依頼書」のほかに、「死亡診断書の写し」「死亡までの経緯がわかる書類」「調査同意書」「振込口座の通帳の写し」「申請者の本人確認書類」など、各種書類が必要です。

自治体は申請を受けると、医師、弁護士、自治体職員、大学教授などが委員をつとめる判定委員会に、死亡と災害との因果関係などに関する意見を求めます。自治体は委員会の意見をもとに、認定・不認定を決定し通知します。

※申請の方法、認定基準は自治体によって異なります。

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災害関連死の数

【熊本地震】

2025年3月に熊本市が新たな災害関連死を認定し、熊本地震の災害関連死は計223人となりました。熊本地震の死者数は計278人で、災害関連死が約8割を占めています。

熊本地震では余震が続き、建物の中にいることを恐れて車中泊を続けた人が多くいました。その影響で、震災直後の1週間にエコノミークラス症候群の患者が多発したことが報告されています。

【東日本大震災】

2025年2月に復興庁が公表した東日本大震災の災害関連死による死者数は、昨年から6名増えた3,808名でした(2024年12月31日時点)。

内訳は66歳以上が3,369人、21歳以上65歳以下が429人、20歳以下が10人と、高齢者が8割以上を占めています。

災害関連死の人数がわずかずつ増え続けている理由は、認定に時間を要する場合や、認定・不認定をめぐって裁判になる場合があるためです。

災害関連死の事例

内閣府が公表している災害関連死事例集(増補版)から、認定・不認定となった事例を紹介します。

豪雨災害(30代女性の例)

女性に既往歴はなく、豪雨による自宅の被害もありませんでした。停電、断水が発生しているなかで、被災直後から勤務先のスーパーで片付け等に従事しました。

3日目に帰宅した際に熱中症のような症状があり、翌朝倒れているのを家族が発見して、救急搬送されましたが、死亡が確認されました。

【認定】

被災した職場の片付けに尽力する中で、肉体的負担が増加し、熱中症を発症して死亡したと確認され、死亡と災害との間に因果関係があると認められました。

地震災害(80代男性の例)

男性は約3年前から降圧剤を服用していましたが、月に1回通院しているほかは、日常生活に支障なく過ごしていました。

地震後、息子夫婦と一緒に車で避難し、一晩中座った状態で眠れずに過ごしました。日中は自宅に戻り片付けを行いましたが、余震があったので、夜は車に避難して車中泊を続けました。

被災5日後の早朝、車外で倒れているところを発見され、緊急搬送されましたが、肺梗塞(こうそく)により死亡しました。

【認定】

車中泊による避難生活が身体的・精神的に負担となり、肺梗塞により死亡。災害との因果関係が認められました。

地震災害(80代男性の例)

地震翌日の朝、自宅がろうそくの火により出火し、男性が一酸化炭素中毒で死亡しました。

地震の影響で停電中だったことから、寝室でろうそくを使用していたと考えられます。ろうそくはマグカップの中で使用しており、何らかの要因で可燃物に着火したと考えられますが、要因の特定には至りませんでした。

【不認定】

火災の発生原因は偶然のものであり、死亡と災害との間には、因果関係は認められませんでした。

台風災害(60代女性の例)

災害の発生前、女性は体の不調を訴えることもなく、普通に生活していました。台風により自宅が浸水し、公民館に避難しましたが、その日のうちに自宅に戻り、2階で過ごしました。

その後は、親戚の家から自宅の片付けに通い、被災から約2か月後には借上げ住宅に入居し、そこから自宅の片付けに通っていました。体の状態は問題ないように見えましたが、被災から約3か月後に体調不良を訴え意識を失い、翌日、脳幹出血で死亡しました。

【不認定】

被災から約3か月経過した時点での脳幹出血であり、寒暖差がある環境では、災害の有無にかかわらず起こり得る症状のため、死因と災害との間に因果関係は認められませんでした。

災害関連死が起きる原因

災害関連死に認定された事例を分析すると、「避難生活の肉体的・精神的負担」「電気、ガス、水道等の途絶による肉体的・精神的負担」「医療機関の機能停止による治療の遅れ」などが大きな原因となっていることが分かります。

持病の悪化

避難生活では、普段とは環境が大きく異なり、疲労やストレスがたまりやすくなります。持病のある人は体調が悪化する恐れがあるので、注意しましょう。

地域の医療機関も被災している恐れがあり、治療が受けられないケースや、必要な薬が手に入らないケースも想定されます。

エコノミークラス症候群

食事や水分をしっかりとらずに、狭い飛行機の座席に長時間座ったままでいると、足の血流が悪くなり、血栓(血のかたまり)ができて肺の血管をつまらせることがあります。これが「肺血栓塞栓症」で、いわゆる「エコノミークラス症候群」です。

災害時の車中泊でも、エコノミークラス症候群を発症する危険性が指摘されています。

避難所におけるストレスや罹患

「ストレスは万病のもと」と言われます。特に高齢者では、不安やストレスから無気力になり、体を動かすことが面倒になり、運動機能や認知機能が低下していく「フレイル」の状態になることが心配されます。

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災害関連死への対策

災害関連死を少しでも減らせるように、国と自治体は避難所の環境改善などに取り組んでいます。

ここでは、災害関連死を防ぐために私たち自身が心がけたいこと、できることを3つご紹介します。

持病への配慮や備え

持病のある人は、災害時にも治療や服薬を継続できるよう、備えておくことが大切です。人工透析やインスリン注射を必要としている人は、災害時の対応をかかりつけ医に相談しておいてください。

慢性疾患の薬は、3日~1週間分を手元に置いておくようにしましょう。緊急時に忘れず持ち出せるよう、貴重品とともに持ち歩く、非常用持ち出し袋に入れておくなどの対策も検討してみてください。

災害時には、かかりつけ医とは異なる医療機関を利用することになるかもしれません。普段飲んでいる薬が分かるように、お薬手帳も携帯しましょう。

ストレスのケア

自然災害への恐怖、停電や断水が続く中での避難生活、災害時には心身に大きなストレスがかかります。できるだけ栄養のある食事をとり、夜は横になって休み、体をいたわることがストレスを和らげることにもつながります。

イライラしたり不安になったりしたときは、ゆっくりと息を吐き、大きく吸って、深呼吸をしてみてください。

もし、夜眠れない、食欲がない、息が苦しいと感じるような状態が続くときは、一人で抱え込まずに、周囲の人や専門家などに相談することも大切です。

適度な運動

適度な運動は、エコノミークラス症候群やフレイルの予防につながります。ラジオ体操、軽いストレッチ、立ち上がって歩くだけでもいいので、定期的に体を動かすようにしてください。

足腰に不安のある人は、椅子に座ったまま、足の上げ下ろしやふくらはぎのマッサージをしましょう。足指を大きく開いたりぎゅっと握ったりするのも良い刺激になります。

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まとめ

災害関連死で亡くなる人は、決して少なくありません。停電や断水、避難所で寝起きする生活は被災者の体力を奪い、心を疲弊させます。

「非常時だから仕方ない」「みんな大変なのだから」と、その疲れを見過ごさないようにしましょう。近くの人と声をかけ合い、体調管理を心がけてください。

<執筆者プロフィル>

山見美穂子
フリーライター
岩手県釜石市生まれ。幼いころ両親から聞いた「津波てんでんこ」の場所は、高台の神社でした。

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