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高度なクラフツマンシップに注目。今、オーストラリアのファッションシーンを沸かすのはこの3人【若手デザイナー連載】

  • 2025.6.22

高度な技術で世界へと飛躍する、オーストラリアの気鋭デザイナーたち

2026年リゾート・オーストラリアン・ファッションウィークの会期中に、気鋭デザイナーたちに光を当てる2つのグループショーが開催された。1996年に設立以来、次世代を担うニューカマーの発掘に注力している「New Gen」ショーと、現地の幅広い気鋭デザイナーを紹介する「Frontier」ショーだ。

この2つのグループショーでは、エッセ(ESSE)パリスジョージア(PARIS GEORGIA)メイティン(MATIN)が発信するコンテンポラリーファッションのほか、コモンアワーズ(COMMON HOURS)のイブニングウェア、そしてコートニー・ゼン(COURTNEY ZHENG)ウィン・ハムリン(WYNN HAMLYN)エイミー・ローランス(AMY LAWRANCE)による2026年リゾートコレクションが発表された。7つのブランドそれぞれの経験や専門性、視点は異なるとはいえ、オーストラリアのファッションシーンがいかに注目に値するかを見事に証明したと言えるだろう。ここでは、特に高度なクラフツマンシップを見せつけた3人のデザイナーを紹介したい。

COURTNEY ZHENG コートニー・ゼン

コートニー・ゼン 2026年リゾートコレクションより。
Courtney Zheng The Frontier-1.jpgコートニー・ゼン 2026年リゾートコレクションより。

コートニー・ゼン(COURTNEY ZHENG)が自身のレーベルを立ち上げたのは今から2年前。現代のムードを鋭く捉える彼女は、ここオーストラリアで注目デザイナーのひとりに急浮上している。ゼンは、両親が運営してきた中国・広州にある小さなアトリエを受け継ぐことになったそうで、「祖父母のために働き、両親のために働いてきたチームと、今こうして私が仕事をともにしているというのは素晴らしいことです」と話す。すでに製造業へのアクセスがあるというのは、若いデザイナーにとって当然有利に働く。だが、彼女が持つ本当の武器は、ほかとは一線を画す秀でたビジョンだ。

コートニー・ゼン 2026年リゾートコレクションより。
Courtney Zheng The Frontier-2.jpgコートニー・ゼン 2026年リゾートコレクションより。
コートニー・ゼン 2026年リゾートコレクションより。
Courtney Zheng The Frontier-3.jpgコートニー・ゼン 2026年リゾートコレクションより。
コートニー・ゼン 2026年リゾートコレクションより。
Courtney Zheng The Frontier-4.jpgコートニー・ゼン 2026年リゾートコレクションより。
コートニー・ゼン 2026年リゾートコレクションより。
Courtney Zheng The Frontier-5.jpgコートニー・ゼン 2026年リゾートコレクションより。
コートニー・ゼン 2026年リゾートコレクションより。
Courtney Zheng The Frontier-6.jpgコートニー・ゼン 2026年リゾートコレクションより。
コートニー・ゼン 2026年リゾートコレクションより。
Courtney Zheng The Frontier-7.jpgコートニー・ゼン 2026年リゾートコレクションより。
コートニー・ゼン 2026年リゾートコレクションより。
Courtney Zheng The Frontier-8.jpgコートニー・ゼン 2026年リゾートコレクションより。

レザーのボンバージャケットにバイアスカットのパネルで仕立てたデニムスカートを合わせたオープニングルックに続いて登場したのは、透け感のあるマーメイドガウンや、着古したようなセメントグレーの色合いに染まったクールなセットアップの数々。「以前のコレクションは、ジョージアン様式やヴィクトリア様式にこだわったものでしたが、今シーズンはクリエイティブに自分を追い込んで、基本に立ち返ろうとしました」とゼンは説明する。「衣服の完全性、構造、そして生地に焦点を当てたかったのです」。確かに全体的にミニマルではあるが、クワイエット ラグジュアリーとはまた違う雰囲気が印象的だ。彼女は自身の美学を「控えめなブルータリズム」と表現している。

WYNN HAMLYN ウィン・ハムリン

ウィン・ハムリン 2026年リゾートコレクションより。
Wynn Hamlin The Frontier-36.jpgウィン・ハムリン 2026年リゾートコレクションより。

ウィン・ハムリン(WYNN HAMLYN)を手がけるウィン・クローショーは、2015年にレーベルをローンチするまで土地測量技師を生業としていた異色の経歴の持ち主。そんな彼のコレクションには、クラフトと素材を軸にしたファッションへの実験的なアプローチが目立つ。「Frontier」ショーが開催される前日、クローショーはその見どころをこう話してくれた。「最近の私たちの作品の多くは、手織りの生地を使ったものです。そしてここ数シーズンは、ノスタルジックなプリントや思い出の品をさまざまな形で再構築することに取り組んできました」。彼が「BBQシャツ」と呼ぶメンズのシャツは通常ネクタイに使われる生地で仕立てられており、ランウェイではお揃いのネクタイと一緒にスタイリングされていた。また別のシャツは、プラスチックのような質感のバスケット織りのパターンが目を惹きつけ、切りっぱなしの裾が生地の表情を際立たせていた。

