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【大人の歯列矯正】クリニック選び・老け問題・後戻りetc.疑問を徹底解説!

  • 2025.6.8
教えてくれたのは……

アニバーサリーデンタルギンザ 医療法人社団フェイス会 理事長

柴山拓郎先生

慶應義塾大学医学部で口腔外科・麻酔科を研修したのち、表参道の矯正専門医院で矯正歯科を学ぶ。全身麻酔150件以上の経験やMBA的視点を活かし、複数の医療分野を統合した診療を実践。2012年より完全紹介制の「神宮前フェイスデンタルサロン」を開業。成人矯正、とくに裏側矯正(インコグニート)に精通し、200症例以上を手がける。2014年、笑顔のきっかけを創ることをコンセプトにした「アニバーサリーデンタルギンザ」を開院。HP: https://anniversary-ginza.jp

【大人の歯列矯正】のメリット&デメリット。「やる・やらない」はどう決める?

●メリット

  • 見た目が整う
  • 清潔感が出る
  • 好印象を持たれやすくなる

●デメリット

  • 治療が長引きやすい
  • 治療のストレスでQOLが下がる可能性がある
  • 虫歯や歯周病になりやすくなる
柴山拓郎先生

歯列矯正は、特定の医療的条件(顎変形症や先天性の噛み合わせ異常など)を満たす場合に限り健康保険が適用されますが、多くのケースでは自由診療となり、自己負担が必要です。つまり、歯列矯正は主に「見た目の改善」を目的とする審美的な治療という位置づけであり、美容やエステティックの領域になることを、まずお伝えしておきます。

その上で「見た目の改善」における最大のメリットは、「清潔感」のある印象を得られること。大人世代になると、「かわいさ」よりも「落ち着き」や「きちんとした印象」が求められる場面が多くなり、歯並びが与える印象の影響はより大きくなるからです。

最近では、“口ゴボ(口元が前に出ている状態)”や“Eライン(横顔の美的基準)”など、口元のバランスにも注目が集まっています。時代によって「好まれる美しさ」が変化する中、自分の見た目を現在の美的価値観に合わせてアップデートできる、ということも歯列矯正のメリットでしょう。

ただし、大人の歯列矯正にはリスクも伴います。矯正によって歯茎が下がる、虫歯や歯周病が悪化する、さらに治療が長期化しやすい点も懸念されます。私自身は40代後半ですが、趣味のバスケットボールでは20代の若者のスピードにはとても敵いません。歯の動きもそれと同じで、年齢とともに確実に鈍くなっていきます。だからこそ、歯列矯正はできるだけ早いうちに始めるのが理想です。


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「歯列矯正」と「健康」って関係あるの?

柴山拓郎先生

歯列矯正は、基本的に保険適用外の自由診療です。そのため、「健康のために矯正する」という動機については、慎重な判断が求められます。たとえば、噛み合わせの悪さが肩こりや体調不良の原因になるという説もありますが、こうした不調の多くは、姿勢や顎関節の使い方、ストレスなど、別の要因が関係していることが少なくない。歯列矯正によって改善されたように感じられたとしても、それはあくまで“副次的な効果”であり、矯正の主目的ではないという認識が必要です。

実際、「矯正をした人・していない人・抜歯を伴う矯正をした人」の三群を比較した研究でも、健康状態に大きな差は見られなかったという報告もあります。


「見た目を整えたい」なら、歯列矯正という選択はアリ!

柴山拓郎先生

大人の歯列矯正は「健康のためにすべき」ではなく、「見た目を整えたい」という意志に基づいて選択されるべきだと私は思います。
矯正は“must(すべきこと)”ではなく、“will(したいこと)”の領域にあるのです。
なお、矯正治療でお客さまが不満を抱えてしまうのは、「こうなりたい」というお客さまの希望(will)に対し、「ここまで治すべき(must)」という医師の考えで治療が進められてしまうという、“目指すゴール設定のズレ”も原因の一つです。医師の治療が正しくても、価値観がすれ違えば、満足度は下がってしまいます。
大切なのは、医学的に正しい治療を踏まえたうえで、お客さまのwillに寄り添えるかどうか。そのバランスを取ってくれる相性の良い先生に出会えるかどうかが、大人の矯正を成功させるポイントになるでしょう。


「歯列矯正が難しい」のはどんな人?

柴山拓郎先生

矯正にはさまざまな方法がありますが、ここではわかりやすく、「全顎矯正(すべての歯を対象とする矯正)」の場合でお伝えします。まず、矯正が難しくなる代表的なケースが「すでにインプラントが入っている方」。インプラントは人工歯根のため動かせず、周囲の歯の動きに制限がかかります。そのため、理想的な歯並びに整えることは難しいのです。

また、矯正中は歯の清掃が難しくなるので、もともと歯周病や虫歯がある場合は矯正で悪化するリスクが高くなります。歯ぎしりやくいしばり含め、口腔内のトラブルは矯正を始める前にしっかり治療しておくことが基本ですね。

とはいえ、インプラントがあっても矯正ができないわけではありません。医師との相談で妥協点を見つけて、お互いに納得できれば矯正はありです。

まとめると、矯正は治療の順序が重要ということ。口腔内トラブルは矯正前に治療し、インプラントやホワイトニングなど費用のかかる処置は矯正後に行うのが原則、と覚えておきましょう。迷ったら、まずは歯科医院でカウンセリングを受けてみてくださいね。


抜歯と非抜歯(歯を抜かないこと)はどうやって決める?

