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犬の散歩で年収1500万円!? アメリカ・シカゴで体験した「ドッグウォーカー」とペット事情

  • 2025.6.17

アメリカ・シカゴに2年間住み、現在は日本でフリーアナウンサーをしている渋佐和佳奈さん。これまではシカゴから現地の最新事情を伝えてくれていましたが、これからはアメリカと日本、両国で暮らしたからこそ気づくトピックスを独自の視点で伝えてもらいます。今回はとっても興味深い、アメリカで体験した犬とのかかわりについて。犬の散歩で年収1,500万円って、本当!?

日本に帰国して嬉しかったことのひとつが、「実家の愛犬に会えること」でした。実家には今年で12歳になるチワワのタンタンがいます。大のワンちゃん好きの私にとって、アメリカに行くとき寂しかったのが、愛犬と離れて暮らすことでした。しかし、シカゴでの2年間の生活を振り返ってみて気づいたのは、思っていた以上に犬と過ごす機会に恵まれた、ということ。特別ドッグトレーナーになったわけでもなければ、保護活動をしていたわけでもありません。
 
大きなきっかけのひとつが、「ドッグウォーカー」という経験でした。その名の通り、犬のお散歩を(家族の代わりに)する人のこと。日本では聞き馴染みのない言葉ですが、アメリカではとても一般的で、実は大人気の仕事としてここ数年注目を集めています。需要拡大のきっかけは、意外にも新型コロナウイルスによるパンデミックでした。

シカゴでは、想像以上に犬と触れ合う日々を過ごせました。その理由とは……

人気の職業「ドッグウォーカー」急増の背景にあるもの

コロナ禍に全米で起きたペットブーム。米国動物虐待防止協会(ASPCA)によると、パンデミック中に2300万以上もの世帯(全米の5世帯に1世帯)が、新たに犬や猫を飼い始めたそうです。ロックダウンやリモートワークの孤独を癒やしてくれる存在として、多くの家庭がペットを迎えたものの、次第にオフィスに戻りつつある今、「その子たちを日中どうするのか?」「散歩に連れて行く時間が取れなくて困った」という課題が浮かび上がってきているのです。
 
「New York Post」(2024年10月15日)によると、その課題への解決策として、ドッグウォーカーやペットシッターの需要が爆発的に高まっているというのです。

犬の散歩やペットケアをマッチングするアメリカの大手サービス「ROVER」では、2024年の7~9月の利用率は前年の同じ時期に比べて25%も上昇したとのこと。多くの人が「自分の代わりに犬をケアしてくれる存在」を求めているということがわかります。

記事によると、1回のお散歩料金は10ドルから250ドル(1円=150円換算で約1500円から3万7500円)と、かなりの価格幅があるようですが、さすがに4万円近いお散歩がどんな内容なのかは想像もつきません……!! さらに気になって、「ドッグウォーカーの収入はどのくらいになるのだろう?」と調べたら、驚きの記事を発見。
 
「The New York Times」(2023年1月22日)の記事によると、年間10万ドル(約1500万円)以上を稼いだベテランドッグウォーカーもいるそうなのです!! 価値のあることにはしっかりと対価を支払うアメリカ。それだけペットケアに対する需要が、特に都市部を中心に高まっているのだと思います。
 
私自身も、アメリカ第3の都市シカゴで暮らしていたころ、友人から何度もドッグウォーカーを頼まれたことがありました。例えば、共働きしている友人夫婦から「平日は仕事で忙しくてなかなかお散歩に行ける時間がないので代わりにお願い!」というケースがほとんどでしたが、中には「極寒の冬の間だけ、近所に住む親戚のおばあちゃんの代わりに散歩に行ってほしい! 」という場合もありました。
 
愛犬家の私としては「嬉しい! ぜひお散歩させて!」の二つ返事でしたが、まず驚いたのは、ドッグウォーカーとして頼まれると、普通に家の鍵を渡されること。家主不在の中、その鍵を使って家に入り、犬のリードやおやつ、トイレグッズを準備して30分ほどお散歩へ。帰宅後は足を拭いてお水を替えて、また誰にも会わずにそっと家を出る……。最初は「本当にこれでいいのかな? 勝手に家にあがって、申し訳ない気が……」と戸惑いましたが、そんな流れがごく自然に行われるのです。私の場合は、30分ほどのお散歩で30ドル前後(約4500円)の謝礼をいただいたのですが、冷静に考えればなかなかのお値段。大好きなワンちゃんとお散歩ができて、おまけにお金までいただけるなんて、それはもう、ご褒美のような時間でした。

”家ごと”預ける、アメリカ流ペットシッター体験

シカゴの中心部を友人のワンちゃんとお散歩。

もうひとつ、アメリカでの印象深い経験があります。ある日、友人夫婦が2週間の旅行に出ることになり、その間、私が彼らの家に住み込んで犬の世話をするという役目を任されたのです。最初は「え、鍵を預けて家を丸ごと任せるって、そんなに信用してくれて大丈夫?」と思わず聞き返してしまったほど。でも、「アメリカでは割とよくあることだよ」と教えてくれたのです。ペットホテルに預けるのではなく、信頼できる人に”家ごと”任せてしまうスタイル。もちろんアメリカにもペットホテルはあるのですが、料金が高いことがあったり、犬にとっても、慣れない環境で過ごすことへのストレスがあったりで悩む人が多いのです。

依頼してきた友人夫婦はなるべく犬への負担も減らしたいという思いから、普段から彼らの家によく行き何度もワンちゃんにも会って慣れている私に頼んだようです。

彼らが旅行に出発する日に家を訪れると、冷蔵庫の中には牛乳やヨーグルト、ジュースなどの飲み物がいっぱい入っていて、フルーツやスナック菓子までたくさん用意してくれていて、「家にあるものは自由に食べてね!」と言うのです。彼らいわく「ささやかなお礼の気持ち」とのことですが、慣れないエリアに住む中で、そういったおもてなしは助かりましたし、素敵だなと思いました。
 
こうして始まった期間限定の犬との同居生活は、最初の数日は自分の家ではないということもあり私の方が少し緊張もしましたが、ワンちゃんはすっかりリラックスした様子。私もだんだんとペースをつかみ、朝晩のお散歩やごはんの準備をしながら、まるで本当に一緒に暮らしているみたいな、のんびりとした時間を過ごしました。

お昼どきに、友人夫妻宅のソファで一緒にごろんとする至福のひととき。

アメリカ流のちょっとユニークなワンちゃんとの関わり方に驚くことも多かったですが、それ以上に、新鮮で楽しくて、気づけばすっかり癒やされていました。日本ではなかなか味わえないような、犬とのふれあい方や距離感。振り返ると、そんな日々も私のシカゴライフに彩りを与えてくれていたのだなと思います。

text:WAKANA SHIBUSA

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