ウィン・ハムリン 2026年リゾートコレクションより。
Wynn Hamlin The Frontier-33.jpgウィン・ハムリン 2026年リゾートコレクションより。
ウィン・ハムリン 2026年リゾートコレクションより。
Wynn Hamlin The Frontier-34.jpgウィン・ハムリン 2026年リゾートコレクションより。
ウィン・ハムリン 2026年リゾートコレクションより。
Wynn Hamlin The Frontier-35.jpgウィン・ハムリン 2026年リゾートコレクションより。
ウィン・ハムリン 2026年リゾートコレクションより。
Wynn Hamlin The Frontier-37.jpgウィン・ハムリン 2026年リゾートコレクションより。
ウィン・ハムリン 2026年リゾートコレクションより。
Wynn Hamlin The Frontier-38.jpgウィン・ハムリン 2026年リゾートコレクションより。
ウィン・ハムリン 2026年リゾートコレクションより。
Wynn Hamlin The Frontier-39.jpgウィン・ハムリン 2026年リゾートコレクションより。
ウィン・ハムリン 2026年リゾートコレクションより。
Wynn Hamlin The Frontier-40.jpgウィン・ハムリン 2026年リゾートコレクションより。

シャツに見る気負わないカジュアルさは、今シーズンから再開したメンズラインのケーブルニットセーターやチェック柄のツイードのセパレーツにも表れていた。あいにく、ウエストラインを浮かせたシフトドレスやビーズで表現したツイード生地を用いたドレスなど、ひと際独創的な作品の多くは「Frontier」でのショーケースを構成する8ルックには収まらなかったが、それでも今回、彼がシドニーで最もユニークなコレクションのひとつを発表したことは間違いない。

AMY LAWRANCE エイミー・ローランス

エイミー・ローランス 2026年リゾートコレクションより。
Amy Lawrance The Frontier-9.jpgエイミー・ローランス 2026年リゾートコレクションより。

メルボルンを拠点とするエイミー・ローランス(AMY LAWRANCE)は、昨年に開かれた「New Gen」グループショーの一部としてオーストラリア・ファッション・ウィークでデビューし、繊細かつ精巧な手縫いのドレスで観客たちを魅了した。ローランスは今回、彼女の確立された美学から大きく逸脱することはなかったが、そのテクニックはこまれのそれとは明らかに異なっていた。

ショールームで「20世紀前半の服作りに見るような説明書や型紙に着目し、その素材感を模倣しようとしました」と説明する彼女は、紙のような質感を出すためにすべての生地を澱粉入りの熱湯にくぐらせ、それから乾燥させたという。そのなかには、フセイン・チャラヤンのアイコニックなエンベロープドレスを連想させる折りたたまれたようなデザインもあった。ローレンスは無意識にも彼の影響を受けていたようで、「偉大なデザイナーのひとりです。頭の片隅に(彼の作品が)あったのかもしれません」と話している。

エイミー・ローランス 2026年リゾートコレクションより。
Amy Lawrance The Frontier-10.jpgエイミー・ローランス 2026年リゾートコレクションより。
エイミー・ローランス 2026年リゾートコレクションより。
Amy Lawrance The Frontier-11.jpgエイミー・ローランス 2026年リゾートコレクションより。
エイミー・ローランス 2026年リゾートコレクションより。
Amy Lawrance The Frontier-12.jpgエイミー・ローランス 2026年リゾートコレクションより。
エイミー・ローランス 2026年リゾートコレクションより。
Amy Lawrance The Frontier-13.jpgエイミー・ローランス 2026年リゾートコレクションより。
エイミー・ローランス 2026年リゾートコレクションより。
Amy Lawrance The Frontier-14.jpgエイミー・ローランス 2026年リゾートコレクションより。
エイミー・ローランス 2026年リゾートコレクションより。
Amy Lawrance The Frontier-15.jpgエイミー・ローランス 2026年リゾートコレクションより。
エイミー・ローランス 2026年リゾートコレクションより。
Amy Lawrance The Frontier-16.jpgエイミー・ローランス 2026年リゾートコレクションより。

いくつかのドレスに施されたシワ加工は、花のように見えることも。こういったイリュージョンは、彼女のデザインに共通するものだ。またほかのドレスは、折りたたまれたフリルや装飾で飾られ、無造作に置かれた紙切れの形を彷彿とさせた。ローレンスは今でもすべてのドレスを自ら手作りしており、1着を仕上げるのに20時間から30時間かけることもあるそう。しかし彼女は、より多くの人がアクセスしやすいバージョンを作るためにさまざまな方法を試している。今年3月、彼女はオーストラリアの権威あるナショナル・デザイナー・アワードを受賞し、賞金2万ドルと、オーストラリアを代表する高級デパートのデビッド・ジョーンズからコマーシャル・サポートを得ており、さらなる成長が期待される。

Text: Laia Garcia-Furtado Adaptation: Motoko Fujita

From VOGUE.COM

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