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異常震域とは?震源から離れた場所で大きく揺れる理由を解説

  • 2025.6.11

地震が発生した際に、震源から離れた場所で地震を観測する場合があります。このような現象を「異常震域」といい、ニュースで報じられています。「異常」と記されていることから、不安に感じる方もいるのではないでしょうか。

この記事では、異常震域のメカニズムや事例について触れ、南海トラフ地震や首都直下地震との関係も解説します。

<こちらの記事もよく読まれています!>→南海トラフ地震、被害想定の見直し 最新の被害想定や生活への影響を解説

異常震域とは

異常震域は、震源に近い場所よりも遠く離れた場所が揺れる現象です。通常、地震は震源に近いほど強く揺れ、遠くなるほど揺れが弱まります。

しかし、震源が非常に深い地震の場合、震源から遠く離れた場所で揺れを感じるケースがあります。このように、震度分布(震域)が通常と異なる現象を「異常震域」と呼ぶのです。

異常震域の原因である「深発地震」とは?

深発地震とは、地下深くで発生する地震です。異常震域は、一般的に深発地震によって起こります。その原因は、地球内部の岩板の性質が異なるためです。

日本の地下深くでは、陸のプレートの下に海洋プレートが潜り込んでいます。通常、地震波は震源から遠くなるほど減衰しますが、海洋プレートは地震波を減衰させずに伝えやすい性質があります。

潜り込んだ海洋プレート付近で深発地震が発生すると、震源の真上には地震波が減衰しやすい層があるため、揺れが比較的小さくなります。

一方で、海洋プレートでは地震波があまり減衰せず、遠く離れた場所まで伝わります。その結果、震源から離れた場所で震度が大きくなるのです。

出典:気象庁「緊急地震速報の特性や限界、利用上の注意

なお、地上から深さ数十kmなどの浅い地震が発生した際にも、震源より少し離れた場所で大きな震度が観測される場合があります。

その原因は、地盤の固さが場所によって異なるためです。軟弱な地盤は地震の際に強く揺れやすく、他の場所に比べて震度が大きくなるケースもあります。

太平洋側は揺れが大きい傾向がある

太平洋側は、地震波が減衰しにくい海洋プレートを通っているため、異常震域が起きた場合に揺れが大きくなる傾向があります。

また、太平洋側は海洋プレートが地下の比較的浅い部分を通っているため、減衰せずに伝わってきた地震波がそのまま太平洋側の地表付近に揺れを引き起こします。

異常震域の事例

異常震域は、過去に何度も発生しています。こちらは、2012年1月1日の鳥島近海で発生した地震に伴う異常震域です。

マグニチュードは6.2で、震源の深さは265kmです。震源に近い日本海側よりも、太平洋プレートに沿って太平洋側で強い揺れが起きました。

マグニチュードは6.6で、震源の深さは393kmです。震源から近い東海よりも、太平洋プレートに沿って関東から東北地方にかけて、太平洋側で比較的強い揺れが起きました。

出典:気象庁「異常震域のあった過去の地震の震度分布図の例

異常震域の見分け方と対策

震源の深さが地下100kmよりも深く、震源から離れた場所で大きく揺れている場合は異常震域と判断できます。

異常震域そのものは珍しくありません。今後発生が予想される南海トラフ地震や首都直下地震をはじめ、普段から地震に備えておくことが大切です。

南海トラフや首都直下地震と関係はある?

南海トラフ地震や首都直下地震の震源の深さは、数十km程度と予想されています。異常震域は、震源の深さが数百kmの深発地震で発生しやすく、南海トラフ地震や首都直下地震と直接的な関係はないといえるでしょう。

地震の大きさと津波の高さは必ずしも一致せず、一般的に地下深くで発生する深発地震の異常震域では、小さな海面変動はあっても津波注意報や津波警報にいたる大きな津波は起こらないと考えられています。

一方で、揺れが小さくとも断層のずれの規模が大きい場合には、大きな津波が発生することもあるため注意が必要です。

なお、南海トラフ地震では広範囲で大きな津波の発生が予想されています。ハザードマップを確認するなど、事前の防災対策が欠かせません。

防災のポイント

異常震域が生じる深発地震の場合でも、地震の規模が大きくなると強い揺れが起こり、被害が発生する可能性があります。

地震はいつどこで発生するか予想できないため、日ごろの防災対策が重要です。背の高い家具や家電などを転倒防止金具などで固定し、倒れにくくしておきましょう。

また、家屋の耐震診断を受け、必要な補強もしておくと安心です。大きな地震の発生を想定し、防災グッズや避難経路の確認もしておきましょう。

〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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