柴山拓郎先生

抜歯が必要かどうかの判断については、「抜かずに理想の歯並びが実現できるかどうか」がポイント。私の場合は、Eライン(横顔の美しさの基準)、歯の中心のズレ、歯列のガタつき、噛み合わせなどを総合的に見て、問題が多ければ抜歯、少なければ非抜歯という判断になります。

とくに、口元が前に出ているのを改善したい場合は、抜歯することでより良い仕上がりにつながることが多いです。もちろん、健康な歯をなるべく抜きたくないという気持ちはよくわかります。ただ、日本人は歯に対して顎のスペースが小さい傾向があり、“口ゴボ”を治すには抜歯が必要となるケースが多いのが現実です。


歯列矯正の主な種類、期間や費用の目安を紹介!

矯正の種類や費用、治療期間はクリニックによって差があります。自分に合った治療を選ぶには、見た目の理想やライフスタイルなど“自分の優先ポイント”を整理して、しっかりカウンセリングで相談することが大切。ここでは、歯列矯正の主な種類や、費用・期間の目安をVOCE編集部がリサーチしてご紹介します!

・ワイヤー矯正(表側)※全体矯正の場合
期間の目安:1.5〜3年
費用の目安:70万〜100万円

歯の表面にブラケットという装置を固定し、ワイヤーを通して歯を動かす方法。多くの症例に対応可能で、治療効果が高いと言われている。装置が目立つ、食事中に物がはさまりやすい、歯磨きが難しく虫歯になりやすいなどのデメリットがある。近年では、透明や白いタイプのブラケットやワイヤーが登場しており(高額になる可能性あり)、選択肢が広がっている。

・裏側矯正(舌側矯正)※全体矯正の場合
期間の目安:2〜3年
費用の目安:100万〜150万円

歯の裏側(舌側)にブラケットを固定し、ワイヤーを通して歯を動かす方法。歯の裏側のみに装着するため、気づかれにくい・目立たないのが最大のメリット。慣れないうちは舌が装置に当たって傷ついたり、口内炎ができやすかったり、滑舌が悪くなる場合もある。表側矯正と比較すると、治療期間が長くなる・費用が高くなるといった傾向も。

・マウスピース矯正(インビザラインなど) ※全体矯正の場合
期間の目安:1〜2.5年
費用の目安:80万〜120万円

透明なマウスピース型の装置で矯正する方法。装着していても目立たず、自分で取り外しができるので、食事や歯磨きを通常通り行える。ただし、スムーズに治療を進めるためには1日20時間以上の装着がマスト。すべての治療に対応可能というわけではなく、複雑な症例は難しい場合もある。

クリニック選び、カウンセリングの心得etc.矯正を成功させるために知っておきたい5つのこと

クリニック選びは「症例写真」をチェックするのが最重要!

柴山拓郎先生

大人の歯列矯正でクリニックを選ぶ際、チェックしてほしいのは「症例写真」です。医師がどんな美的センスで治療をしているかは、仕上がりの印象や満足度に大きく影響します。矯正には必ず“テクニックのクセ”があり、それが症例に表れるからです。まずはクリニックのホームページなどで実際の症例を見て、「この仕上がり好きだな」と思えるかどうかを確認しましょう。

矯正の症例写真はお客さまの努力の結晶であり、矯正医にとっても時間をかけて仕上げた“作品”のようなもの。SNSやYouTubeなどで積極的に症例を公開している先生は、それだけ治療に自信があると考えてよいでしょう。

繰り返しになりますが、自由診療の矯正は“must(すべきこと)”ではなく“will(したいこと)”の領域です。肩書や資格だけで判断せず、「自分がこうなりたい」と思える仕上がりを実現している先生かどうかを大切にしてください。逆に、「ちょっと違うかも」と感じたなら、その先生にはお願いしない方がいいかもしれません。


柴山先生の治療による症例写真

・表側矯正

【大人の歯列矯正】クリニック選び・老け問題・後戻りetc.疑問を徹底解説!

・上:裏側、下:表側矯正

・裏側矯正

【大人の歯列矯正】クリニック選び・老け問題・後戻りetc.疑問を徹底解説!

カウンセリングでは、「自分が目指すゴール」を医師と共有することが重要!

