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『LINE退職届』が令和の常識なのか…Z世代社員「退職します」とLINEで一言。法的にアリ?弁護士に聞いてみた

  • 2025.6.29
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出典:Photo AC ※画像はイメージです

従来の退職といえば、直属の上司に相談し、その後、退職届を手渡しで提出するのが一般的でした。ですが、最近はデジタルネイティブ世代を中心に、その常識が変わりつつあるようです。

SNS上で「Z世代の新入社員がLINEで『退職します』と送ってきたきり、音沙汰がない。これが新しい常識なのかと驚いている」といった趣旨の投稿がされ、「常識が欠落しているのでは…」「きちんと伝えてくれるだけ、まだまし」と話題になりました。

はたして、LINEでの退職は法的に有効なのでしょうか?気になる疑問について、弁護士さんに詳しくお話を伺いました。

LINEでの退職、法的にはどうなの?弁護士が詳しく解説

今回は、NTS総合弁護士法人札幌事務所の寺林智栄弁護士に詳しくお話を伺いました。

---LINEで退職の意思を伝え、それ以降出社せずに退職手続きを完結させること、は法的に問題ないのでしょうか?

日本の民法上、退職の意思表示は「書面でなければならない」というルールはありません。

したがって、LINEなどのメッセージアプリでも、それが退職者本人のアカウントであることが確認でき、退職する意思が明確に示されていれば、有効と取り扱われることとなります。

---LINEでの退職届も有効なのですね。会社として「LINEでの退職届は認められないので出社せよ」と命じることは、法的に問題がありますか?

LINEによる退職意思が明確であれば、その退職届は有効であるため、会社が一方的に「無効」とすることはできません。

出社命令で退職を阻止するのは、労働者の退職の自由(憲法上の権利)を侵害するおそれがあり、法的に問題となる可能性があります。会社としてできるのは、「引継ぎや書類提出に協力してもらえないか」とお願いベースでの対応までです。

---出社の強制はできないのですね。LINE以外にも、手紙の郵送や電話など、対面以外での「退職届」については、どのような扱いになるのでしょうか?

手紙(郵送)・電話・メールなど対面以外の退職届は、法的に有効になる場合があります。

特に手紙は、書面として形に残っているため証拠があると評価され、原則として法的には有効と取り扱われます。特に内容証明郵便は、いつ誰に送ったかが公的に残るので、退職の方法として最も確実です。

一方、電話は、有効になる可能性はあるものの形がないため証拠が残らないという問題点があります。後に「言った・言わない」についてトラブルが起こる可能性もあるので、録音したり後日書面化する対応が必要でしょう。

---書面という形で残っていることが重要なのですね。ありがとうございます。

時代の変化と労働者の権利、お互いの理解が大切

LINEでの退職も法的には有効であり、会社が一方的に拒否することはできないとのことです。退職の自由は憲法で保障された権利であり、その方法についても時代とともに変化していくのは自然なことなのかもしれません。

一方で、だからといって何の配慮もなく突然退職してよいというわけではありません。引継ぎや後任への配慮は、法的な義務ではなくとも、社会人としてのマナーです。

SNSでは「Z世代の常識が理解できない」といった声も多く見られましたが、デジタルネイティブ世代にとって、LINEでのコミュニケーションは日常の一部です。世代間のギャップを埋めるためには、お互いの価値観や常識を理解し合うことが重要でしょう。

また当然ですが、Z世代が皆LINEでの退職届を当然のことだと思っているわけではない、ということも理解しておきたいポイント。

最終的には、労働者と企業双方の理解と配慮によって、より良い職場環境を作っていくことが何より大切なのではないでしょうか。

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