カウンセリングでおさえておきたいポイント

  • 症例写真を参考に「なりたいイメージ」を共有する
  • 「この芸能人みたいになりたい」は避ける
  • 「全部の希望を叶えること」は難しいと知っておく
柴山拓郎先生

「こうなりたい」というイメージに近づくには、しっかり話し合える先生に出会うことが大切です。私のクリニックでは、カウンセリングの際にお客さま自身が思い描く「なりたいイメージ」とのすり合わせを、エステティックの世界と同じように最も重視しています。

とはいえ、すべてが希望通りにできるわけではありません。たとえば「神経を残してほしい」「虫歯を少しだけ削ってほしい」といった要望は、医療では通用しません。必要な処置はエビデンスに基づいて行う“must(すべきこと)”の領域だからです。

一方で、矯正治療は「こうなりたい」という思いを反映する“will(したいこと)”の領域です。“必要な治療”と“自分の希望”を混同してしまうと、たとえ技術的に正しい治療が行われていても、お客さまにとっては満足できない結果を招くことになりかねません。

また、「口元を3mm下げたい」「この芸能人のようになりたい」といった要望は、現実的に再現が難しいことが多いものです。それよりも、「この先生の症例写真のような雰囲気にしたい」といった形でイメージを共有するほうが、ずっと現実的です。なぜなら、症例写真はその先生の得意とする仕上がりだからです。

もし症例写真にピンとこない、カウンセリングで希望する仕上がりとイメージのすり合わせができないと感じた場合は、別のクリニックを検討するのが賢明です。納得感のないまま始めると、長期間にわたる治療の中で不満を抱えるリスクが高くなってしまいます。


【歯列矯正中のNGアクション】治療を長引かせないために必要なこと

「矯正装置が外れる」と、たとえ数日でも治療の弊害に!

柴山拓郎先生

治療期間中、矯正装置が外れてしまうこともあります。そうするとクリニックに行って再度装着をする必要がありますが、予約が取れないと何日も装置が外れた状態が続き、せっかく治療が進んでいた歯が元の状態に戻ってしまう可能性があります。とくに矯正初期は1〜2日でも油断なりません。

矯正治療は、エステのように“受けているだけ”では進みません。私がよくお伝えしているのは、「矯正はパーソナルトレーニングと同じ」ということ。医師とお客さまが二人三脚で取り組む姿勢が大前提です。だからこそ、日常生活では次の3点に注意していただいています。

① 粘着性のあるもの・甘いもの・硬いものを控える
装置の破損や虫歯のリスクが高まり、治療が中断してしまうことも。粘着性のあるものや甘いもの、硬いものが好きな方は、食生活から見直す必要があります。

矯正治療中に避けたい食べ物
・硬いもの
フランスパン、せんべい、氷、軟骨など

・粘着性のあるもの・甘いもの
キャラメル、グミ、チョコ、チーズなど

② 歯ぎしり・食いしばりを放置しない
これらの習慣を放置すると、矯正装置が壊れやすくなるだけでなく、歯の動きにズレが生じるリスクもあります。対策としては、就寝時に使えるマウスピースの装着や、咬筋(こうきん※エラの部分にある咀嚼筋の一種)の緊張を和らげるためのボトックス注射などが有効です。当院では、矯正中でも使用できるマウスピースも開発しています。

③ 装置をきちんと使う
矯正で動かした歯は、そのままでは元の位置に戻ろうとする――いわゆる「後戻り」が起こります。そのため、治療後も継続的な管理が欠かせません。マウスピースをしっかり装着する、ワイヤー固定なら壊さないよう注意する、保定装置(リテーナー)をサボらないことが大切です。

矯正治療は“自分ごと”としてとらえ、生活全体で取り組む意識が成功のカギ。定期検診で受けたアドバイスやフィードバックはきちんと守るようにしましょう。


「抜歯矯正すると老ける」は覚悟しておくべき

柴山拓郎先生

「矯正すると老けますか?」というご質問はとても多く寄せられます。結論から言えば、矯正によって頰がこけて“老け見え”することはあります。これは歯のガタつきが整ったり、抜歯によって口元が下がったりする、つまり顔の立体感が変わるためです。

中には「ある時期から頰が急にこけた」と感じる方もいますが、実際は矯正の初期から最終段階まで、頰コケ感は少しずつ変化していきます。さらに、矯正は年単位の治療になるため、加齢による見た目の変化も重なります。そのため、途中で「これ以上は嫌だ」と感じる“コケ感”が出てくることも。

口角が上がりにくい・笑いづらいといった違和感は、時間とともになじむケースもありますが、コケ感が気になる場合は美容医療によるケアを検討するのも一つの選択肢です。なお、非抜歯の矯正であれば、こうした変化が起こりにくい傾向にあります。


矯正治療後の「後戻り」はすると思ったほうがいい

柴山拓郎先生

矯正で動かした歯が元の位置に戻ってしまうことを「後戻り」と言います。個人差はありますが、原則として「後戻りはする」と考えたほうがいいです。後戻りを止めるにはリテーナー(保定装置)の使用が有用ですが、マウスピース型や裏側ワイヤー型、取り外しとワイヤーの中間の床タイプリテーナーなどがあり、どれが適しているかは症例によって異なります。

矯正は装置が外れたらゴールではなく、リテーナーも治療の一環と捉えるのが正解。自分で意識してケアを続けることが、美しい歯並びを長くキープする秘訣です。


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写真提供/アニバーサリーデンタルギンザ 取材・文/金澤英恵

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